糸井 |
祖父江さんのいるところって、
ぜんぶ、かたよってはいるけども、
一級ですよね。 |
祖父江 |
何かしらないけど、そうですね。 |
糸井 |
工作舎だって、そうじゃないですか。
入りたいと思ってる人もいるでしょ、たぶん。 |
祖父江 |
あの当時、アシスタントが
すごく多かったんですよ。
だから行かないと、自分の席がなくなってて。 |
糸井 |
はあ・・・。
活気はあったんですね。 |
祖父江 |
活気はあって、
大きな部屋で机を並べてやるんですけど、
ちょっといないあいだに、
自分の席だと思っていたところに
違う人が座っている。 |
糸井 |
それ自体が楽しいの? |
祖父江 |
それと、仕事をしているというより、
サークル的な、活動をしている感じが
あったんですよ。出版っていう活動。
何か宗教的なところもあったけど。
いや、いや・・・まあ、そんなこんなで。 |
糸井 |
そっからは、装丁の人になっていくんだ?
知らないうちに。 |
祖父江 |
そうですね。
工作舎の時は、出版はそんなに
売り上げなかったので、広告チームにいて、
とにかく何か作りたかったんですよね。 |
糸井 |
工作舎の時は、
本のチームじゃなかったの? |
祖父江 |
ええ、広告チームで。
郷ひろみだとか資生堂とかシチズンとか、
そういったものをお手伝いしていたんです。
工作舎の中で本づくりをしているチームがあって、
うらやましいな、とずっと思ってて。 |
糸井 |
逆、逆でいくんだ、ぜんぶ。 |
祖父江 |
そうですね、逆です。 |
糸井 |
じゃあ、本の知識みたいな、
祖父江さんというと、
みんなこう、編集者たちが、
祖父江さんと装丁をやると
計画が末端までかっちりしていて、
ほんとにいいと言うのですが、
あれはいつ勉強しました? |
祖父江 |
あれは、
本をやりたかったからかもしれないですね。
広告をやらされていたので、
本をやりたくてしょうがなくて。
工作舎に、資料とかがあるじゃないですか。
みんなが床にだーっと寝てるところで、
そこで資料を見ながら、こうやってるのか、とか
やりたいな、という気持ちで見ていたんですよ。 |
糸井 |
と言うことはさあ、
ひとを育てるには、させないで
飢えさせるのがいちばんかもしれない。 |
祖父江 |
(笑) |
糸井 |
いま、自分で社員に
そんなことしていないでしょ? |
祖父江 |
教えちゃってる。 |
糸井 |
ねえ?
あ、いまの、すごいいいヒントだね。
だから「するな!」って(笑)。 |
祖父江 |
「だめだ!」って。 |
糸井 |
「お前は、こっちをやれ」(笑)。 |
祖父江 |
やりたいことはやらせないで、
そうか、それがいいのかぁ・・・。 |
糸井 |
みんなに面接して、
「いちばんやりたいことは?」って聞いて。 |
祖父江 |
「これやりたいんです」って言ったら・・・。 |
糸井 |
(笑)
「わかった。一切やるな」って。 |
祖父江 |
それ、手かも。 |
糸井 |
でも実際、そうでしたよね? |
祖父江 |
うん。 |
糸井 |
なんかいま、じーんとした。
自分もそうだったんだろうなあと思ったから。
できたらいいなあ、と思うことは、
勝手に勉強しますよね。 |
祖父江 |
そうですよね。
そういうのって、覚えちゃいます。
覚えなきゃいけないものって、
何か覚えられないですよね。 |
糸井 |
邱永漢さんが、
みんなが麻雀をやるのに
徹夜でも何でもするけど、誰も文句言ってない、
あんなたいへんなことを・・・、って言うけど、
そういうふうにやれたら、いちばんいいですよね。
実際だから、祖父江さんが
本を知りたいという時には、
麻雀とおんなじようにやってたんだ。 |
祖父江 |
ええ、そうですね。 |
糸井 |
もし、そこのところで
ギャランティされてたら、
あ、このへんのところでやめておこう、
って思っただろうね。 |
祖父江 |
そうだ。 |
糸井 |
これ、中小企業懇談会としては、
非常に重要な会合でしたね(笑)。 |
祖父江 |
(笑)そうですねえ。 |
糸井 |
まったくそうだ。
(つづく)
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