糸井 |
ボーっとしてる時間が出来ましたって言って、
その後のこともまた知りたいですけどね。 |
松尾 |
ボーっとし始めてから、
悪夢ばっかり見るんですよね。
複雑な夢を。
2時間毎に目が覚めたりして。
だから、なんかやっぱりボーっとしてる間に
何かがこう、水掻きが動いてるんでしょうね、
きっとね。
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糸井 |
ボーっとしてない、
つまり、いわば時間の空間神経症みたいな、
空間埋めないとやっていけないみたいな
感覚があったわけですよね、ずっとね? |
松尾 |
そうなんですよね。
僕ね、マヤ文明が好きなんです。 |
糸井 |
ああ、埋めてますね。 |
松尾 |
そう、そう、そう。ギッチギチな感じが。
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糸井 |
埋めてますねぇ。不安なんですかね、マヤは? |
松尾 |
マヤは不安だったと思いますよ(笑)。
あのなんか、ギッチギチさっていうのは、
やっぱり水墨画とか、ああいうのって、
余裕を感じるじゃないですか。
マヤの人たちっていうのは、
余裕なかったんだと思うんですね。
学生の頃、ずっとそういうのの
スケッチをしてたんですよ。
美大だったんで。 |
糸井 |
マヤ系のものを? |
松尾 |
マヤと、日本の文様。
浴衣の文様とか、
そういうのを組み合わせて絵を作ったりとか。
あと、横尾忠則さん好きだったんで。
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糸井 |
埋めてましたね(笑)。 |
松尾 |
昔の横尾さん、そうですよね。
でも、今でもそうか。 |
糸井 |
埋めてます、埋めてます。 |
松尾 |
ちょうどそうだ、
世田谷美術館の「冒険王」で、
横尾さんとばったり会ってお話したんですけど、
あの分量と密度は半端じゃない。 |
糸井 |
半端じゃないですね。
汲めども尽きせぬものがありますよね。
で、それはやっぱり、
体質なのかなとしか思えないくらい。
そうですね、横尾さんも、
やっぱり松尾さんと同じで、
自分のことは整理しないですね。 |
松尾 |
ああ~。 |
糸井 |
「こういう法則があるみたいね」って人が言うと、
「そういえば、そうかな?」って言って、
忘れちゃいますね、
またね。で、自分で整理してるのは、
せいぜい滝が好きだとか、
そういうことばっかりですね。 |
松尾 |
Y字路とかね。
横尾さんのを観て、
自分が何に共感してるのかなと思ってたんですけど、
全体回して観て、風情がない(笑)。
ゆとりがない。
その分、何かが何かにびっくりしてるっていう。
びっくりしてる人が描かれてないと、
それを観てる人がびっくりするみたいな。 |
糸井 |
脅かしですね。 |
松尾 |
脅かしの、力っていうかな。
だから、きっと横尾さんって、
すごい臆病な人なんだと思うんですよ。
一番横尾さんの話聞いて笑ったのが、
映画を8年間観てなかったっていうやつでね。
8年前観たのは何だったって言ったら、
寅さんだって言うんですよ。
で、8年後に観たのは何だって言ったら、
『ハルク』だって言うんですね。
で、怖くてしょうがなかったって言うんです。
で、「何が怖いですか」って言ったら、
音がでかいって(笑)。
それで、映画ってこうなってたのかって思って、
普通の日本映画を観たら、
日本映画も普通の映画なのに、音がでか過ぎて、
「もう僕にとってはホラーだ」って言うわけです。
だから、それぐらいやっぱり、
日常の中に怖さを見つけていけるんだな
っていうのが絵に出てるのかなって、
ちょっと思ったんですけど。 |
糸井 |
作り手の都合って、
横尾さん、一切考えないですよね。
音がでかいのは、
あれは作り手の都合ですから。
まあ、本当にその意味では
子どものまんまっていうね。
それは、すごいですね。
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松尾 |
僕、でも、あれだけイメージが氾濫して。
で、最終的に今、小さな絵で
ルソーの模写ってやってるじゃないですか。 |
糸井 |
ありますね。 |
松尾 |
あれだけ自分の中にあるものがあって、
今模写に行ってるのかっていうのが
また驚いちゃうんですよね。 |
糸井 |
一番欲しいのは技術だって言ってますよね。
いや、埋めたい人のとっては、
もっと埋めるのには技術がいるんじゃないですか。
千手観音になりたいんですよね、きっとね。
手の数増やしたいんだと思うんですよね。
だから、それは、松尾さんとの共感は、
お互いにあるんじゃないですか(笑)。 |
松尾 |
うーん・・・・。 |
糸井 |
横尾さん、もともと好きだったんですよね?
