糸井 |
まあ、そういう方に、あえてですけど、
温泉で「ああ~」って言うのは、
ちょっと熱いせいもあるんじゃないですかね。 |
松尾 |
熱いです。 |
糸井 |
ねぇ。ぬるければ、
「ああ~」って言わずに
馴染むと思うんですよ。
「入った、入った」って言って
お仕舞いになるのに。
|
松尾 |
(笑)すって入れば、そうね。 |
糸井 |
家のお風呂って、
自分の温かさにするじゃないですか。
だけど、温泉って、
自分にマッチしない熱さなんですよ。
「おっ、どうしてくれよう」と思って、
攻撃に対して、防御的に
「ああ~」って言うんじゃないかなっていう。 |
松尾 |
だから、やっぱりちょっとした
苦痛もあるんですよね、きっとね。 |
糸井 |
でしょうね。
つねっちゃう、みたいなことなんでしょうね。
温泉からしたらね(笑)。
「よせよ」みたいな。
ぬるい温泉で「ああ~」って
言わないですよ、多分。 |
松尾 |
38度くらいの温泉だとね、
ありがたみも何にもないですね、きっとね。 |
糸井 |
でしょうね。だから、ちょっとだけ我慢して、
で、帰りにちょっと
風邪引く感じの寒さは必要ですよね。 |
松尾 |
そうですね。 |
糸井 |
きっとね。快適な室内を通って、
行きたくないんですよね。 |
松尾 |
そうなんですよね。 |
糸井 |
露天を選ぶでしょう? |
松尾 |
選びますね。 |
糸井 |
なぜわざわざ? |
松尾 |
(笑)ほんとに。
僕は湯布院の露天風呂に入って、
39度の高熱を出しました。
|
糸井 |
温泉で(笑)?
|
松尾 |
すっごく寒かったんですよ、帰りが。 |
一同 |
(笑) |
松尾 |
そこからなんかね、
温泉に対するダークなイメージが。 |
糸井 |
ダークですね。 |
松尾 |
もう何も楽しめなくて。 |
糸井 |
全体、ダークに置き換えるの、
ものすごい上手ですよね。
温泉の朝の2時間、
出るまでの2時間を
それだけダークに語れる人は。
乳白色じゃないですか、あの時間って。
何にもないというか。 |
松尾 |
だいたいもう、温泉に入って、
次の日の朝って、
みんなしゃべらないじゃないですか。 |
糸井 |
ああ、疲れててね。 |
松尾 |
あの間も嫌なんですよね。 |
糸井 |
ダークですね。 |
松尾 |
その前の日、
あんなに僕たち盛り上がったのに。
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一同 |
(笑) |
糸井 |
楽しかったのにね。 |
松尾 |
何で朝食食べてる時、こんなみんな、
不機嫌な顔してるんだろうって。 |
糸井 |
心の中ではあれ、
「起きたくなかった」って、
みんなが言ってるんでしょうね。 |
松尾 |
そうですよね。 |
糸井 |
かといって、誰かが、
「明日、メシ食うのやめようぜ」って言ったら、
賛成する人ばっかりじゃないですよね。
「あ、俺、起きますよ」とか、
こう意を決したように言いますよね。
いや、すごいですね、そのダーク置換力。 |
松尾 |
そうですか。 |
糸井 |
全部、全部それで出来ちゃいますね。 |
松尾 |
いや、そんな全てをネガティブに
考えてるわけでもないんですけど。 |
糸井 |
でも、お見事とさえ。 |
松尾 |
でも、そのボーっとすることが
出来るようになってから、
見方が全然変わるんじゃないのかなと思って。 |
糸井 |
うーん・・・・。 |
松尾 |
温泉に対する、いろんなことが、
こう、プラスに(笑)。 |
糸井 |
ポジティブに? |
松尾 |
そう、そう、そう。
朝の沈黙も気にならなくなるはずですもんね。 |
糸井 |
みんななってるんだと思うんですよ。本当は。
ただ、もっと忘れちゃうんじゃないですかね?
