小林秀雄のあはれといふこと

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。

其の五拾八・・・・ボランティア


北小岩 「先生、どこに行かれるのですか?」
小林 「ボランティアや」
北小岩 「えっ!
 先生はこんなにお忙しい毎日なのに、
 ボランティアまでされていたのですか。
 お願いです。
 ぜひ、私も参加させてください!」
小林 「仕方ないなあ。
 まあ、来てもええが、
 足手まといになるなよ」
小林先生は、この数ヶ月間
ボランティアに精を出していたらしい。
今日は弟子の北小岩くんを連れていくことにする。
しばらく歩くと、路地に人影が見えた。
制服の青年が、
ブラジャーをマスクにした強面おじさんに
にらまれている。
今にも泣き出しそうだ。

北小岩 「先生、大変です。
 高校生が恐喝されています!」
小林 「ん?あれか。
 あれは恐喝やない。
 童貞つぶしや。
 あそこにいるのは、
 『童貞つぶしの兄貴』や」
北小岩 「童貞つぶし?
 いったいそれは何ですか」
小林 「童貞のヤツにな、
 いかにSEXが恐ろしいものかを
 大げさに伝えるんや」
北小岩 「そんなことをして何になるのですか」
小林 「兄貴のお話を聞いた青年はな、
 SEXするのが怖くなって
 初体験がかなり遅くなる。
 つまり、童貞のうちに
 芽をつまれてしまうというこっちゃ。
 近頃は初体験の若年化が進みすぎている。
 若いうちからええ思いをさせてはあかん。
 俺のボランティア活動というのは、
 童貞つぶしの補佐なんや。
 兄貴は初体験がとんでもなく遅い上に、
 素人童貞と呼ばれる性の苦労人や。
 そんなわけやから、
 兄貴の説教は魂がこもっとるで」
いつの間にか小林先生も、
ブラジャーをマスクにして、
ヒナのように震えている高校生に近づいた。
童貞つぶしの兄貴は、
ブラジャーをはずすと凄みのある声で吠えた。
兄貴 「なあ、兄ちゃんよ。
 SEXしたことあるのか?」
高校生 「ありません」
兄貴 「そうか。ほっとしたぜ。
 SEXはほんとうに怖えからな。
 女のアソコには、
 万力(まんりき)という
 恐るべき力がある。
 それでぎりぎり締め上げてくる。
 俺のちんぽをよく見てみな。
 もう少しで
 引きちぎられるところだったんだぜ」
童貞つぶしの兄貴は、
子供の頃チャックで挟んで
傷つけてしまったちんぽを、
グイッと取り出して見せつける。
小林 「そうや。
 初めて挿入する時にはな、
 ちんぽの先から血が飛びでるんや。
 俺なんかそれがクセになってしまい、
 リンゴを齧っただけで
 ちんぽから
 血が出るようになってしまったんやで!」
 

先生がすかさずたたみかける。
いたいけな高校生は顔をしかめ、股間を握り締めた。
兄貴 「くれぐれも、
 SEXしようなんて
 気を起こすんじゃねえぞ。
 なにせ、あそこに3分以上入っていると、
 ちんぽは窒息死して腐ってくるからな」
兄貴がだめ押ししている間に、
先生が北小岩くんに耳打ちした。
小林 「なあ、お前も若い時に
 いい思いしてないやろ。
 そんならここで一発かましてみい!」
先生に促され、
北小岩くんもボランティア活動を開始した。
北小岩 「そこのお若い方、
 SEXは男の人生を左右してしまいます。
 あげまんとかさげまんとか、
 あなたも聞いたことがあるでしょう。
 さげまんはいただけませんが、
 あんまんや肉まんなら
 かなりおいしいですよね。
 ですから、もしも召し上がるのなら
 あんまんや肉まんにした方が
 よさそうですよ」
小林 「・・・・北小岩。
 お前にはまだボランティアはつとまらん。
 下がっていなさい。
 おう、そこの若いの。
 10代のうちから
 肉体をむさぼろうなどと
 思ってはあかんで。
 女性を満足させられないとな、
 金玉におあげをかぶせられてしまうんや!
 つまり、文字通りのおいなりさんに
 されてしまうんやで!!」
兄貴 「そうだ。
 金玉のおいなりさんはな、
 世界中の女性から軽蔑の念を持って
 お参りされてしまうんだからな!」
先生と兄貴が息をもつかせぬ勢いで
童貞つぶしをすると、
高校生のつぶらな瞳から涙がこぼれた。
高校生 「ぼっ、ぼく、結婚するまで
 絶対にSEXはしません!」
それを聞くと、兄貴の口調が急にやさしくなった。
兄貴 「そうか、わかってくれればいいんだ」
小林 「そうやな、
 まあSEX抜きの
 楽しい高校生活を送ってくれや」

小林先生が高校生の肩をポンと叩いた。
彼は涙をぬぐいながら深々と頭を下げ、
走り去った。
北小岩 「先生、とても有意義な
 ボランティアでございました!」
小林 「うむ」


しばらくすると、
向こうから新たな標的が近づいてきた。
兄貴と先生は気の弱そうな青年を挟み撃ちすると、
再び童貞つぶしを始めた。
こうして夜遅くまで、
誰の役にもたたないボランティア活動は続いた。

2001-09-16-SUN

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