糸井 |
アメリカにも、成功した人に対する
早くつぶれろという流れの人々もいますか? |
末永 |
たぶん、アメリカ人は
日本人に比べると嫉妬が少ない人たちですし、
嫉妬よりも憧れの強い人たちですから、
それをストレートに出して
「よーし俺もやるぞ」と考えますよね。 |
糸井 |
そこが知りたいんですよ。
それは、なんでそうなるんでしょうか? |
松本 |
ぼくは、それ、最終的には
アメリカが戦争で勝ったからだと思います。
日本はやっぱり負け国なので、
強いものに対する反感が強い、
というような気がしてならないんですよ。 |
糸井 |
もしぼくが神様の目から見ていたら、
成功したひとがいたほうが
市場も大きくなるし景気もよくなるし、
だからどんどん成功しなさいと思うよね。
でも、地面から見た時に、
なんか、やきもち焼きになる。
日本では、成功すればするほど
「思ったことをそのまま言ってはいけない」
という状態になりますよね。
つまり、ほんとに成功しちゃった人が
「俺はこう思っている」と言ってしまうと、
一方ではベストセラーになるけど、
もう一方では・・・。 |
松本 |
すごい叩かれますよ。 |
糸井 |
本の時は、どうでしたか?
たくさん売れたといっても、
全国の人口から言ったら
何百万部とかは、少ないよね。
そうすると、反感を持った人も多いんですか? |
松本 |
それは、かなり叩かれましたよ。
ぼくのやることなすことについて、散々。
新聞から何から。ひどいもんでしたね。
今でもそうですけど。 |
糸井 |
(笑)ものすごく正直に書いたじゃないですか。
あれ、どういう効果があるとか
そういうことを全然考えずに書いたんだよね。 |
松本 |
全然考えなかったですよ。
「週刊朝日」でしょう?
そんなもん、週刊朝日を読んでいる人間が
ぼくのこと知ってるとは思ってなかったし、
それが本になるつもりもなかったので、
週に1回、とりあえず書いていただけです。
今考えると、正直に書きすぎたぐらいに
すごく正直に書いていますよ。 |
糸井 |
総理大臣になったとたんに
ニコニコしなければいけないようなのは、
ほんとは変だと思うんですよ。
自分の意見が通って総理になったんだから、
もっと全体を変えていけるようなことを
やらなければ、それこそがほんとうに
総理の価値ないように思えるのに、急に
「みんなのもの」とかを
意識しはじめるじゃないですか。
あれを、誰も突破できた人がいないですよね。 |
松本 |
むつかしいですね・・・。 |
糸井 |
いまだかつていないですよね。
正直にそのまま言えた人って。 |
末永 |
ビルゲイツだって
「俺は金持ちだ」とは言いませんよ。
敢えて言えば、カリギュラとかですか。 |
糸井 |
ネロとかも。
・・・あ、でも失敗政権ですよね。 |
末永 |
だから楽しそうに見えるんですよ。
えらい王様なんて、窮屈そうじゃないですか。 |
糸井 |
前に教育テレビに塩野七生さんが出てて、
昔、独裁政権だったというけれど、
ローマ帝国で王様をやるというのは
民主主義みたいなようにみんなで相談するよりも
ずっとむつかしくて、要するに
これだけ大勢の人をひとりの力で
不満なくおさめるというのは、どれほど大変かと。
そういう王様って、もう、いないですよね?
投票なんかしても、
結局は代議制になって、
声のでかい奴が勝つんだったら、
独裁的な奴が、
「いつ俺は殺されるんだろう?」
と思いながら政治をやっていたほうが
よっぽどうまくいくという。 |
松本 |
なるほどなあ。 |
末永 |
多数決というのは、
そんなに信用のできるものではないと
ぼくは、思いますよ。
でも、大事なのは、自由を確保することで
多数決は、その自由を守るためには
まあ、割といいシステムなんです。
独裁者も、えらい独裁者ならいいけど、
そうでない独裁者は圧政を敷きますから。
多数決は、圧政を敷かせないためには、
割と優秀な制度だと思いますね。 |
糸井 |
例えばの話、前に松本さんと会った時に
話したんですけど・・・
ぼくはいろいろな人たちみんなに、
のびのびしてもらいたいんですよ。
でもその時に、
「圧政を敷こう」と考えること自体が
不自由そうだなあって、思うよね。 |
末永 |
頭の中が平和じゃない人って
やっぱり、いるんじゃないですか? |
松本 |
ぼく、ドラマでもちらっと言ったんですけど、
結局、ちょっとずつ不幸なのが
みんなの幸せなんですよねえ・・・。
それしか、たぶん、ないと思う。 |
糸井 |
うん。
何かをコントロールする力が
つけばつくほど、自分の自由は
売り渡さざるをえなくなりますよね。 |
末永 |
でも、陰険な人って、いますよね? |
糸井 |
いますよ〜。 |
末永 |
「やっぱは、不幸じゃないとだめだ」
とぼくが思ってしまうくらいに
陰険な人って、いますよね。 |
糸井 |
結局、ぼくはとても地味なんですけど、
強姦を、ものすごく憎むんですよ。
せっかくみんなが楽しくやってんのに。 |
松本 |
(笑) |
糸井 |
そういう人がいると、
みんなを硬くするじゃない?
で、どれくらい嫌かはわかるだろ?と。
そういうのが、一個あるだけで、
もっとみんなを自由にできなくする。
「いいわよお?」と思っている人が
「え、こわい」と思ったりするなら・・・ |
松本 |
他の男は、被害者になりますよね。 |
糸井 |
そう。だから、
「お前のやってることはどれだけ犯罪か、
・・・もう、あらゆる意味でだ!!!」
って言いたい。 |
松本 |
(笑) |
糸井 |
だから、レイプが嫌なんですよ。
でも、そんなことを考えずに
すっ飛んでいっちゃう人たちが
おられるじゃないですか・・・。
やっぱ「欠け」みたいなものが
すごい出てしまっているんでしょうね。
(つづく)
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