松尾 |
僕、もともと、アングラの影響があるから、
笑いだけじゃなくて、
なんかゴチャゴチャしてるんですけど。
人前に立って笑わせるって、
相当なもんだなとは思いますね。
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糸井 |
それが学生の時、
もう出来ることは出来ちゃったんですね。 |
松尾 |
後半は出来てましたね。
だから、逆に言うと、学生の時のは、
同じ仲間だったから出来てたんです。
でも東京に来て、一人で始めたら、
笑わせるのが難しくて難しくて。
こんな大変なものかって思ってた時期が
結構長かったですね。
おかしいことばかり書いても、
やっぱり下手に言うと、伝わらないから。 |
糸井 |
劇団を、九州でやってたんですよね? |
松尾 |
はい。 |
糸井 |
で、東京で再結成になるんですよね? |
松尾 |
いや、九州でやってたっていうほど、
やってないんですよね。
要するに、クラブ活動の延長で、
ちょっとやったぐらいのものなんで。 |
糸井 |
バンドをやるようなものなんですか。 |
松尾 |
それに近いかもしれないですね。 |
糸井 |
僕、興味あって追っかけてる、
シルク・ドゥ・ソレイユっていう
サーカスの人たちがいて。
カナダのケベック州で、
みんながバンドやってる時に、
自分たちはパフォーマンスをやる、
っていうつもりで
大道芸をやってたって言うんです。
そこから今のサーカスが始まったと。
だいたいのことって、
なんか一緒のものなんですね。 |
松尾 |
なるほど。
僕らの大人計画の形態は
バンドに一番近いかもしれないですね。
だいたい、ほら、劇研から上がってきたりとか、
まあ、養成所から仲間集めてとか、
そういうのが多いけど、僕らは本当に
「ドラム募集します」じゃないですけど、
情報誌に載っけて、集めてたクチですから。 |
糸井 |
で、松尾さんは、演出と脚本と、
いわばリーダー役。
どこかに入ろうというよりは、
自分でやりたかったんですね?
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松尾 |
そうですね。全部やって、ひとつというか、
まあ、もともと漫画描いてたんで、
漫画って、キャラクターと台詞と
演出も構成も全部自分じゃないですか。
要するに、漫画に描いてたような動きを
やりたかったっていうことなんですよね。 |
糸井 |
すっごい分かりやすいですね、それ。
で、芝居ってこうだよな、みたいなことを
習わなきゃならない時期っていうのは、
上手に端折れたんですか?
自分がまだ自信のない若い時って、
全部無視してやれって気分とか、
あるいは、基礎をちゃんとやっとかないと
いけないんじゃないかっていう不安だとか、
ゴチャゴチャにありますよね。
その辺の時代っていうのはありましたか。 |
松尾 |
強いて言えば、東京に来て、
サラリーマンやりながら観てた演劇からは、
何かを学び取ってるとは思いますけど、
うーん・・・・、基礎に関してはね、
考えてなかったですね。
もともと座長芝居しかやるつもりがなくて
作った劇団なんで。
俳優としてのきちんとしたことは、
皆さん、やってくださいよっていうことだったから。 |
糸井 |
座長として俳優さんたちに要求しますよね。
要求されたものは、
そんな簡単に素人は出来ないですよね。
そこでのやり取りみたいなのは、
自分のイメージで「こうしてくれ」っていう
演出をしていくわけだ?
|
松尾 |
いや、やっぱり、
やってみせるしかないっていう感じでした。
本当に回りに集まったのが
素人ばっかりだったんで。
今うちにいる連中のほとんど、
前に何かやってたとかっていう人、
いないですからね。 |
糸井 |
でも、そういう育ち方をして、
ちゃんと育ちますよね。 |
松尾 |
うーん、それはびっくりですよね。
最初、やっぱり、劇評家の人たちに、
「こういうやり方してたら、俳優育たないよ」
って叩かれたりしてたんですけど(笑)。 |
糸井 |
叩かれたんですか。 |
松尾 |
ええ。 |
糸井 |
はあ~。その時に、松尾さん、
なんて思ったんですか。 |
松尾 |
「でも、面白いんだからいいじゃない」
としか思わなかったですけど。 |
糸井 |
(笑)今、よその人たちにも求められて、
俳優さんたちが出て行くじゃないですか。
つまり、よその人たちも
こういう育ち方してた人、
欲しがってるわけじゃない?
