帰ってきた松本人志まじ頭。

第10回 ぼくの場合は、絵を描いて、ピンで貼って。



糸井 自分の脳波をはかるのって、
ちょっとおもしろそうでしょ?
もしやる気があったら、
言ってくれればいつでもできますよ。

松本さんが「絵で思う」っていうのは、
たぶん右脳をものすごく使っていて、
言葉にならないイメージが先に湧きあがって
俺には分かってるんだけど説明できない、
というようになっているのかなあ。

今の小説家のほとんどが、
左脳が動いてるんだって。
論理で、こうしてこうしてこうして、
っていうふうに書いてるらしいんです。

でもおそらく、詩をつくるのは、
そういう感じではないんですよ。
絵としてさえもなってないイメージを、
何とか作りたいなんて思っているのは、
どう考えてもロジックじゃないでしょ。
「どうしたらいいのかは
 わからないけど、わしゃ分かっとんねん」
というのが、あるんですよ。
松本 うん。何となく分かります。

ぼくの場合は、
話していることが、例えば
絵を描いて、壁に貼っているような
ものだとしたら、ぱらっ、ぱらっ、と、
その紙が落ちるようなものなんです。

そこで、
これではいかんなあということで、
ピンを刺していくんですよ。

そのピンが多すぎても、
明確にばっちり貼れすぎてしまうので、
どのくらいの間隔で貼るか・・・
それ絵の大きさにもよるんだけど。
糸井 それ、ものすごくよくわかるわ。
ぼく、コピーを考えている時でも、
一年をつなぐキャンペーンをやる場合は
「あ、できた」と思ったとしても、
終わりにしないで、まずは
頭の中の壁に貼っておくんですよ。

そのポスターが街に貼ってあるとしたら
人はどう思うかなあ、というような、
そこからが、長い時には半年かかるんです。

コピーを考える時間よりも、
試し算をしながら生活する期間のほうが
実は長い場合もけっこうあるんです。
「できた」と思って、
自分にはイメージがわかったとしても、
それは、みんなにとっての
イメージではないかもしれないから、
自分の中の壁に絵を貼るところに、
大勢と仲良くするために貼っておくの。

「俺は、できた」で終わりにしたいんだけど、
ぼくの場合は、ずっと、
「人が何て言うかなあ」
が重要なところで商売をしてたから、
そういう時間が必要だったんですよね。

放送作家たちは、論理なの? 
それとも、松本さん的な・・・?
高須 いや、逆でしょうね。
まったく逆だと思います。
そこは二つに分かれるとは思うんです。

コントだと、いまだに
なんとなくアナログですから、
「それおもしろい、じゃ、やってみよう」
そうやって作ってできるものだと思うんです。
粘土を作って、いつのまにかできてるような
オブジェのようなのがコントだと思うんです。

でも、今のテレビで視聴率考えて
どうのこうのすると、その作りかたは
たぶん成立しなかったりするかもしれない。

「もっと、まるいもの・・・。
 全体的にはこれくらいの幅で」とか。
「まるくて見やすくする」とか。
「今いいのは赤い色だから、それ入れて。
 でもそれだけでは俺らがつまらないから、
 ここから、何を足そうか・・・」
そういうところで、
「じゃあ、あれやろう、これやろう」
と、はめものみたいになってきますね。
だから「持ってくる」っていう感じで。
糸井 レゴみたいな。
高須 そうですね。
パズルはめるみたいになってますよ。
企画考えるのも、
けっこうそっちの話になってますね。
糸井 その時に、レゴのひとつが
松本人志だったりすると、
レゴのくせして違うかたちになって
反乱したりするじゃないですか。
それは、計算に入れるんですか?
高須 入れますよ。
「遊びの範囲」とか、
天井はこのへんにしようとか、
そういうことは意識していますね。
でも、ぜんぜん違うことしますので。

こちらの思い描いているハコの中から
出ていってしまう時も、ありますから。

でも、今の放送作家は、基本としては、
粘土を作るような作りかたを、
バラエティではしていないですよね。
糸井 だから逆に仕事になるとも言えるんだね。
みんな松本人志じゃ困るわけですから。
・・・でも、松本さん、
企画も、ずいぶんしてますよね?
松本 あ・・・割とぼく、今、企画は
そんなに前ほど一生懸命やっていないですね。
「ガキ」のオープニングなんかも、
前ほどは、時間かけてやってないです。
それは意識してそうしてるところもありますね。
ちょっと、ふわっとして、やってみようかなあ、
という、今はそういう期間で。
来年になるとどうなるかは分からないけど。

割とこの一年、企画、早いよな?
高須 早い早い。
松本 会議も早く終わらせます。
あんまりそっちばっかりやっても
しょうがないかなあと思っていて。
糸井 サイズが変わっていく時期なんだろうね。
サナギとかが・・・。
松本 うん。


(明日につづきます)

2001-01-14-SUN

BACK
戻る