小林秀雄のあはれといふこと

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。

其の四拾七・・・・進化


北小岩 「先生、そのぶ厚い本は何ですか?」
小林先生が読了し放心していると、
弟子の北小岩くんが問いかけてきた。
小林 「これはな、ダーチンによる
 『ちんちんの環境適応による進化論』や。
 略して『チン化論』とも呼ばれとる名著や」
北小岩 「私、ダーウィンの種の起源は読破しましたが、
 ダーチンは知りませんでした」
小林 「甘いな、北小岩。
 ダーチンはんはな、
 ちんちんの進化だけに焦点をあて、
 一生をかけて研究し続けたお方や。
 これは男にとって最重要なテーゼやで」
北小岩 「私も股間に粗品をしのばせる者として、
 その進化の歴史は是が非でも知りたいものです。
 先生、ぜひご講義ください!」
小林 「ほな、かいつまんで話すで。
 第1章は『ちんちんのお誕生日』や。
 三十億年前、ちんちんは真っ赤に燃えた火の玉やった。
 その回りをちりとガスが取り巻いていたんや。
 それが何億年かたつうち、
 次第に冷たくなっていった。
 冷えて固まったちんちん下部は、
 ゆっくり縮んでしわをつくった。それが玉袋や」
北小岩 「なるほど!露出している体の部分で、
 なぜ玉袋だけがあんなにしわしわなのか
 疑問を持っておりましたが、今、氷解いたしました」
北小岩くんは玉袋のしわは多いが、脳のしわは少ない。
小林 「第2章の『昔々、ちんちんは個体でした』には
 思わず目を見張らされるで。
 現代に生きるほとんどの人が
 誤解していることやが、
 大昔、ちんちんは体の一部ではなく、
 個体として独立していたんや」
北小岩 「なんと!」
小林 「その頃は他の生き物と同じように海に棲息していた。
 しばらくその状態が続いたが、
 約1億年前に二派に分裂した。
 陸を目指すちんちんと、海に残るちんちんや。
 パイオニアなちんちんは、
 より深い快感を求めて陸に上がっていった。
 摩擦係数の問題で、
 水中ではそれ以上大きな悦びは得られないからや。
 そして、ついに8対2の割合で
 趨勢は陸派に傾いていった」
北小岩 「ということは、私たちは快楽を求めて
 陸に上がったモノの子孫なのですね。
 海派はどうなったのですか?」
小林 「現在も立派に生きながらえておる。
 あの黒ずんで海に沈んでいる大量のナマコが、
 海派の末裔や。
 海は陸ほど急激な変化はなかった。
 だからそのまま生き続けられた。
 だが陸は違った。
 まず、地球の気候が温暖になった。
 ジュラ紀到来やな。
 それに合わせてちんちんも、
 恐竜のようにでかくなった。
 チン長16メートルのものもあったという。
 肉食と草食が生まれ、
 過酷な戦いが繰り広げられた。
 食うか食われるかのちんちん弱肉強食時代や。
 だが、ビッグな時代は長くは続かなかった。
 あまりに大きくなりすぎたので、
 氷河期を迎えるとほとんどが滅んでしまったんや」
北小岩 「ちんちんたちの共食い・・・。
 恐ろしい光景です。
 でも、ちんちんの大きさって、
 過ぎたるは及ばざるが如しなんですね」
小林 「そうや。
 だから、日本人よりケタ外れにでかい欧米人は、
 これからは心してかからなあかんで。
 外国産のビデオを観る限り、
 あのツチノコみたいなイチモツはロスが多過ぎる。
 あれ以上でかくなったら、滅びることは間違いない。
 最後に生き残るのは、小さいが芯のある
 アジアのちんちんと俺はにらんでおる」
北小岩 「わたくし、自分自身の小さきことに、
 胸をなでおろしました。
 それにしても陸上のちんちんは
 氷河期に絶滅してしまったのですか?」
小林 「いや。わずかながら生き残った。
 そして、ちんちんの精鋭たちはこう考えた。
 こんなに大きくては、自分たちの種は
 早晩全滅するだろう。
 種をあげて、一か八かの大勝負にのぞまなあかん。
 彼らの思惑はこうや。
 大きな個体として存在するよりも、
 小さくなっていろいろな生き物と共生し、
 種を存続させる。
 それが陸で生き延びる唯一の道とみた。
 それから彼らは
 さまざまな生き物の股間に散らばって、
 見事に現在までサバイバルしてきたんや」
北小岩 「環境適応のための壮大なドラマがあったのですね。
 それにしても、ちんちんって
 見かけによらず頭がいいのですね」
小林 「そうやな。それからもちんちんは知能を上げ続け、
 ついに火を使うようになったんや。
 寒い日にも凍死せず、
 また他の危険な動物から身を守るため。
 意外なことやが、ちんちんはかなりうまいらしい。
 ちょうどいい具合に塩味もきいておる。
 だからしょっちゅう、
 獰猛な肉食獣に狙われたんやな。
 ところで最も成功をおさめたちんちんは、
 何のかわかるか?」
北小岩 「う〜ん、馬でしょうか?」
小林 「何度もいうが、でかけりゃエエちゅうもんやない。
 それはヘビのナニや。
 ヘビのモチモノはへミペニスと呼ばれ一対ある。
 つまり、ちんちんを2本所有しているわけや。
 これほど心強いことはないで。
 1本失ってもまだ1本ある。
 惜しむらくは2本同時に使って楽しめんことやな。
 だが、ヘビの交尾は何日間も合体したまま
 快楽を貪り尽くすんや。
 抜かずの三発などといって
 自慢している人間の男など、
 足元にも及ばんわ」
北小岩 「まったくうらやましい限りです。
 私もへミペニスの垢でもせんじて飲みたいものです。
 あれっ?先生、その薄汚いチラシは何ですか?
 『バイアグラ・マイルド』という文字が見えましたが」
小林 「こっ、これかいな。
 いやな、バイアグラでは副作用が心配やが、
 マイルドならばちょいええかなと思ってな」
北小岩 「でも聞いたことありませんよ、
 バイアグラ・マイルドなんて。
 インチキじゃないですか?」
小林 「こっ、これは一本抜かれたなあ。あははははは」

ダーチンのチン化論から学ぶこともできず、
あいかわらず自分のモノを
実力以上に見せようともくろむ小林先生。
赤子の手をひねるように、
インチキちらしに誘惑されている。
再びちんちんの世界が激動すれば、
真っ先に滅亡するのは外人の立派なイチモツではなく、
先生の股ぐらで進化から置き去りにされている
あわれな小化石に違いない。

2001-03-04-SUN

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