帰ってきた松本人志まじ頭。

第16回 多数の人の理解を、得られるのだろうか。



松本 こないだ、テレビで
ピンクレディーと山口百恵の特集やってたんですよ。
それを見ていて思ったんですけど、
子どもに支えられるって、怖いなあ。
糸井 (笑)
松本 ピンクレディーに対して、
それをものすごい感じました。
子どもって、引き離す時にはひどい。
「もう知らん」だからね。
糸井 (笑)
松本 だからあの、一時期、
横浜銀蝿が矢沢永吉を抜いた時が、
まあ・・・あった、じゃないですか。
糸井 (笑)
松本 でもあれを支えているのは
やっぱり、子どもでしたよね?
だからあいつらに支えられるのは・・・。
糸井 そうですよー。

すでに、
「ピンクレディー」という例え話そのものに、
今ここで聞いている若い子は
うなずいてくれていないですから。

その意味では、
ガッチャマンとか月光仮面みたいな。
ぼくは、ヒーローというと、
ついつい「月光仮面」と言っちゃって、
若い子にばかにされるんですけど。
松本 (笑)
糸井 ヒーローって、
世代ごとにみんな違うというのが
わかったんだけど、でも、
「じゃあ、バイオマンだ!」
って言われたってねえ?
松本 はははは(笑)。
ぼく、今それ、はじめて聞きましたもん。
糸井 ぼくが自分の子どもと遊んでた時には、
バイオマンとチェンジマンだったんですよ。
そういうのって、
一個一個が「ピンクレディー」ですよね。
松本 うん。
末永 その子らがおとなになると、消えちゃうんですよ。
松本 消えるんです。
糸井 マンガでも、赤塚さんと手塚さんという
そのふたつ以外は、
やっぱり瞬間風速で消えていったもんなあ。

やっぱり、欽ちゃんのことは、
もっと、一回きちんと話したほうがいいという、
そこには恐怖に近いくらいの感覚がありますよ。
大切な話題だと思うから。

NHKで「ようこそ先輩」という番組があって、
そこでぼくは学校の先生をしたんですよ。
できるような気がしちゃって行って、
スタッフはオッケーって言ってくれたんだけど、
ぼくの中としては、もう、現場で、
惨敗の気持ちで帰ってきたんですよ・・・。

ふだんぼくは、インテリたちが
インテリにしか分からない言葉での
「うん、AはBでねえ」という会話を聞いて、
「そんなもん、誰にも通じねえよ!」
と言っている立場なんですよ。

だから、
「俺が俺の言い方で言えば、少しは通じるかも」
と、番組収録前には、ちょっと思っていました。
でも、行ったらさあ・・・。
スタッフは「いい」と言ってたけど、
やっぱり俺としては、ダメなの。

思えば、いつだって、
「自分を理解してくれる人は、多くない」
という前提があって生きてきたんだよなあ。
理解してくれない人は、まあ、いいや、
と思ってここまで来たんだけども、
でも、実は「まあ、いいや」の
理解してくれない人の数のほうが
圧倒的に多いんだなあと思いました。

その圧倒的な数の人に対して、
「お前らの理解なんて、要らないよ」
と言うわけにはいかないかもしれない。
そう考えだしたら、ちょっと寒くなった。

「ほぼ日刊イトイ新聞」は、
みなさんいらっしゃい、でやっています。
いつも分かるように喋っているはずですが、
やっぱりそこでも
「わっからねえよ!」
と言う奴に対しては、最終的には
「いいよ、わからなくて!」
というメッセージに、なっているんですよ。

だけど、数で言ったら、
「わからねえ」がいちばん多いわけだから、
それに触れられないのは、
ぼくの課題かもしれないと感じました。

「インテリはだめだ」
と言っているぼくそのものが
セミインテリにしか過ぎないと思うと、
「どうしよう?」と考えはじめまして・・・。

ダウンタウンも、そういう話と
近いところを持っていると思いますが、
例えば、全盛期の欽ちゃんが巻きこんだ
あのとんでもない分量を、
やればできた人がいたとしたら、
そこを捨ててしまうのはもったいない・・・。
そういう気持ちが、ないことはないでしょ?
松本 はい。
糸井 かと言って、わかんない奴には
腹が立ちますよね?
松本 腹立ちますね。
糸井 そのふたつの矛盾を、どう思いますか?
松本 あのね・・・。
答えになってるかどうかは
わからないんですけど、まあ・・・。
待ってるしかないと思うんですよ。
糸井 うわあ!
・・・いいなあその答え。
松本 子どもが成長するのを待つしかない。
ぼくはそう思ってるんですけど。
ある子どもが成長した時には、
また違う子どもがいるだろうから、
そいつらには、また、通じないんですけど。
でも、それしかないんじゃないかと思うんです。
糸井 なるほどなあ。

宮崎駿さんも、
「となりのトトロ」を作った時のネコバスは、
サービスで加えたキャラクターなんですよね。
最初の設定では、なかったはずのものです。

ネコバスを入れると、人気も出るし、
確かに動いているとおもしろい・・・。
そういうものを、自分でも嫌じゃなくて
入れるという選択を、宮崎さんはできた。
ぼく以上に年上の人だからこそ、
自然にそれをできたとぼくは思うんです。
・・・そのあたりに、いっぱい、
秘密が隠れているような気がします。

それはねえ、笑いだけじゃなくて、おそらく、
他の分野のものごとに対しても言えるというか。


(つづきます)

2001-01-20-SAT

BACK
戻る