糸井 |
祖父江さん、すごい仕事量ですよね。
体力は、あるほうですか? |
祖父江 |
気がつかないうちに
病気とかなおっちゃったりするほうかなあ。 |
糸井 |
昔よりも、ごはんとか
ちゃんと食べてっるっぽい気がしますもんね。 |
祖父江 |
そうですね、やっぱり。 |
糸井 |
乱暴を、してない感じがしますもん。 |
祖父江 |
けっこう遊んでいますからね、こどもと。 |
糸井 |
もう2〜3歳? |
祖父江 |
3歳になったばかりです。
おもしろいですよ。 |
糸井 |
会社、行きたくないくらい? |
祖父江 |
(笑)会社は・・・ちょっとねえ? |
糸井 |
(笑) |
祖父江 |
まあ、できれば、
ずっとうちにいたいですよね。
でもいま、うちと会社が
扉ひとつはさんでいるだけですから。 |
糸井 |
へえ。それもいいですね。
今日は、大きくわけると本とか装丁とかに
関することがまずひとつと、
その次としては、
ひとりで仕事やっているということについて、
つまり会社とか大きなところではなくて
個人事業主として、
クリエイティブでやっている、
ということについて。
そのふたつを
うかがいたいんですけど。
で、まずは第一部で。
たぶん祖父江さんの場合って、
ああなろうこうなろう、って
思っていた人ではないような気がするので。 |
祖父江 |
まるで思っていないんですよ。
生まれつきねえ、ほんとに
何にも考えていないんですよ。 |
糸井 |
(笑) |
祖父江 |
だから、
なぜいまデザインをやっているのか、
なぜいま会社をやっているのかは、
なんか、流されるがままですね。 |
糸井 |
デザインをこころざしたのは、
高校の時とか、ですか? |
祖父江 |
それも、こころざしていないんですよ。 |
糸井 |
へえ。 |
祖父江 |
みっともない話なんですけど、
単に絵を描くのが好きだったんですね。 |
糸井 |
絵を描くのが、好きだったんですか? |
祖父江 |
遊びとか、
ひとりで何かをやっているのが好きで、
・・・内気な子だったんですけど、
何か、そんなこんなで、
親の仕切りにあったんですよ。
高校を受験する時に、
「どこに行くんだ?」
あ、そうか、決めるんだ、って、
決めるって発想が、まず・・・。 |
糸井 |
なかったねぇ。うんうん。 |
祖父江 |
それで、
「絵が好きだから、美術科のある高校に
行けばいいんじゃないか」
とか言われて、あ、そりゃいいな、と思って。 |
糸井 |
(笑)はい。 |
祖父江 |
それで美術科のある高校に行って、
油絵とかを好きになったら、
よく考えたら、油絵って
あんまり食べていくのはたいへんだって、
それもほかの人から聞いて。 |
糸井 |
「聞いて」(笑)。 |
祖父江 |
あ、そういえばそうだよな、と思って。
デザインだったら仕事があるけど、
油とか彫刻とか日本語だと、
なかなか生きていくのはたいへんじゃないの?
と言われて、じゃあデザインにしようと。 |
糸井 |
それが、高校時代。 |
祖父江 |
そうそう。
大学に行く時に、デザイン科を選んで。
近くに行く予定で、愛知県だったんですけど、
でもそこを落ちて。
東京に出たいというのも、あんまりなかったんですよ。
でも、1浪して受かったのが多摩美だけだったので、
だから東京に行かないと大学行けないなあ、って。 |
糸井 |
(笑)受け身なんですね、ぜんぶ。 |
祖父江 |
ぜんぶ受け身ですね。
で、ぼく、本は・・・。 |
糸井 |
それは、好きだったんだ? |
祖父江 |
・・・嫌いだったんです。 |
糸井 |
(笑)ははは。
本は「嫌い」。
受け身どころじゃないね、それは。 |
祖父江 |
で、本好きな子って、
よく読むじゃないですか。
あれがよくわからなくて。
学校の推薦図書とか、読むじゃないですか。 |
糸井 |
(笑)ええ・・・
「推薦図書」って言葉がおかしい。 |
祖父江 |
でも・・・読んでもねえ・・・。
筋が書いてあるわけですよ、筋が。 |
糸井 |
(笑)「筋」。 |
祖父江 |
その筋に対して、
自分が何か思わないといけないような
ところがあるじゃないですか。
それが・・・。 |
糸井 |
嫌で? |
祖父江 |
うーん。
どう思っていいか、わかんないんです。 |
糸井 |
それ、ちゃんと読んじゃったんだね。
みんな、ちゃんと読んでないから
そんなに苦労しないんだよ。 |
祖父江 |
そうかなあ。
本って何か、いろいろと
楽しいことやかなしいことが
いろいろあって、おわるじゃないですか。 |
糸井 |
(笑) |
祖父江 |
で、見おわって、
感想が持てなかったんですよ。 |
糸井 |
どう思っていいか、わからない。 |
祖父江 |
うん。 |
糸井 |
祖父江さん、いいなあ・・・。
おもしろいよ。 |
祖父江 |
作文の時とかが、嫌で。
・・・でも、学級委員とかを
してた時もあって。 |
糸井 |
(笑)うん。 |
祖父江 |
先生が
「祖父江くん、これの感想文を書きなさい!」
とか言われて、でも書くことないから、
「おもしろかった」みたいなことを。
そしたら先生が、
「私はがっかりしました!」って。 |
糸井 |
(笑)あはははは。 |
祖父江 |
そうなんだ、とか思って。
(つづく)
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