本の装丁のことなんかを
祖父江さんに訊く。

(雑誌『編集会議』の連載対談まるごと版)

第1回 ぜんぶ、受け身です。


※今回からは、
 ブックデザインといえば、この人は!の、
 祖父江慎さんとdarlingの対談をお届けします。

 いんやー。おもしろかよ。
 説明不要の楽しさなので、さっそくどうぞ。    



糸井 祖父江さん、すごい仕事量ですよね。
体力は、あるほうですか?
祖父江 気がつかないうちに
病気とかなおっちゃったりするほうかなあ。
糸井 昔よりも、ごはんとか
ちゃんと食べてっるっぽい気がしますもんね。
祖父江 そうですね、やっぱり。
糸井 乱暴を、してない感じがしますもん。
祖父江 けっこう遊んでいますからね、こどもと。
糸井 もう2〜3歳?
祖父江 3歳になったばかりです。
おもしろいですよ。
糸井 会社、行きたくないくらい?
祖父江 (笑)会社は・・・ちょっとねえ?
糸井 (笑)
祖父江 まあ、できれば、
ずっとうちにいたいですよね。
でもいま、うちと会社が
扉ひとつはさんでいるだけですから。
糸井 へえ。それもいいですね。

今日は、大きくわけると本とか装丁とかに
関することがまずひとつと、
その次としては、
ひとりで仕事やっているということについて、
つまり会社とか大きなところではなくて
個人事業主として、
クリエイティブでやっている、
ということについて。

そのふたつを
うかがいたいんですけど。

で、まずは第一部で。
たぶん祖父江さんの場合って、
ああなろうこうなろう、って
思っていた人ではないような気がするので。
祖父江 まるで思っていないんですよ。
生まれつきねえ、ほんとに
何にも考えていないんですよ。
糸井 (笑)
祖父江 だから、
なぜいまデザインをやっているのか、
なぜいま会社をやっているのかは、
なんか、流されるがままですね。
糸井 デザインをこころざしたのは、
高校の時とか、ですか?
祖父江 それも、こころざしていないんですよ。
糸井 へえ。
祖父江 みっともない話なんですけど、
単に絵を描くのが好きだったんですね。
糸井 絵を描くのが、好きだったんですか?
祖父江 遊びとか、
ひとりで何かをやっているのが好きで、
・・・内気な子だったんですけど、
何か、そんなこんなで、
親の仕切りにあったんですよ。

高校を受験する時に、
「どこに行くんだ?」
あ、そうか、決めるんだ、って、
決めるって発想が、まず・・・。
糸井 なかったねぇ。うんうん。
祖父江 それで、
「絵が好きだから、美術科のある高校に
 行けばいいんじゃないか」
とか言われて、あ、そりゃいいな、と思って。
糸井 (笑)はい。
祖父江 それで美術科のある高校に行って、
油絵とかを好きになったら、
よく考えたら、油絵って
あんまり食べていくのはたいへんだって、
それもほかの人から聞いて。
糸井 「聞いて」(笑)。
祖父江 あ、そういえばそうだよな、と思って。
デザインだったら仕事があるけど、
油とか彫刻とか日本語だと、
なかなか生きていくのはたいへんじゃないの?
と言われて、じゃあデザインにしようと。
糸井 それが、高校時代。
祖父江 そうそう。
大学に行く時に、デザイン科を選んで。
近くに行く予定で、愛知県だったんですけど、
でもそこを落ちて。

東京に出たいというのも、あんまりなかったんですよ。
でも、1浪して受かったのが多摩美だけだったので、
だから東京に行かないと大学行けないなあ、って。
糸井 (笑)受け身なんですね、ぜんぶ。
祖父江 ぜんぶ受け身ですね。
で、ぼく、本は・・・。
糸井 それは、好きだったんだ?
祖父江 ・・・嫌いだったんです。
糸井 (笑)ははは。
本は「嫌い」。
受け身どころじゃないね、それは。
祖父江 で、本好きな子って、
よく読むじゃないですか。
あれがよくわからなくて。

学校の推薦図書とか、読むじゃないですか。
糸井 (笑)ええ・・・
「推薦図書」って言葉がおかしい。
祖父江 でも・・・読んでもねえ・・・。
筋が書いてあるわけですよ、筋が。
糸井 (笑)「筋」。
祖父江 その筋に対して、
自分が何か思わないといけないような
ところがあるじゃないですか。
それが・・・。
糸井 嫌で?
祖父江 うーん。
どう思っていいか、わかんないんです。
糸井 それ、ちゃんと読んじゃったんだね。
みんな、ちゃんと読んでないから
そんなに苦労しないんだよ。
祖父江 そうかなあ。
本って何か、いろいろと
楽しいことやかなしいことが
いろいろあって、おわるじゃないですか。
糸井 (笑)
祖父江 で、見おわって、
感想が持てなかったんですよ。
糸井 どう思っていいか、わからない。
祖父江 うん。
糸井 祖父江さん、いいなあ・・・。
おもしろいよ。
祖父江 作文の時とかが、嫌で。
・・・でも、学級委員とかを
してた時もあって。
糸井 (笑)うん。
祖父江 先生が
「祖父江くん、これの感想文を書きなさい!」
とか言われて、でも書くことないから、
「おもしろかった」みたいなことを。
そしたら先生が、
「私はがっかりしました!」って。
糸井 (笑)あはははは。
祖父江 そうなんだ、とか思って。

(つづく) 

2001-03-12-MON

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