いわば、「勝った」ですよね。 |
松尾 |
そう、まあ、よそよりも、
というところもありますよね。 |
糸井 |
それは、何だったんですかね? |
松尾 |
うーん、でもまあ、
受け入れてもらうまでには、
すごい時間が掛かったと思いますね。
演劇界の横の繋がりとかも全くないし。
|
糸井 |
大丈夫だぞって思うまでに
どのくらい掛かりました? |
松尾 |
それは、やっぱり宮藤(官九郎)とか、
阿部(サダヲ)が、世間で認められて、
よそに出て行くようになった辺りですかね。 |
糸井 |
じゃあ、そんなに昔じゃないですね。 |
松尾 |
そうですね。
ここ10年って感じじゃないですかね。 |
糸井 |
僕らも夢なんですよ。
基礎があるっていう幻想なのか、
基礎があるっていうのは本当なのか。
今の年になっても、まだ分かんないですよ。 |
松尾 |
俳優はやっぱり特に幻想じゃないですか。
ミュージシャンの人が映画に出て出来たりとか、
リリー(・フランキー)さんとかも、
この間映画(「ぐるりのこと。」)観て、
悔しいぐらい面白かったし。 |
糸井 |
そういうのがあり得るぞっていうことは、
もう若い時から知ってたのね?
バンド的だから。 |
松尾 |
そうですね。
やっぱりガッツ(石松)さんとかが
映画に出てるのを観ると、
何でもありだなって(笑)。
|
糸井 |
ああ、そうか、そうか。
昔からの演劇に対して、
一家言あるみたいな人も混じってたんですか。
中には? |
松尾 |
ないですね。 |
糸井 |
そういう人は全く入って来なかった?
「僕、文学座もやってたんです」
みたいな人は来なかったんですか。 |
松尾 |
入って来なかったですねぇ。
ない、一切ない。 |
糸井 |
来てたら居づらかったでしょうね。きっとね。 |
松尾 |
一人だけ、
「アクターズ・スタジオにいました」
っていう人がオーディションに来た時があって。
そいつがね、最悪だったんですよね。 |
一同 |
(笑)
|
糸井 |
はあ、はあ。 |
松尾 |
なんかエチュード(即興芝居)をやらせてたんですよ。
で、新聞配達員たちが集まる設定で。
「あなた、一番年上だから、
アクターズ・スタジオにもいたことだし、
配達所のおやじ役をやってくれ」って言って。
で、みんなこう、まあそれなりに始めるんですけど、
おやじだけね、始めないんです、ずーっと。
で、「何やってるんだ」って言ったら、
「いや、まだ待ってますから」って。 |
一同 |
(笑) |
松尾 |
「まだ来てないんで」って(笑)。
「イメージが」。
ほかの人たちはもう必死に
繋ごうとしてるんだけど。 |
糸井 |
おやじは来てない? |
松尾 |
おやじは来てないから、始めないんですよね。
で、最後まで始めなかったです。 |
一同 |
(笑) |
糸井 |
はあ~。 |
松尾 |
それは僕、ちょっと
アクターズ・スタジオって厄介だなと思って。 |
糸井 |
それはまあ、アクターズ・スタジオの中でも
いろいろいるんでしょうけど、
昔からの芝居やってる人たちが、
「とは、こういうものだ」
みたいにしゃべってるのって、
時々面白い時があるじゃないですか。
「なるほどな」みたいな。
ああいうのを聞いたことはあります? |
松尾 |
断片的にはありますね。
芸談って面白いじゃないですか、
心打たれる話。
やっぱり一人一人違うし、
欽ちゃんが言ってることと、
タモリさんの言ってることも違うし。
だから、話は6分目ぐらいで
聞いておいたほうがいいんだろうな
とは思いますけど。
でも、そういう人たちの話を聞くのは
すごく面白いですね。 |
糸井 |
真似しちゃだめなんだろうなと思いながら
聞くのが多分コツなのかな。
やっぱり彼なりに彼女なりに、
発見するまでに時間掛かったんだろうな、
っていう気がするのが面白いですよね。 |
松尾 |
そうですね。一人一人言ってることは
真反対だったりもしますし。 |
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