糸井 |
今、就職しない子の話を聞くと、
「したいところにするまでは、いいんだ」
って言うんですよね。 |
末永 |
それは、甘えなんです。
そういうことを言ってられるのは。 |
糸井 |
つまり、
「私はしたいことがあるので、
そうじゃないところだったら、
大きな会社でも嫌だ」って言っていて、
ぼくはそれを聞いた時には、
「そりゃあ甘えだ」と思うよりも、
すげえなあ、って感じたんですよ。
それって、昔だったら、
とりあえずは、就職しといて、とか、
給料が先に立つじゃない?
でも、給料も別に、
30万でも10万でも、生活のレベルって
大きくは変わらないので、それだったら
フリーターでいいやって考えている・・・。
「一生は短いんだから、一番やりたいことをやる」
と思っている人が、こんなにたくさんいる時代って、
俺の年だと、かっこいいと思っちゃうよね? |
松本 |
「余裕かあ?」って思いますよ(笑)。 |
高須 |
ははは(笑)。 |
糸井 |
(笑)俺らが、口では言ってたけど、
ガマンしてやってた、その無駄な時間を、
彼らは「無駄でしょう?」って言ってるような。 |
松本 |
・・・そこは複雑やなあ。
ぼくはどっか、それをまっとうした、
みたいなところがありますからね。
それがいちがいに悪いことやとは思えへんし、
「甘い」と言われるのもわかりますね。 |
糸井 |
ぼくも両方やってやってた世代だから、
両方おもしろいのはわかるんですよ。
親父が、こつこつずうっとひとつの道で
かせいでて、子どもを大学にやった、
という思いも、あるだろうなあ・・・
そこは、心の持ち方になっちゃいますよね。 |
末永 |
豊かになったということは明らかですよね。
飢えるということが想像できないわけで・・・。
ちょっと前までは、飢えるということに対して
本気で心配していましたから。 |
高須 |
そうですよね。 |
末永 |
でも、今は、飢えちゃうという心配が、
まったくないんでしょうね。 |
高須 |
だって、ぼく、
親からそう言われていましたからね。
「そんな、いい時代じゃないんだから。
どうなるか、わからないんだから」
ということを常に言われてると、
それはやっぱり、少しは安定を願うし、
そっちの道も考えとかな・・・でも、
やりたいこともあるし、っていうので。
そういうようなことは、もう、
体にしみついていますよね。
「やばいぞ、やばいぞ」っていう感じは、
世代的に、まだあります。 |
糸井 |
高須くんが「俺、食えるんだ」って
感じたのは、いつぐらいですか? |
高須 |
うーん・・・。 |
松本 |
今もちょっと不安感じてるみたいだけど。 |
高須 |
うん、まだ感じてます。
全然、不安ですよ。
まだ何となく見えたのが、
でもまあまあ、28とか29の頃です。
「あ、仕事ができる」って。
それはね、自分の位置が
全体の中で見えてこないと不安だった・・・。
自分がどこにいるのかが、
最初はずっと、分からなかったから。 |
糸井 |
若い頃って、マトリックスが、ないよね。 |
高須 |
何となく、全体像が見えた時に、
「あ、俺この位置なんだ、それなら大丈夫」とか。
その全体が把握できないと、不安なんですよ。 |
糸井 |
でも、その「全体」って、入れ替えあるよ? |
高須 |
そうなんです。
でもまあ、今の時点、って考えると、
一応答えが出るんですよ。
今自分がどこの位置、って考えると、
放送作家ってわからないじゃないですか。 |
松本 |
いまいち、
最終形が見えへんからな、放送作家って。 |
高須 |
例えば芸人なら、ゴールデン何本持ってる、
長者番付に乗った・・・いろいろあるじゃないですか。
そういう、認知があるじゃないですか。
でも、放送作家って、実はそんなにないんですよね。
秋元さんになるのか、高田文夫さんになるのか、
巨泉さんになるのか何になるのかは、わからないけど、
ちゃんとしたかたちで出なくなっていくなり、
裏にまわって会社を持つなり、全然、
それはまっぷたつに別れるわけですから。
テレビやっている状況では、ないですよね? |
糸井 |
そうですかー。
松っちゃんは、いつ食えたんですか。 |
松本 |
ぼくは、二十・・・六、七くらいですかねえ。
大阪で、ちょっとだけ人気が出た時に、
「ああ、食えるのかなあ」と、
ちょっとだけ思ったんですけど。
今振り返ってみると、
そん時にそんなん思ったらあかんぞ、
と思うんですけど、その時は思いました。
でも、実際は、いつでしょうね・・・
30超えたぐらいから、ああ、大丈夫かなと。 |
糸井 |
30歳超えたあたりには、
もう、番組いっぱい持っていたでしょ。 |
松本 |
でも・・・。 |
高須 |
そうや、それ、不安感じすぎやで。 |
糸井 |
観てると、ふたりとも、おんなじだって(笑)。 |
高須 |
(笑)そうかなあ〜。
給料、月々で明細に100万入った時に、
「あれ?俺、月々100万入るように
なったんや・・・俺は大丈夫」
って、普通、一度は、
簡単な尺度としてそう思うじゃない?
