小林秀雄のあはれといふこと

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。

其の五拾壱・・・新社会人


新社会人のみなさま、記念すべき船出ですね。
希望と不安を胸に、日々過ごされていることでしょう。
日本経済はさらに厳しさを増しています。
しかし、そんな時こそチャンスは広がっているもの。
失敗を恐れずチャレンジしてください。
小林秀雄先生の開陳する社会人としての知恵が、
あなたのサクセスに少しでもお役に立てば幸いです。

小林 「俺も社会人になりたてのころは仰山ヘマこいたもんや」
北小岩 「先生のような完全主義者でも、
 失敗されたことがあるのですか。
 後学のためぜひご教示ください!」
小林 「社会人一年生というのはまだまだヒヨッコや。
 水を漏らさぬ心構えで臨んでも、
 スキはできてしまうものなんやな。
 俺にも油断があった。
 会社帰りに買ったハードなエロ本を
 駅のベンチで熟読していたら、
 肩をとんとん叩くものがおったんや。
 人がエロの世界に没入しているのに
 失礼なやっちゃと思って見上げると、
 取引先の美しい女性が立っていた。
 『凄いの持ってるんですね』と突っ込まれ、
 思わず「いつもお世話になっております」
 というワケのわからないことを口走ってしまったわ」
北小岩 「社内だけでなく、
 帰り道にも社会の厳しい目は光っているのですね」
小林 「それだけではすまなかった。
 次にその会社に行きお偉いさんが出てきた時に、
 名刺交換で間違えてファッションヘルスの割引券を
 差し出してしまったんや」
北小岩 「なんと!
 それでは機密管理失格の
 烙印を押されかねません!!」
小林 「まあそんな風に俺にもいろいろな失敗があったが、
 数々の修羅場をくぐりぬけたおかげで、
 社会人が為さねばならぬこと、
 為してはならぬことを確実につかんだな」
冗談でも立派とはいえない小林先生の新社会人時代。
だが、そんなまぬけな先生がつかんだ
ノウハウとはいったい何だろう。
小林 「まず、社会人になったからには積極的に
 “社会の窓”を広げなければならん。これが基本や」
北小岩 「と申されますと?」
小林 「社会との接点を広げるためには、
 限界まで社会の窓を広げるこっちゃ。
 社会の窓といわれるズボン前方のファスナーは、
 あまりに行動範囲が狭すぎる。
 これをバッグについているような長いものに付け替え、
 おしりの割れ目の上まで上げられるようにするんや」
北小岩 「なるほど。
 確かに社会の窓がおしりの方までつながっていれば、
 社会に対する視点も格段にスケールアップいたします」
小林 「社会人には処世も必要やで。
 先輩を立ててことに対処していく。
 そのためには二宮金次郎に学ばねばいかん。
 大切にしているエロ本や裏ビデオを
 カゴに入れて背負い、先輩方にくばるんや。
 先輩方もお気に入りのエロ本や裏ビデオの価値は
 ようくわかっている。
 自分の一番大切なものを惜しげもなく与え、
 先輩を立てるその姿にうたれ、
 いざという時味方になってくれること請け合いや」
北小岩 「家宝の裏ビデオを差し上げることは
 断腸の思いですが、それゆえ絆も深まります」
小林 「お得意様とのコミュニケーションも忘れてはいかん。
 会社の特別室で特上のビデオを上映し、
 一緒にマスをかく。
 それが21世紀型マスコミュニケーションや」
北小岩 「飲む、打つ、買うが接待の基本といわれた時代も
 ありましたが、
 これからはマスコミュニケーションが主流ですね」
小林 「それから、女子社員から愛されん男は
 大きな出世は望めん。
 もし会議中に隣の女子社員が
 屁をこいてしまった時には
 即座に胸一杯屁を吸い込むことや。
 その屁を巨大な音を立てて自分のケツから出す。
 それで「こいたのは僕です」と
 大声で宣言する。
 女子社員は放屁の屈辱から逃れ、
 君のことを一生贔屓にしてくれるやろう」
北小岩 「赤い糸ならぬ黄色い糸ではありますが、
 職場での恋も芽生えそうです」
小林 「うむ。
 今までは率先してやった方がいいことを述べたが、
 してはいけないこともある。
 大切なお客様のお茶に陰毛を入れないこと。
 これは重要な掟や。
 お茶を出す。
 黒くて細いものが浮かんでいることに気づく。
 お客様は一瞬アメンボが泳いでいるのかと思うが、
 まず100%陰毛や。
 陰毛は意外な所からやってきて、
 魔の手を差し伸べてくる。
 陰毛を1本見たら、
 確実に30本は潜んでいると思わなあかんで」
北小岩 「私も昔アルバイトをしていて、
 重要書類のコピーを任されたのですが、
 陰毛を写り込ませたまま
 お得意先との会議で配ってしまい
 えらく怒られたことがございます。
 現物なら容易に取り除けますが、
 コピーして配ってしまうと万事休すです」
小林 「そうやろ。
 特に美人社員の方は気をつけんと、
 みんなが興奮してしまい
 会議が乱れるおそれがあるからな」
北小岩 「なるほど、勉強になりました」
小林 「まあ、とにかく新入社員は
 すぐには使いもんにならん。
 石の上にも三年ということで、
 3年間は多少つらいことがあっても
 がんばり続けるこっちゃな」
北小岩 「そうですね。
 先生も最初の会社でつつがなく
 3年以上過ごされたのですよね?」
小林 「いっ、いや。
 2年8ヶ月で
 「やめさせてください!」といってしもた」
北小岩 「それでは2年8ヶ月で退社したのですか?」
小林 「それがな、俺がやめようと思ったのは
 12月の寒い日やった。
 そんでもって社長から
 「まだ外は寒いから暖かくなってからにしなさい」
 と引き止めていただいて・・・」
北小岩 「引き止めていただいて?」
小林 「暖かくなってからやめました」
北小岩 「ぎゃふん」
何だかなさけない小林先生の新社会人生活である。
でも、フレッシュマンの方々は
くれぐれもご安心ください。
小林先生のような恥ずかしい人でも、
今でも何とか社会人の末席に連なっているのです。
社会人というのは続けていればなんとかなるものです。
いつまでも大志を胸に、
自分の信じる道に邁進してください。

2001-04-14-SAT

BACK
戻る