『慟哭』
 工藤静香

 
1993年(平成5年)

その晩一人の部屋で
涙が枯れるまで
泣き続けたことだけ
覚えています。
  (投稿者・奇跡のアラサー)

いちばん先に知らせた ともだちが
私だなんて 皮肉だね

私は中学3年から約4年間、
同じ人に恋をしていました。
彼は中学の同級生。
隣の席になったのがきっかけで、
気付いたら好きになっていました。

彼も私もクラスの中では賑やかな存在。
二人でクラス委員もしたし、
漫才コンビを組めば?
なんてからかわれたりもしました。
恋を打ち明けるには仲良くなり過ぎていた私達。
結局彼に告白することなく中学を卒業しました。

それから別々の高校、大学に進んでも、
私たちの友達関係は終わりませんでした。
時々公園で待ち合わせてそれぞれの近況を話したり、
駅で偶然会って一緒にクレープを食べたり。

そんな関係が続いていた大学一年の6月、
突然彼から
「今日の帰り、駅で待っているから。」とのメールが。
大学からの帰り道、
期待と不安が入り混じる気持ちで
地元の駅に向かいました。

強張った顔の彼が「俺、彼女ができた。」と言った時、
どう返事をしたのか、
その後どうやって家まで帰ったのか、
全く思い出せないのですが、その晩一人の部屋で
涙が枯れるまで泣き続けたことだけ覚えています。

同じ年の夏、
私のことを好きだと言ってくれる人が現れ、
新しい恋が始まりました。
お互いに恋人ができても彼との友達関係は続き、
それは社会人になった今でも変わりません。

先日一緒に行ったカラオケで、
何気なくこの歌を入れた私。
それを何でもない顔で聞いている彼。
当時の私の気持ちに気付いていたのかいないのか、
聞きたいようで
やっぱり聞く勇気がない今日この頃です。

(奇跡のアラサー)

それをきちんと
彼が伝えようとしたということが、
ふたりの関係の特別さ、
かけがえのなさを物語っているような気がします。

全体を通して、誰も何も告白していないのに、
一方が一方に、きちんと、告げる。

そういうことばではありませんけれど、
「俺、彼女ができた」というのは、
ふたりが、もう、もとのような関係では
いられないのだという、
ある種の終わりを告げたのだと思います。

そうしてなくても
責められはしない立場なのに、
呼び出してそれを告げた彼は、
誠実だったのだなぁと感じますし、
それをきちんと「さよなら」だと受け止めて
泣けた投稿者の方も、同じような誠実さを
持っていたのではないかと思います。

「慟哭」って、歌のタイトルとしてはすごいなぁ、と
当時から思っていました。
でも、ほんとうに声をあげて泣いちゃうのって
こういうときかもしれませんね。
それは、「取り返しのつかない何かの終わり」を
受け止めなくてはならない瞬間。

やっぱり当時、彼も
同じ気持ちを持っていたのではないでしょうか。
だからきっと、
別の人の気持ちを受け止めると決めたとき、
強張った顔でも、知らせたのでしょう。

お互いに恋人ができても友達関係が続いてて、
社会人になったいまもカラオケに行く。
すごく貴重な関係だと思います。

気になるのは、こういう関係になった場合、
その先はあるのかないのか?
逆転は、あったりするの?
そこんとこ、とっても知りたい、
アラフォーの私です。

それは‥‥「その先」や「逆転」は
ないほうが、すてきだと思うよスガノ。
もし「当時どうだったの?」なんて
さらりと聞けちゃったら聞けちゃったで、
またなにかが終わるだけだという気もする。
はじまるというよりも。

彼からのメールのとき、
「期待と不安が入り混じる気持ち」
だったというのが、
「慟哭」という曲と
すごくリンクするように思えました。
というのも「慟哭」の主人公(女性)も
避けられてるかもという予感と
愛されてるかもという期待で
ふらふらになってた。
「彼女ができた」と聞かされて、
主人公は聞きたくないって言うのに
「聞けよ」なんて男は言う。
「どう思う?」なんて言うんです!
ひどいなあ。
でも(奇跡のアラサー)さんの恋する人は
そういうタイプではなかったんだと思う。
その彼女を直接
紹介されたわけじゃないだろうし。
‥‥それにしてもショックだったろうなあ。
長い恋でしたものね。

「慟哭」は中島みゆきさんの作詞で、
工藤静香さんバージョンもいいんですけど、
中島さんバージョンも、また、すごいですよ。
ちょっと、ハードロックみたいに歌うのがまた。
そうそう、乗組員のゆーないとは「慟哭」を
工藤静香さんのモノマネバージョンでうたうのが
けっこう得意です。

「恋歌くちずさみ委員会」というものは、
40代のおじさんとおばさんたちが
「あのころはよかったねぇ、なつかしいねぇ」
と盛り上がったところからはじまったコンテンツです。
(そもそものお話はこちらをどうぞ)

なにが言いたいのかと申しますと、
若いかたがごく自然に
加わってくれるようになったなぁー、ということです。

「40代の40代による40代のためのコンテンツ」
などと掲げていたわれわれは、
すこしばかり心が閉じていたのかもしれません。
かたくなだったのかもしれません。

40代が車座になって
昔の恋バナをワイワイしているところに
若い人が入ってくるのは
ちょっとした勇気がいることだと思います。
ところがこのごろは、
わりと若いかたがなんのくったくもなくスッと
年代の壁を軽々と越えて、
ぼくらの車座に加わってくださる。
ありがたいことです。

(奇跡のアラサー)さんも、
お話が、独特な軽やかさで、すてきでした。
思い出にするには
まだ生々しい関係なのかもしれませんが、
ぜんたいに漂う「誠実さ」がとても好きです。

というわけで、
お若い方も、ぜひご投稿を。
ぼくらのハートにグッと届きましたら、
年代に関係なく
ここでご紹介させていただきたいと思います。

次の土曜日、またみなさんにお会いしたい!
そういうふうにこころから思う、
アラフィフの私です。

年齢なんか、ただのナンバーだ!
ではまた次回!

 

2012-05-23-WED

最新のページへ
感想をおくる ツイートする ほぼ日ホームへ
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN