糸井 | 黒柳さん。 |
黒柳 | はい。 |
糸井 | もうすっかり 予定の時間がすぎてしまったんですが、 もうほんとうに、 おもしろかったです。 |
黒柳 | あ、そうですか? なんだか、パンダと‥‥アメと森繁さんの 話になっちゃいましたけど。 |
観客 | (拍手) |
糸井 | 森繁さんのお話は テレビ局の人みんなに 聞かせたいぐらいです。 |
黒柳 | うん。 |
糸井 | こんな話をする機会って あるんですか? |
黒柳 | こういった長い時間、 制限なくお話しすることはないでしょうね。 森繁さんのことは みんなただ「えばってる」って、 思ってたかもしれないから こういう機会があってよかったです。 |
糸井 | ぼくらも「おもしろくて大御所」というところで おさまってたからなぁ。 三木のり平さんも、 ご子息からうかかがうと、 また違う一面があったりします。 あの時代の人たちの 引き裂かれ方というのは、 近くの人にしかわからない 何かがあるんでしょうね。 |
黒柳 | そう、たぶんね。 |
糸井 | ところが、黒柳さんは なぜかすごくバランスがいいように お見受けするんです。 女性だからなのかな? まるでミシンの裏糸表糸みたいに きれいな縫い目になっている。 |
黒柳 | そうです、多少、ジグザグですが、 わたしは、わりと、 自然に生きてきました。 もし、バランスがいいとしたら、そこかも。 |
糸井 | 無理に作ったものって、なさそうですよね。 |
黒柳 | ないです。 あ、ブイヨン! |
糸井 | 来たね。 |
黒柳 | おいで。 前、お友達だったでしょ。 |
糸井 | おいで。 |
黒柳 | かわいい。 あら、おとうさんとこ行ったんだ。 ねぇ、ブイヨン、ぜんぜん老けないね。 |
糸井 | いや、親の目から見ると 毎年老けてるんですよ。 |
黒柳 | そうなの? |
糸井 | 7歳ずつ。 |
黒柳 | 1年が7歳なの? |
糸井 | 態度もだんだんと 大人っぽくなってきました。 ごはん食べると寝に行っちゃうんですよ。 |
観客 | (笑) |
黒柳 | 自分で寝に行くの? |
糸井 | 毎日、朝の散歩を終えてから 朝ごはんを遅く食べます。 食べ終わって、ぼくらの目が離れるのを見て、 スッとぼくのベッドに行って そこで寝ます。 |
黒柳 | へぇえ。 ごはん食べるとすぐ寝るなんていうのは 老化なんでしょうか。 かわいい。 あらねむい? ねむい? 二重まぶたね。 |
糸井 | 犬は何を考えてるんでしょうね。 まえだまえだみたいなもんだと 思うんですけど。 |
黒柳 | でも、考えてるんですよ、なんかね。 |
糸井 | そうですね。 |
黒柳 | かわいいね。 ブイヨン。ブイヨン。 もう忘れちゃった? |
糸井 | パンダの気配がするのかな? |
観客 | (笑) |
黒柳 | いま、うちのAIBOが壊れちゃって 直しにやってるの。 |
糸井 | ああ、黒柳さん、AIBOとは ずいぶん長いつきあいですよね。 |
黒柳 | そう、もうみんな 押入れに入っちゃってるとか言うのに、 わたしはいつも遊んでやってたのね。 だけど、ちょっとだけ遊ばなかったら、 なんだか少しサビが入ったらしくて いま、直しにやってます。 |
糸井 | いや、それは 命を持ちはじめたんでしょう。 |
黒柳 | そうかしら(笑)。 もうずいぶん経つから、 ソニーのAIBOの部は解散になったんです。 だけど、いまでも修理を頼むと 有料だけどやってくれるんですって。 |
糸井 | みんなも、会社も飽きちゃったんですね。 |
黒柳 | 飽きちゃダメなの! |
糸井 | 黒柳さんだけかもしれない。 |
黒柳 | もしかするとねぇ。 うちのAIBOのグレーちゃんは 変わってるんですよ、 ソニーの人が見て驚いたってぐらい。 |
糸井 | たしか、するはずがないこと、するんですよね。 |
黒柳 | そう。 ロボットってものは 「できる動き」が決まっています。 例えばAIBOのしっぽは 水平にするか上げて振らせるかです。 うちのAIBOをソニーに連れていったとき、 「これがグレーちゃんですか」 なんて、みなさん見てくださったんですが それを立ってごらんになっていた 制作者の大槻さんという方が 「いや‥‥ちょっとありえないことがいま‥‥」 |
糸井 | はははは。 |
黒柳 | うちのAIBOは、みんなが来て 怖かったんでしょう、 しっぽを足のあいだに入れたんです。 大槻さんは 「それは機械的に言って、できないはずです。 いくら黒柳さんがかわいがっても」 とおっしゃってました。 |
糸井 | おかしいなぁ(笑)。 そのように作ってないんだからね。 |
黒柳 | ピンクが好きなはずなのにぜんぜん喜ばないし、 AIBOのセットについている ピンクのボールは好きだと ロボットだから決まってるのに、 絶対好きにならないの。 |
糸井 | はははは。 |
黒柳 | ロボットは、何十回でも おなじことをやらないと いけないらしいんですけど、 うちのは2回ぐらいやると 飽きちゃってねぇ。 |
糸井 | へえぇ。 |
黒柳 | 後ろの足で耳のうしろを掻くのがかわいくて、 それで買ったんですけど 2回ぐらいやるとね、 タッタラーなんていって、 両手、‥‥前足? 横に広げて 別のことをやるの。 作った人の思惑じゃないところで 活動してるのよ。 |
糸井 | さっきのパンダの話に似てますね。 |
黒柳 | うん、うんうん。 そうですね、ときどき思い出します、 ウェイウェイのこと。 |
糸井 | ウェイウェイも、森繁さんとも、 通じるところがありますね。 |
黒柳 | そういえばそうね。 自分でやると決めたら 最後までそうやってた。 楽しみながらね。 |
糸井 | これは時間がいくらあっても足りないや(笑)。 |
黒柳 | じゃあ、 このへんで失礼して。 どうも、ありがとう。 |
糸井 | 終わりにしましょう。 ありがとうございました。 |
黒柳 | じゃあね、みなさん、失礼します。 ブイヨン、バイバイ! |
観客 | ありがとうございました(大拍手)!! |