松本も、大阪で清水圭といてて、
「圭、俺、やっと給料100万取れるようになったわ」
というのを、言ったんやて?それで圭が、
「おお、100万いったんか。もう大丈夫やなあ」
って思ったんやて・・・。 |
松本 |
(笑) |
糸井 |
それ、リアリティあるなあ。 |
高須 |
あの時って、お金あんまりなかったやんか。
そんなに入るなんて思えへんやんか。
もちろん、それも、実は保証のない金ですよ。
それでも、何の保証もない100万が
たまたま入っただけでも、
おいおい、すごいぞ、と思いましたもん。
だから松本がそう言ったというのも、
ぼくは当時、すごいうなづけました。 |
松本 |
ただ、ぼくの形態はすごくむつかしくて、
うーん、こう言うと、語弊あるかなあ・・・。
テレ東の旅番組をやるわけには
いかないじゃないですか。 |
糸井 |
(笑) |
松本 |
自分が嫌だから、じゃなくて
・・・許さないでしょう。
それはできないんですよ。
やりたい、やりたない、に関わらず。
だとすると、どっかで、今をキープするか、
上にいくか、じゃなければ・・・。 |
糸井 |
あるか、ないか、なんですよね。 |
松本 |
だから、
徐々にフェードアウトするような権利を、
ぼくは、得ていないと思うんです。
だからどこかでスパッと辞めるしかないと思ってて。 |
糸井 |
それは、俺でさえ思った。
ゆるやかに下げていくというのは、
やっぱり、自分としてしちゃいけないんだなあ、
と思うから、するならタダの仕事をするし。
気まぐれで何でもするよっていうのはあるけど、
どちらにしても「俺が決める」と思ってました。
俺は芸能の人じゃないけど、例えば
映画のタイトルで順番がどうこうって、
よく言うじゃないですか。そういう時に、
「その場所だったら、出演しない」
と言えるところに自分でいないと、
どんどん下がっていく・・・。
下がっているのを知った人から
「じゃ、うちもその位置でお願いします」
と次からどんどん言われることの嫌さって、
想像しただけで、ぞっとしますよね。
でも、例えばの話、それも、旅まわりで
おばあちゃんこんにちは、って話しかけることを、
蔑んでいるわけじゃないわけで。
ただ単に、それをしないからこそ
守ってきたものが、あるというだけだよね。
ひとつしたことで「うちも」って言われたら、
「ついに来たかあ!」って思わざるをえない。
・・・その恐怖は、俺、少し年とってから来た。
「あ、なるな」って思って、だったら、
ぜんぶ辞めてやろうと思ったんだよね。
要するに、一銭にもならなくても、
俺が選んでやっていることはぜんぶ一流って。
そう決めれば、いいんだもん。 |
松本 |
こないだ、俺は今田に言ったんだけど、
たぶん、最終的に芸能界で稼ぐ金額は、
俺は、今田に負けると思う。 |
高須 |
なるほどな・・・。 |
糸井 |
なるほどね。総合的にね。 |
松本 |
金でいうと、たぶんそうなると思う。 |
糸井 |
うん。しょうがないんだよね。 |
松本 |
それは、しょうがないです。
だから、俺から見たら、ある種、
高須のほうが順風満帆だなあと。 |
高須 |
そうかなあ。全然違うけどなあ。
(つづきます) |