帰ってきた松本人志まじ頭。

第9回 話している動機を知りたい。



糸井 「自分だったらどうするだろうなあ?」
とかいうことは、つまらないものなら、
こちらに思わせてくれないはずですよね。

でも、松本さんの場合、
「自分だったらどうするだろうなあ?」
というこちら側の想像力を、
いつもつかんでくれますもん。
高須 そこは、うまいです。
糸井 ああいう時に、世の中には
天才っていうタイプの人は、
いるんだなあと思うね。
高須 ぼく、だから、
松本は絵描きだと思うんですよ。
人の頭の中に、絵を描かす。
トントントンっていって、
最後に哲学が入って「どう?」という。
で、ガッと笑えるようになっている。

そういう絵描きだと思うんです。
喋り方がぜんぶそうで、
一個一個ばらさないように
振って振って、で、さいごにドーンと出す。
糸井 松っちゃんが
それをやっているのを観ていると、
考えを追っかけていく楽しさがあると思います。
「自分だったらどうするだろうなあ」
と無意識に追いかけているから、
そこが一致してもうれしいし、
裏切られても楽しいし、ぼくたちは、
完全に作り手として楽しんでいますよね。

あ、今度松本さん、脳波を測りませんか?
ぼくこのあいだ測ってもらって。

計算とかいろんなことをしている間の
脳波を測る、というものなんだけど、
そしたら、日経新聞を読んでいる時にさえも、
ぼくは、右脳・・・感情側が動いてたんです。

「ブッシュかゴアか」とか書いてある時に
右脳が動いているというのが
どういうことかというと、
たぶんぼくは、その文章を
書いている人の気持ちが知りたいだって。

えっと・・・
例えば「ブッシュ、不覚!」って
書いてあったとするじゃないですか。
だとすると、それは「不覚だ」と
思った奴がいたからそう書いたわけで。
純粋な事実なんか、
世の中には何もないじゃないですか。
松本 うん。
糸井 そうすると、彼がそれを書いた時に、
「この野郎」と思っているのか、それとも
「何とかこの人に良くしてやってください」
なのかが、やっぱり、含まれていて。

あらゆる文章の中に感情が入っているはずで、
そういうのを観るのが俺は好きなんだ、
ということが、よーくわかりました。

だから、日経新聞の一面でも
そうしてるってことは、きっと、
あらゆる場面でそうなんだと思います。

例えば、詐欺師っぽい奴に会うと、
言葉のやり取りが何ともないとしても、
なんか・・・不快じゃないですか。
松本 (笑)はい。
糸井 実は、
彼が何を考えてしゃべっているかを、
ぼくが絶えず考えているからこそ
その時はすごく疲れるし不快だし・・・。
ぼくはそう思っていたということを、
脳波を測っていて、わかったんですよ。

例えば、講演とかしたあとで、
質問してくる奴に、ぼくは
悪口を言う時があるんだけど、
それは、あなたの考えは素晴らしい、
っていう演説なんですか? 
それともぼくに答えを聞きたい質問なんですか?
と、言いますよね。
松本 (笑)やらしいこと言いますね〜。
・・・でも、そうですよね。
それは、よく感じる。
番組の投稿欄と一緒ですよね。
高須 (笑)
松本 お前はそれをほんとに言いたいのか?
それともこれを新聞に載せてほしいから
そう言ってるのか?と思うことは、
ほんまにありますよね。
糸井 そう。
ぼくは瞬間的に天狗になる人間なので、
それを、直接言ったりするんですよ。
松本 (笑)喧嘩になりますよ。
糸井 なります。
なりますけど、早くその場を
喧嘩にして別れたいという気持ちがあるから、
いいや、と思ってやっちゃうんですよ。
松本 でもそれ、わかるなあ。
糸井 わかるでしょ?
要するに、テーマは何かと言うと、
語られていることじゃなくて、
動機のほうにあるわけですよね。

末永さんのような人に会って
おもしろいと思うのは、
ものすごい金儲けをやりつづけていて、
テーマが「金儲け」だったのか、
それとも「お金を使ったゲーム」だったのか、
そのへんがもう、わけのわからない、
人には想像のつかないものになってきてる。
そういう話が聞きたいわけですよ。

具体的に儲かる方法を聞いたって、
あんまりおもしろくないですよね。
それは誰かがやればいいだけのことだから。

それよりも、人がいろんなことを思っていたり、
こういうことを言いたいのにこう言ったとか、
そういうことを、ぼくが、いちいち、
「おもしろいなあ」と思って見てるほうが、
楽しいじゃないですか。

末永さんと最初に会った時も、
この人のうなづき方っていいなあ、
と思っていて、だから知りあいになりました。

うなづいたり笑ったりしているタイミングが
自分とおんなじ人とは、仲良くなれるんですよ。
いくら立派なことを言っていても、
「違う。あれとは、いいや」
って、しょっちゅう思うじゃないですか。
たぶん、松本さんもおなじじゃないかなあ。
松本 それは、わかりますね。
糸井 それ、脳波調べたら、俺は
いつもそういう考えをしているし、
それしかできないんだろうと分かった。

論理でどうだとかいうよりも、
わからない人は捨てればいいわけだし・・・
つまり、動機がすべてだっていうことが、
わかったんですよ。


(明日に、つづきます)

2001-01-13-SAT

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