北小岩 |
「現代にまだ忍者が生存しているとは、
思ってもみませんでした。
地理から推測するに、
あの方々は甲賀流ですね」 |
小林 |
「いや、違う。彼らは甲賀流ではなく、
『こうがん流』や。
もともとは甲賀の流れやったんやが、
そこでヘマをしでかし破門されて
仕方なく立ち上げたんやな。
あそこにいる威風堂々とした男が、
筆頭格の睾丸流政宗や」 |
睾丸流政宗は小林先生に気づき、こちらに近づいてきた。 |
政宗 |
「やあ、先生ではありませんか。
お久しぶりです。
雄琴でお会いして以来ですね。
あの節はどうもお世話になりました。
ところでそちらのお方は?」 |
北小岩 |
「私、弟子の北小岩と申します。
睾丸流とお伺いしましたが、
もしかすると独眼竜の間違いではありませんか?
でもお見かけしたところ、独眼ではありませんね」 |
政宗は静かに微笑み、
装束をといて下半身をむき出しにした。
北小岩くんは思わず息を飲んだ。
右の睾丸に、黒い眼帯が装着されていたのである。 |
小林 |
「政宗はんは修行中にあやまって
自分の手裏剣を金玉に刺してしまい、
玉をひとつつぶしてしまったんや。
それ以来、睾丸流政宗を名のっていらっしゃる」 |
誰も知らない秘境で、
こうがん流忍者たちは日夜厳しい修行に明け暮れている。
政宗は雄琴で小林先生にお世話になったこともあり、
忍者屋敷をくまなく案内してくれた。
長い廊下を歩いていると、
北小岩くんが急に便意を催しトイレに駆け込んだ。 |
北小岩 |
「ふう、もう少しでもらすところでした」 |
北小岩くんがしゃがみこみ、ホッとしたその時だった。
金隠しが物凄い勢いで飛んできて、
おちんちんを直撃した。
激痛のあまり、ふんばった体勢のまま
後ろに倒れてしまった。
ドアの向こうで、先生と政宗が笑っている。 |
政宗 |
「いやあ、しっけいしっけい。
実はこの廊下には
便意を誘発する香がたかれているのです。
敵が奇襲をかけてきても
必ずここで便意を催します。
トイレでふんばったが最後、
金隠しが攻撃を仕掛けます。
このからくりは、金の弓と呼ばれています」 |
その他にも屋敷にはどんでん返しを応用した
まんぐり返しや、エロ本落とし穴など、
奇妙な仕掛けがあまた施されていた。 |
政宗 |
「それでは北小岩さんにも、
一番簡単な忍術をさずけましょう」 |
いうが早いか、
政宗は黄土色の粉を北小岩くんに投げつけた。
北小岩くんは、どこかで嗅いだことのある匂いを
胸の奥まで吸い込んでしまった。 |
政宗 |
「それは俺の糞だ!」 |
北小岩 |
「エッ!!!」 |
必死に吐き出そうとするが、後の祭りだった。 |
政宗 |
「人間の鼻は、
臭い匂いを思わず嗅いでしまう
悲しい習性をもっています。
糞の匂いならなおさらです。
そこで私はこの煙幕を開発しました。
これを嗅がされた後で実は
糞の粉だったことを知った時、
敵は戦意を喪失します。
そこを一気に攻めるのです」 |
この煙幕にはもうひとつの利点がある。
撒かれた粉はその後肥料となって作物を育てるのだ。
こうがん流忍者は、
攻撃後のエコロジーまで考えている
真のナチュラリストなのだ。 |
政宗 |
「私たちはこれから、江戸に参ります。
そこで修行の成果をお見せしたいと思います」 |
政宗を筆頭にこうがん流忍者が
総勢10名ほど東京駅に到着した。
どこを目指すのかと思ったら、吉原だった。
一人の忍者が迷わず、
時間内無制限と書かれたソープに入っていく。
忍者だけに、事前の情報収集はおこたりない。 |
政宗 |
「それでは小林先生たちは、
ここで成果をとくとご覧ください」 |
みんなから「前戯」と呼ばれている忍者が、
フロントで5万円払い上玉を指名した。
個室に入ってしばらくして果てると、
次の忍者が水ぐもを使って
お湯の上を歩きソープ嬢に近づいていった。
音も立てずに前戯と入れ代わる。
前戯は窓を乗り越え、すぐに部屋から脱出してきた。
二番目の忍者は「先っぽ」と呼ばれていた。
先っぽがコトを終えると、
天井にぶら下がっていた
「ピストン」と呼ばれる忍者と入れ代わった。
それからこうがん流忍者たちは様々な忍術を駆使し、
90分の間に10人が入れ代わった。
ソープ嬢はやけに精力絶倫な男だなとは思ったものの、
忍者がたくみに顔を似せているので、
入れ代わられていることにまったく気づかなかった。
ここは総額5万円の店なので、
一人あたま5千円で済んだ計算になる。
|
小林 |
「見事や!」 |
北小岩 |
「でっ、でも、
あの方たちはソープを安くすませるためだけに、
あのように命がけの
修行をしているのですか・・・・」 |
小林 |
「うむ、あのレベルで
一人5千円は悪くないわな・・・」 |