高須 |
テレビの世界っていうのは限られているわけで、
その枠の中の何本を握っているかで、
自分の立ち位置が、わかるんです。
自分がここを取れて視聴率取れて、
で、こっちでは好きなことをやれてる、と、
なんとなくわかってきます。
タレントにもそういうのがあるじゃないですか。
テレビというのがいちばん大きな尺度で、
テレビでダウンタウンは何本やってる、
ゴールデンでこれだけレギュラー持ってる、
ギャラをこのくらいもらってる、
このぐらいの認知度がある、って、
それはひとつの尺度に、するじゃない?
・・・で、そこで、糸井さんの尺度って
どこに置いてるのかなあ?って思った。
糸井さん、バンバン行くじゃないですか。
尺度がないかもしれないところに行くのに、
不安はないのではないか?と思うんですけど。 |
糸井 |
ないよ。
それはだから、
ふたりが話しているのを聞いたら、
ぼくはもうちょっと馬鹿だったんです。
もう、二十歳過ぎて給料もらった時に、
「あ、俺は食える」と思ったもん。
そこは、おめでたいというか
図々しいというか・・・。就職して2年間、
ぼくは、親から仕送りをもらっていましたから。
つまり、4年間大学に行くはずなので、
中退しちゃったけど仕送りだけはください、
って言ったんですよ。
「これは、修行だから」とうまいこと言って。
親父も「そうだな」って言ってくれた。
で、仕送りと給料のすごい安いのとを
足して暮らしていましたから。
それは、実際に、食えていた。
他のことを考えなければだけども。
そこで「何だ、食えるや」というのを
すごい早い時期に思ったので、
何かをやめたり飛びこんだりというのが
ぼくは平気でできましたよね。
それを、繰り返してきましたし。
前の結婚をちゃんとやれていれば、
ある意味、ぼくは順風満帆でしたから。 |
高須 |
(笑)そっちの話にまた戻った。 |
糸井 |
それでぜんぶを失った時に、
「こりゃあもう、楽しく生きるしかないな」
と、もう大博打でも何でも、
好きなことをやるしかないなと、
覚悟ができたんですよ。
やっぱり「足し算」で考えたら、
失うものが、怖いですよお〜?
大嵐で家なくなっちゃった人とか、
神戸で大震災に遭った人を見ていると、
「この都市、だめになるな」って思ったじゃん。
・・・でも、何とかなってるじゃない?
ああいうのを見ると、みんなが考えている
ストックというか、蔵の大きさというのが、
あんまりたいしたことないなって、
体でわかったなあ。 |
高須 |
そうですね。
松本の財産が何億あるかはわからないけど、
その貯金がなければ今の松本はないかと言えば、
別に関係ないですからね。 |
糸井 |
そうそう。 |
高須 |
ストックは、何に使うかと言えば、
使えなかったらぜんぶ一緒ですもん。 |
松本 |
使えなければ、ないのも同然ですよね。 |
糸井 |
そうそう。ポジションもそうで、
つまり、「松本だから」ということで
5年後に仕事を持ってくる人はいないんですよね。
「松本だから」の状態を5年続けていれば、
「松本だから」になるんだけど、そうじゃないと、
ある時に「松本だった人」って、なっちゃう・・・。
そうすると、ストックは、頼りにできないんだよ。 |
高須 |
ここのところでこうやっていくとか、
つなぎあわせと言うか、バトンと言うか、
変化を考えることって、最近、あると思う。
松本にしても、そんなこと昔は考えてなかったのに、
自分の終わり方を考えているような・・・。 |
糸井 |
松っちゃん、ずっと考えているように見えるけど。 |
高須 |
いや、でもまあまあ、最初のうちは、
まずは、上がること、頂点に立つことがすべてで、
エンディングまでは考えてなかったと思うんです。
でも、あるところで終わりを意識して、
どっかから、スライドさせていきますよね。
・・・あくまでも、微妙に、ですけど。
「そんな無様な仕事はできへん」とか。
昔なら、余力があれば、
どんな仕事でもしてよかった。
「テレ東もやれよ、おもしろい」って言えた。
でも、今は自分のキャラを
どうスライドさせて先に進んでいくかが、
ぼくらにとっては、すごいむつかしいんです。
そこんところで、糸井さんは、
ぽんぽん行くじゃないですか。
「これやってみたい」って、ぽーんと。 |
糸井 |
俺、考えてないもんなあ。 |
高須 |
と言いながらも、考えてるでしょ? また〜。 |
糸井 |
うーん・・・たぶん、
考え抜いたことと、考えなかったことと、
結論おんなじになるというか。 |
末永 |
はい。 |
糸井 |
そうですよね? |
末永 |
そんなに変わらないかもしれませんね。
考えたことによっての結論、というのは。 |
糸井 |
つまり、リスクと、コストと、成功報酬、
この3つの軸があるとするじゃない?
でも、どれもリスクあるし、
どれもコストかかるし・・・・。
でも、よく考えてみると、
考えている時って何をケチってるかというと、
「考えるコスト」をケチってるんですよ。
早くラクになりたいと思って、考える。
野球でも、「勝利の方程式」とか
こうなると勝てる、というところに
行きたくて考えたりしてしまうと、
やっぱりうまくいかないと思うんだよなあ。
壊れるかもしれないという前提があるはずの
方程式に乗るような試合をしたくなると、
つまり、五回ぐらいまでしか
野球をやっていないことになっちゃう。
ほんとは、九回の裏に
逆転されたりするのが野球なのに、
「考えるの、辞めさせてくれ〜」って言いながら
ラクになりたくて勝利の方程式を考えてしまったら、
そこで迷惑なのは、選手なんです。
だったら、何にも考えないでも、
答えは、おなじだと思う。
「勝利の方程式」を作るために
10年考えました、といっても無理なんです。
・・・これ、説明になっていないかなあ。 |
高須 |
いや、わかります。 |
糸井 |
ぼくは、だったらいっそ、
というところに行っちゃいたくなった。
自分がおもしろいとほんとに思えるかどうかとか、
「あの人とはやりたい」という気持ちとか・・・
ガキがともだちと遊ぶ時とおんなじになってて。
「イトイさん、これは無理ですかねえ」
って言われた時にも、
その言われ方を好きになったりしてさあ、
「無理じゃないんじゃないかあ?」
って言ってみたくなったり。
そうすると、予算ゼロでも
何ができるのかを考えたくなって。
(明日に、つづきます) |