松尾さん、忘れないタイプなんですね。 |
松尾 |
ああ~。 |
糸井 |
おそらくね。 |
松尾 |
そうですかね。
記憶力すっごく悪いんですけどね。
今日、映画の話とかになったら、
どうしようと思ってたんですよね。
単語って、どんどん出てこなくなりますよね。
外国人俳優とか。 |
糸井 |
ああ~、大丈夫ですよ。
僕、もっと年行ってますから、
もっと出ないですから。 |
一同 |
(笑) |
糸井 |
「あの、あれ」で
だいたい誤魔化そうとしてるんですから。
芝居の台詞とかは覚えるんでしょ?
|
松尾 |
あんまり覚えられないから、
いろいろ苦労するんですけどね。
この間(「女教師は二度抱かれた」)も
ほとんどしゃべってなかったでしょ? |
糸井 |
あ、そうか。
それで、しかも、わけの分かんないこと、
言ってましたよね。
あれも、動きでしたね。
声も動きの一つですよね。
ああいうのやる時、嬉しそうですよね。 |
松尾 |
嬉しいわけじゃないんですけどね。
それなりに一所懸命だったんですけどね。 |
糸井 |
お客も待ってますもん、
何やってくれるんだろう、みたいな。
ああいうお客を調教し終わってるっていうか。
「俺が出たぞ」みたいな感じは、
すごくうらやましいですよ。 |
松尾 |
いやあ、自分じゃちょっと分からないですけど。
野田秀樹さんみたいに、
どんどんね、積極的に台詞を言うのって、
演出しながらって、やっぱり大変だから。
分かるんですよね、野田さんが
すごくストイックなところにチャレンジしてるのは。
野田さんのはだいたいご覧になってるんですか。 |
糸井 |
どういうわけか観てますね。
いや、本当に、芝居って、
いた時間、確実にある意味面白いんです。
つまんないの観ないようにしてますし、
いいよって誘われたら行っちゃいますね。
でも自分が何で行くんだかよく分からないんです。
作ってる人のことはもっと分からないものですから、
こう腹を割って、
「面白いんですよ」っていう話がね、
聞いてみたかったんですよ。
野田君だと、もう長くやりすぎてるから、
面白いのつまんないのじゃなくて、
なんかもっと違う話になりそうなんだけど、
松尾さんだと、なんかギリギリで、
「何で始めたんだっけな?」って
思い出せるような気がしてたんで。 |
松尾 |
うーん・・・・。 |
糸井 |
だって、違うことやってたんでしょ? |
松尾 |
ん? |
糸井 |
芝居をやってない時代があったわけでしょ? |
松尾 |
ああ、ありましたね。 |
糸井 |
で、芝居を始めるって、
えらい大変なことだと思うんですよ。 |
松尾 |
そうですよね。ちょうどだから、
イラストレーターで食えてた一時期もあったんですが、
どんどん食えなくなっていって。
で、どうせ食えないんだったら、
芝居やりたいなと思って、
お芝居のほうにシフトチェンジしようかな、
みたいな、そんな感じなんですけどね。 |
糸井 |
それはやっぱり
「好きだった」っていうことなんですかね? |
松尾 |
まあ、大学の時に、
部活でやってた程度なんですけど。 |
糸井 |
ふうん。この間の芝居にあったようなことの
端々はあるんですか。
つまり、大学の時にやって、
ちょっと褒められたんだよ、
のようなことはあったんですか。 |
松尾 |
そうですね。素人にしては、
比較的受けたというか。
やっぱり笑ってもらうのが好きなんで。
うーん・・・・、結構ね、
学生演劇のレベルで笑わせるのって、
大変なんですよね。
|
糸井 |
ああ~。 |
松尾 |
下手ですし。 |
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