糸井 |
でも、松尾さん、
次々にやりたいことが出来ますよね?
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松尾 |
そうですね。でも最近は、
あんまり次々にって、
思わないようにしてるんですけどね。 |
糸井 |
ふうん・・・・。 |
松尾 |
自分を急かすのがもう嫌になっちゃって。
いまの僕の年は、それこそ、
糸井さんが釣りをしてた時期ですから。 |
糸井 |
そうですね。
45歳は面白いですよ。
逃げ出してるわけではないんだけど、
局面を変えたいっていう気がすごくありますよね。 |
松尾 |
今年になって、やっと
ボーっとすることが
出来るようになったっていうか。
今まで、ボーっとすることが
出来なかったんですよね。
ただ座ってじっとしてるってことが。
そういうことは、ほかの人は普通に
出来ていることなのかどうか分からないですけど。
ただ座ってるっていうことが、
やっと出来るようになって。
ここ2週間ぐらいずっとそうしてるんですけど。 |
糸井 |
いや、俺ね、こういう人って
嘘ばっかり言ってるんじゃないかっていう
疑いがあってね。なんかね、どうも
舞台の上の台詞と、ゴッチャになるんですよね。
だから、松尾スズキっていう人と
しゃべっていても、半分は、
なんか本当のことを
言ってないんじゃないかなっていう。 |
松尾 |
いやいやいや、そんなことはないです(笑)。
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糸井 |
だって、考えてみてくださいよ。
今までボーっとしてなかった人が、
ここ2週間ぐらいボーっとしてるって。 |
松尾 |
まあ、釣りとかしてたら、
ボーっと出来るじゃないですか。
まあ、波とか見てるから、
完全なボーっと、とは
言えないのかもしれないですけど。 |
糸井 |
釣りはね、実はね、
ものすごくボーっとしてないです。 |
松尾 |
あ、そうなんですか。 |
糸井 |
ボーっとして見えるんですけど、
ものすごく忙しいんです。
ああしよう、こうしよう、
間違ってるんじゃないか、
正しいんじゃないか、
いいぞ、いいぞ、
こうなったらどうしよう、
‥‥もうひっきりなしに考えてるんです。
ただ、人からはボーっとしてるように
見えるんですけど。 |
松尾 |
ああ~。なるほどね。 |
糸井 |
その意味で、今の松尾さんの
「ボーっと」は、
本当にボーっとしてる? |
松尾 |
はい。「無」ですね。
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糸井 |
嘘だ(笑)、嘘だ。
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松尾 |
本当に。
だから、今日の対談も不安だったのは、
その2週間の間に、
急速にボキャブラリーがなくなっちゃって。
45になって、ボーっとすることと、
トマトが食べられるようになったっていうのは、
すごく僕にとってやっぱり大きいんです。
それまではお風呂に入っても、
本読んでなきゃいけないとか、
なんかもう時間を埋めなきゃ
気が済まないっていう性質で。 |
糸井 |
うん、うん。そう言われると、
ちょっと分かるかもしれない。 |
松尾 |
だから、ちょっと温泉に
行ってみたいなと思うんですよね。
積極的に。 |
糸井 |
温泉行く時に、
誰かと行くんですか、一人で行くんですか。 |
松尾 |
一人ではほとんど行ったことないですけど、
一人で行くのもいいかなっていうかな、
ボーっと出来るようになったんで。 |
糸井 |
はあ~。 |
松尾 |
温泉のあの朝って、辛くないですか。 |
糸井 |
起こされますからね。 |
松尾 |
起こされて、ご飯詰め込まれて。 |
糸井 |
忙しいですよね。 |
松尾 |
それで、「10時に出ろ」って言われて、
8時にご飯食べて、
2時間はあるじゃないですか。
その朝から出るまでの2時間が
苦痛でしょうがないんです。 |
糸井 |
朝のテレビを見るとか。 |
松尾 |
そうなんです。
でもテレビは家で見れるし、
なんで温泉来てテレビ見てるのって、
いっつも思うんですよ。
だから、朝ごはんをもうちょっと
ずらしてくれたら(笑)、
10時に食べ終わったら出る、
がいいじゃないですか。 |
糸井 |
はい、はい、はい。 |
松尾 |
朝ごはん食べた後、お風呂とか入るのもねえ。
|
一同 |
(笑)。 |
糸井 |
どうしてみんなが笑うか分かりますか。 |
松尾 |
いや、分かんないです。 |
糸井 |
多分、ご飯食べないっていう手もあるし。 |
松尾 |
ああ。 |
一同 |
(笑) |
糸井 |
「起こさないでください」っていう手もあるし。
それから、テレビは家でも見られるけども、
別にそこで見てもいいっていう手もあるし。
いろんなところで、非常にこう、
なんか被害を受けてる感じがおかしい(笑)。
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松尾 |
ああ~。だから、ちょっとだから、
温泉に対する考え方を改めるためにも。
気ままにやるっていうね(笑)。 |
糸井 |
気ままじゃないもんね。
聞いてると。 |
松尾 |
なんかね、考えるんですよね。
冷え性なんで、離れたところにお湯があったりすると、
もう帰ってきた時、風邪引く時があるんですよ。 |
一同 |
(笑) |
松尾 |
それが不安で、不安になったり。
あとやっぱり、
お湯にポチャンって浸かってる時に、
ボーっとするしかないのが苦痛でしょうがない。 |
糸井 |
はい、はい、はい。 |
松尾 |
あと、普通のお風呂と、
温泉の泉質の違いが分からない。 |
一同 |
(笑) |
糸井 |
はい、はい、はい。 |
松尾 |
よく、温泉番組とかで、浸かった瞬間に、
「ああ~っ」っていうのがね、
すっごい許せないんですよ。
だって、お湯じゃないですか。
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糸井 |
はい。お湯です、お湯です、はい。 |
松尾 |
家のお風呂で、
「ああ~」って言えばいいと思うんですよね。 |
糸井 |
家では「ああ~」って言いにくいですよね。 |
松尾 |
(笑)。 |
糸井 |
いや、確かにそうですよね。
この間も温泉に、
南伸坊っていう人と行ってて。
で、浸かった途端に、二人で
「ああ~っ」って言って。
暫く「ああ~」「ああ~」言って。
「俺たち、『ああ~』『ああ~』、
うるさいなあ」って。
「温泉にせっかく入ったんだから、
こんなうるさくすること
ないんじゃないか」って。
でも、「『ああ~』言っちゃうよね」って。
松尾さん、「ああ~」言わない? |
松尾 |
思わず言うんですけど。 |
一同 |
(笑) |
松尾 |
ただそれは、
温泉へ着くまでの道のりに
結構くたびれてるっていうのがあるんですよね。
くたびれて、やっと温泉の中に入って、
「ああ~」って。
温泉の泉質とは関係ないっていう感がすごくある。 |
一同 |
(笑)
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糸井 |
辛い旅を、吐き出してるんですね。 |
松尾 |
そこと温泉の泉質を、
なんかゴッチャにするのが嫌なんですね。 |
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