糸井 |
「自分だったらどうするだろうなあ?」
とかいうことは、つまらないものなら、
こちらに思わせてくれないはずですよね。
でも、松本さんの場合、
「自分だったらどうするだろうなあ?」
というこちら側の想像力を、
いつもつかんでくれますもん。 |
高須 |
そこは、うまいです。 |
糸井 |
ああいう時に、世の中には
天才っていうタイプの人は、
いるんだなあと思うね。 |
高須 |
ぼく、だから、
松本は絵描きだと思うんですよ。
人の頭の中に、絵を描かす。
トントントンっていって、
最後に哲学が入って「どう?」という。
で、ガッと笑えるようになっている。
そういう絵描きだと思うんです。
喋り方がぜんぶそうで、
一個一個ばらさないように
振って振って、で、さいごにドーンと出す。 |
糸井 |
松っちゃんが
それをやっているのを観ていると、
考えを追っかけていく楽しさがあると思います。
「自分だったらどうするだろうなあ」
と無意識に追いかけているから、
そこが一致してもうれしいし、
裏切られても楽しいし、ぼくたちは、
完全に作り手として楽しんでいますよね。
あ、今度松本さん、脳波を測りませんか?
ぼくこのあいだ測ってもらって。
計算とかいろんなことをしている間の
脳波を測る、というものなんだけど、
そしたら、日経新聞を読んでいる時にさえも、
ぼくは、右脳・・・感情側が動いてたんです。
「ブッシュかゴアか」とか書いてある時に
右脳が動いているというのが
どういうことかというと、
たぶんぼくは、その文章を
書いている人の気持ちが知りたいだって。
えっと・・・
例えば「ブッシュ、不覚!」って
書いてあったとするじゃないですか。
だとすると、それは「不覚だ」と
思った奴がいたからそう書いたわけで。
純粋な事実なんか、
世の中には何もないじゃないですか。 |
松本 |
うん。 |
糸井 |
そうすると、彼がそれを書いた時に、
「この野郎」と思っているのか、それとも
「何とかこの人に良くしてやってください」
なのかが、やっぱり、含まれていて。
あらゆる文章の中に感情が入っているはずで、
そういうのを観るのが俺は好きなんだ、
ということが、よーくわかりました。
だから、日経新聞の一面でも
そうしてるってことは、きっと、
あらゆる場面でそうなんだと思います。
例えば、詐欺師っぽい奴に会うと、
言葉のやり取りが何ともないとしても、
なんか・・・不快じゃないですか。 |
松本 |
(笑)はい。 |
糸井 |
実は、
彼が何を考えてしゃべっているかを、
ぼくが絶えず考えているからこそ
その時はすごく疲れるし不快だし・・・。
ぼくはそう思っていたということを、
脳波を測っていて、わかったんですよ。
例えば、講演とかしたあとで、
質問してくる奴に、ぼくは
悪口を言う時があるんだけど、
それは、あなたの考えは素晴らしい、
っていう演説なんですか?
それともぼくに答えを聞きたい質問なんですか?
と、言いますよね。 |
松本 |
(笑)やらしいこと言いますね〜。
・・・でも、そうですよね。
それは、よく感じる。
番組の投稿欄と一緒ですよね。 |
高須 |
(笑) |
松本 |
お前はそれをほんとに言いたいのか?
それともこれを新聞に載せてほしいから
そう言ってるのか?と思うことは、
ほんまにありますよね。 |
糸井 |
そう。
ぼくは瞬間的に天狗になる人間なので、
それを、直接言ったりするんですよ。 |
松本 |
(笑)喧嘩になりますよ。 |
糸井 |
なります。
なりますけど、早くその場を
喧嘩にして別れたいという気持ちがあるから、
いいや、と思ってやっちゃうんですよ。 |
松本 |
でもそれ、わかるなあ。 |
糸井 |
わかるでしょ?
要するに、テーマは何かと言うと、
語られていることじゃなくて、
動機のほうにあるわけですよね。
末永さんのような人に会って
おもしろいと思うのは、
ものすごい金儲けをやりつづけていて、
テーマが「金儲け」だったのか、
それとも「お金を使ったゲーム」だったのか、
そのへんがもう、わけのわからない、
人には想像のつかないものになってきてる。
そういう話が聞きたいわけですよ。
具体的に儲かる方法を聞いたって、
あんまりおもしろくないですよね。
それは誰かがやればいいだけのことだから。
それよりも、人がいろんなことを思っていたり、
こういうことを言いたいのにこう言ったとか、
そういうことを、ぼくが、いちいち、
「おもしろいなあ」と思って見てるほうが、
楽しいじゃないですか。
末永さんと最初に会った時も、
この人のうなづき方っていいなあ、
と思っていて、だから知りあいになりました。
うなづいたり笑ったりしているタイミングが
自分とおんなじ人とは、仲良くなれるんですよ。
いくら立派なことを言っていても、
「違う。あれとは、いいや」
って、しょっちゅう思うじゃないですか。
たぶん、松本さんもおなじじゃないかなあ。 |
松本 |
それは、わかりますね。 |
糸井 |
それ、脳波調べたら、俺は
いつもそういう考えをしているし、
それしかできないんだろうと分かった。
論理でどうだとかいうよりも、
わからない人は捨てればいいわけだし・・・
つまり、動機がすべてだっていうことが、
わかったんですよ。
(明日に、つづきます) |