糸井 |
自分の事務所のスタッフには
どうやったらやりやすいかなあ、とか
考えて与えちゃうじゃない?
ここをこうやればもっとやるのにな、って。
ここは覚えていないから教えておこう、とか。 |
祖父江 |
そうですね。
こうこうこういうことで
こうなるんだよ、とか、
けっこう丁寧に教えちゃうんですよ。 |
糸井 |
教えちゃうよね?
しかもそれに、すごく時間を
とっちゃったりしますよね(笑)。 |
祖父江 |
『学』として学んでおいたほうが
いいであろう、と思っちゃうんですね。 |
糸井 |
きっと相手は聞いていないんですね。
んなことは。 |
祖父江 |
そうですね。
言わずにすますのか・・・。 |
糸井 |
むつかしいけど、
ちょっと挑戦したいね。 |
祖父江 |
でも、かなりむつかしそうですね、
やるとしたら。 |
糸井 |
アメリカの野球のコーチが
そうらしいです。
聞きに来ない限りは教えないって。 |
祖父江 |
へー。 |
糸井 |
で、聞きにいったら
「こうだよ」って言うんです。
日本人は教えすぎかも。 |
祖父江 |
そういうのが、大事なのかも。 |
糸井 |
農業は、教えるんだよね。
ああしてこうして、
そうやっちゃだめとか。
おんなじことのくりかえしじゃないですか。
だから、どこまでが成功、どこまでが失敗、の
線がきれいに出るじゃないですか。
このくらいの高さくらいになったら
植え替えて、とか。
「いいアイデアがあるんですよ」
とか言って、作物をほっとくわけには
いかないじゃないですか。 |
祖父江 |
考えてる時間も、問題ですもんね。 |
糸井 |
でも狩猟的に考えると、
やっぱりばくちだから、
「・・・の、はずだ」で行ったら
いませんでした、っていうの、
ありますよね? |
祖父江 |
うん。 |
糸井 |
あと、狩猟は、手伝う誰かが失敗したら、
自分があぶない、というのも、ありますよね。
農耕じゃなくて、
狩猟方面にに持っていったほうが、いいね。 |
祖父江 |
ええ。 |
糸井 |
だから、祖父江さん、
工作舎にいて、よかったんだね。
いけないことは何もない、っていうことが
よくわかるね。 |
祖父江 |
工作舎にいた人って、みんな、
自分が工作舎にいたこと言わないけど。
それもまた不思議なんですね(笑)。 |
糸井 |
そんだけ、濃いものがあったんでしょうね。 |
祖父江 |
なんかねえ。あるんでしょうね。 |
糸井 |
本じたいが濃いもん。 |
祖父江 |
工作舎のデザイナーは、
7級の字(※とても小さい活字)とか、
使っていましたからねえ。 |
糸井 |
(笑)あった、あった。
いま、7級って、誰が読むんだよ、
って感じですよね。
あれはやっぱ、ああすると読むんですか? |
祖父江 |
あれは、
7級にすると、入りこむんですよ。
そうすると、まわりが見えなくなるから、
いい効果なんです。 |
糸井 |
宗教書にはぴったりなんだ。
いま、デジタル的なデザインしてる人って、
7級的なことを、やりたがりますよね? |
祖父江 |
やりたがりますね。
あれはね・・・
ちょっと、問題ですね。 |
糸井 |
周囲に、目を動かせない効果があるんだ。 |
祖父江 |
そうですね、印刷の場合は。
やっぱり、これで20級とか24級で打たれたら、
のめりこんでは見ないですよね。
やっぱり、自分の場所と本との関係性を
味わいながら、読んでいますよね。
ひどい時には、7級じゃなくて
5級くらいのキャプションもありましたよ? |
糸井 |
(笑) |
祖父江 |
どこまで読めるんだろう、っていう。 |
糸井 |
(笑)あったかも。
ほんとにアリがいる、みたいなの、
あったよねえ? |
祖父江 |
ええ。 |
糸井 |
俺は、工作舎の流行っていた年代より
ちょっと上なので、あんまり、
行かなかったんですよね。
でも、時々、文学書か何かで、
これは読みたいなあと思っているようなのが、
ポンポン出るじゃない。
それが魅力的でしたよね。
ああいうプロデュースはよかったですよ。
はずれと当たりがものすごく激しいの。 |
祖父江 |
そうですね。
いい本は、ありましたね。
(つづく)
|