帰ってきた松本人志まじ頭。

第6回 考え抜いたことと、考えなかったことと、
    結論はたぶん、おんなじになるような。




(※前回の、いつから自分の仕事で
  やっていけるかどうか?の話にひきつづき、
  ものごとをやる際の基準とかについてしゃべってる。
  いよいよ「まじ頭」っぽくなってきましたよーーっ)

高須 テレビの世界っていうのは限られているわけで、
その枠の中の何本を握っているかで、
自分の立ち位置が、わかるんです。
自分がここを取れて視聴率取れて、
で、こっちでは好きなことをやれてる、と、
なんとなくわかってきます。

タレントにもそういうのがあるじゃないですか。
テレビというのがいちばん大きな尺度で、
テレビでダウンタウンは何本やってる、
ゴールデンでこれだけレギュラー持ってる、
ギャラをこのくらいもらってる、
このぐらいの認知度がある、って、
それはひとつの尺度に、するじゃない?
・・・で、そこで、糸井さんの尺度って
どこに置いてるのかなあ?って思った。

糸井さん、バンバン行くじゃないですか。
尺度がないかもしれないところに行くのに、
不安はないのではないか?と思うんですけど。
糸井 ないよ。

それはだから、
ふたりが話しているのを聞いたら、
ぼくはもうちょっと馬鹿だったんです。
もう、二十歳過ぎて給料もらった時に、
「あ、俺は食える」と思ったもん。
そこは、おめでたいというか
図々しいというか・・・。就職して2年間、
ぼくは、親から仕送りをもらっていましたから。

つまり、4年間大学に行くはずなので、
中退しちゃったけど仕送りだけはください、
って言ったんですよ。
「これは、修行だから」とうまいこと言って。
親父も「そうだな」って言ってくれた。

で、仕送りと給料のすごい安いのとを
足して暮らしていましたから。
それは、実際に、食えていた。
他のことを考えなければだけども。

そこで「何だ、食えるや」というのを
すごい早い時期に思ったので、
何かをやめたり飛びこんだりというのが
ぼくは平気でできましたよね。
それを、繰り返してきましたし。

前の結婚をちゃんとやれていれば、
ある意味、ぼくは順風満帆でしたから。
高須 (笑)そっちの話にまた戻った。
糸井 それでぜんぶを失った時に、
「こりゃあもう、楽しく生きるしかないな」
と、もう大博打でも何でも、
好きなことをやるしかないなと、
覚悟ができたんですよ。
やっぱり「足し算」で考えたら、
失うものが、怖いですよお〜?

大嵐で家なくなっちゃった人とか、
神戸で大震災に遭った人を見ていると、
「この都市、だめになるな」って思ったじゃん。
・・・でも、何とかなってるじゃない?
ああいうのを見ると、みんなが考えている
ストックというか、蔵の大きさというのが、
あんまりたいしたことないなって、
体でわかったなあ。
高須 そうですね。
松本の財産が何億あるかはわからないけど、
その貯金がなければ今の松本はないかと言えば、
別に関係ないですからね。
糸井 そうそう。
高須 ストックは、何に使うかと言えば、
使えなかったらぜんぶ一緒ですもん。
松本 使えなければ、ないのも同然ですよね。
糸井 そうそう。ポジションもそうで、
つまり、「松本だから」ということで
5年後に仕事を持ってくる人はいないんですよね。
「松本だから」の状態を5年続けていれば、
「松本だから」になるんだけど、そうじゃないと、
ある時に「松本だった人」って、なっちゃう・・・。
そうすると、ストックは、頼りにできないんだよ。
高須 ここのところでこうやっていくとか、
つなぎあわせと言うか、バトンと言うか、
変化を考えることって、最近、あると思う。
松本にしても、そんなこと昔は考えてなかったのに、
自分の終わり方を考えているような・・・。
糸井 松っちゃん、ずっと考えているように見えるけど。
高須 いや、でもまあまあ、最初のうちは、
まずは、上がること、頂点に立つことがすべてで、
エンディングまでは考えてなかったと思うんです。
でも、あるところで終わりを意識して、
どっかから、スライドさせていきますよね。
・・・あくまでも、微妙に、ですけど。
「そんな無様な仕事はできへん」とか。

昔なら、余力があれば、
どんな仕事でもしてよかった。
「テレ東もやれよ、おもしろい」って言えた。
でも、今は自分のキャラを
どうスライドさせて先に進んでいくかが、
ぼくらにとっては、すごいむつかしいんです。

そこんところで、糸井さんは、
ぽんぽん行くじゃないですか。
「これやってみたい」って、ぽーんと。
糸井 俺、考えてないもんなあ。
高須 と言いながらも、考えてるでしょ? また〜。
糸井 うーん・・・たぶん、
考え抜いたことと、考えなかったことと、
結論おんなじになるというか。
末永 はい。
糸井 そうですよね?
末永 そんなに変わらないかもしれませんね。
考えたことによっての結論、というのは。
糸井 つまり、リスクと、コストと、成功報酬、
この3つの軸があるとするじゃない?
でも、どれもリスクあるし、
どれもコストかかるし・・・・。

でも、よく考えてみると、
考えている時って何をケチってるかというと、
「考えるコスト」をケチってるんですよ。
早くラクになりたいと思って、考える。

野球でも、「勝利の方程式」とか
こうなると勝てる、というところに
行きたくて考えたりしてしまうと、
やっぱりうまくいかないと思うんだよなあ。
壊れるかもしれないという前提があるはずの
方程式に乗るような試合をしたくなると、
つまり、五回ぐらいまでしか
野球をやっていないことになっちゃう。

ほんとは、九回の裏に
逆転されたりするのが野球なのに、
「考えるの、辞めさせてくれ〜」って言いながら
ラクになりたくて勝利の方程式を考えてしまったら、
そこで迷惑なのは、選手なんです。
だったら、何にも考えないでも、
答えは、おなじだと思う。

「勝利の方程式」を作るために
10年考えました、といっても無理なんです。
・・・これ、説明になっていないかなあ。
高須 いや、わかります。
糸井 ぼくは、だったらいっそ、
というところに行っちゃいたくなった。
自分がおもしろいとほんとに思えるかどうかとか、
「あの人とはやりたい」という気持ちとか・・・
ガキがともだちと遊ぶ時とおんなじになってて。

「イトイさん、これは無理ですかねえ」
って言われた時にも、
その言われ方を好きになったりしてさあ、
「無理じゃないんじゃないかあ?」
って言ってみたくなったり。
そうすると、予算ゼロでも
何ができるのかを考えたくなって。


(明日に、つづきます)

2001-01-10-WED

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