小林 |
「快調なフライトやな。
成田をたってどれくらいたったんや?」 |
北小岩 |
「そうですね。5時間ぐらいですかね」 |
小林 |
「もうそんなにたつか。
俺ははしゃぎすぎて疲れたから寝るわ」 |
北小岩 |
「私も睡魔に襲われております。先生、おやすみなさい」 |
二人が目をつむったその時だった。
『ハアハアハア。アア〜ン。ハアハアハア。ウウ〜ン』
前のシートから息苦しそうな声が聞こえた。
あえぎ声のようでもある。
かなり興奮している。
「スチュワーデスさん、大変です!
前方の外人レディの方が、苦しそうにしております」
とっさに北小岩くんが叫んだ。
日本人スチュワーデスが飛んできて、
もだえる女性客の様子をうかがった。
そして後ろを振り返ると、美しい顔を引き締めこう言った。
「気圧の変化と緊張のため、
女性のお客様の性欲が高まり、
極度に欲情してしまわれたようです。
脈拍が異常に上がり、呼吸困難におちいっています。
このままでは大変危険です!」
さらに大きな声で、こう呼びかけた。
「お客様の中に、AV男優の方はいらっしゃいませんか?」
「Attention please!
Are there any actors of pornography here?」
スチュワーデスは日本語と英語で、
AV男優が搭乗していないか確認している。
よくドラマで、機内で心臓発作の急患が出て、
医者がいないか呼びかけることがあるが、
彼女がとっさに機転をきかせたのだろう。
確かに、女性の欲情を素から静めるためには、
医者よりもAV男優の方が適任なのだ。
だが、名乗り出るものはいない。
通路横に座っているイチモツが立派そうな外人も、
自信がないのかうつむいてしまっている。 |
小林 |
「おらんようやな。どや、北小岩?」 |
北小岩 |
「残念ながら私には、
外人レディを満足させることはできません」 |
北小岩くんが蚊の鳴くような声でつぶやいた時、
チョコレート色に日焼けした筋肉質の男が立ち上がった。 |
AV男優 |
「私はAV男優をしております。
もし、お役に立てるようでしたら、ご協力いたします」
|
スチュワーデス |
「ありがとうございます。ではすぐこちらへ!」 |
息も絶え絶えの外人女性を抱きかかえたAV男優が
機内前方に行くと、カーテンがひかれた。
機内は水を打ったようだ。
時々、女性の声が漏れてくる。
客は固唾を飲んでカーテンを凝視。
男優の動きに合わせて、カーテンが大きく揺れる。
そして数分後、雄叫びがあがった。
「I’m coming!!!!!!!!!!!」
しばらくすると、AV男優がカーテンから顔をのぞかせた。 |
AV男優 |
「もうだいじょうぶです。
彼女の欲情は私がおさめました」 |
一瞬間をおいて、外人客から歓声があがった。
「ヘイ、チョコレートボーイ!ブラボー!!」。
一人が拍手をするとその輪が広がり、
機内にはスタンディングオベーションが巻き起こった。
全員が心からこの若者に讃辞を惜しまなかった。 |
小林 |
「さすがAV男優はんや。
俺は以前、彼が出演しているビデオを観たことがある。
相手がどんな女性であっても
すぐに臨戦態勢をととのえ、
極上の仕事をこなしておった。
日々、そんな過酷な鍛錬をつんできたからこそ、
いざという時にベストの力を発揮することが
できたんや。
彼女を救える男は他に誰もおらんかった。
日本人よりオープンマインドで、
いいモチモノをしている外人男性でさえ
引いてしまった。
それをあのAV男優が堂々となし遂げたんや」 |
北小岩 |
「ほんとに感動いたしました。
彼こそ日本男児の誇りです!」 |
外人女性は平静をとりもどし、
脈拍も呼吸も落ち着いたようだ。
飛行機も無事着陸。
小林先生と北小岩くんはタラップを降り、
空港のロビーで一息ついた。 |
小林 |
「んっ、先ほどのスチュワーデスはんが歩いてくるで」 |
北小岩 |
「あっ、手帳を落としてしまったことに気がつきません」 |
北小岩くんは素早くかけより手帳を拾い上げた。 |
北小岩 |
「スチュワーデスさん、これ落ちました」 |
スチュ
ワーデス |
「どうもありがとうございます」 |
北小岩くんが手渡すと、
スチュワーデスは聖母のような微笑みを残して
去っていった。 |
北小岩 |
「先生、大変です!
今、手帳の中身がちらっと見えてしまいました」 |
小林 |
「何が書いてあったんや?」 |
北小岩 |
「それがフライトとフライトの間に、
2Hとか3Hとか書かれていたのです」 |
小林 |
「なにっ!
あの、アリア様のように
神々しいスチュワーデスはんが、
フライトの合間合間に
2回も3回もHを楽しんでおるということか!」
|
北小岩 |
「そうに違いありません!
何だかわたくし、ひじょうに興奮してまいりました」 |
小林 |
「気をしっかり持たなあかんで!
だが、俺もめっちゃ突き上げられてきたわ。
あ〜!」 |