|
松尾 |
そうですね。学生の頃。
その頃は横尾さんがファインアートを
始めてたぐらいかな。
どちらかと言うと、ポスターから入ってるんです。 |
糸井 |
僕が横尾さんを観た時、
もう最初にとにかく気持ちが悪いって言って、
もう観るものじゃないと思って、
一旦寝て、また観に行ったっていうのが、
横尾さんとの出会いなんです。ポスターで。 |
松尾 |
ポスターを? |
糸井 |
学生会館にたまたまコーラか何か買いに行ったら、
そのポスターが貼ってあって。
もうあんまり嫌なんで、ずうっと観ちゃって。
で、みんなが固まって寝てる場所があって、
デモの前の日で。
で、早く寝なきゃいけないんだけど、
なんか嫌で、こっそりともう1回起きだして、
また観に行ったっていうのが
横尾さんとの出会いなんですよ。
で、松尾さんの中の「何?」っていう、
その要素はやっぱり共通するものがありますよね。
ただでは帰さないぞ、みたいな。 |
松尾 |
戦略がないんですよ。 |
糸井 |
戦略がない(笑)。
はあ~、それは横尾さんもそうですよね。
思えばね。あと、好きっていうもの、
何ですか。もうあえて「好き」に話を持っていって、
終わりにしようと思ってるんですけど。 |
松尾 |
そうですね。横尾さんの絵、好きですね。
ファレリー兄弟も好きですしね。
あと何だろうな。
細かいことを考えてるのが好きですね(笑)。
最近もなんか、缶コーヒーが
どんどんショート缶になっていくのは
なぜなんだろうっていうのを、ずっと考えてて。
ロング缶ないなあって(笑)。
ショート缶だとね、仕事するのに不便なんですよね。
すぐ飲みきっちゃうから。
ロング缶がいいんですよ。
だから、ロング缶で、ショート缶の
クオリティのあるものを出してくれればいいのに、
ロング缶が今、どんどんなくなって。
で、それ以上になると、
今度ボトル缶とかいうのになっちゃうんですよね。
で、ボトル缶買うと、
やっぱりショート缶よりも高いんですよね。
そこにいったい誰の思惑が入っているのか
っていうのがね、気になってしょうがない。 |
糸井 |
その辺はものすごく答えが
つまんないところにありそうだな。 |
松尾 |
そうですか(笑)。 |
糸井 |
多分、多分こう思われたらいいなっていうのと、
こうやって儲けようっていうのはもう掛け算で、
順列組み合わせで出来ちゃうような話でしょうね。
コマーシャルで、多分ご推察なさってると思いますが、
缶コーヒーって、基本的には
肉体労働者のものなんですよ。
で、ホワイトカラーは、
あんまり缶コーヒー飲まないんですよ。
だから、松尾さんは、
ジャンル的に肉体労働者の会に混ぜて、
「糖分取りてぇ」っていう気持ちと、
「刺激をくれ、出来たら、コーヒーの香りな」
っていうところにある人たちの中にいて。 |
松尾 |
僕はでも、無糖派なんですけどね。 |
糸井 |
無糖派で。あ、糖分要らない? |
松尾 |
糖分要らない。 |
糸井 |
それは、だいぶソフィストケイトされた。
あと、小さくすると、高級に見えるんですよね。
|
松尾 |
そうですよね。 |
糸井 |
それで売ってるんだろうな。
それから、飲み残しがあると、
まずく感じるんですよ。
その残したっていう事実が、
まずかったってサインを残しちゃうんで、
多分その辺があるんだろうな。
原料費は本当に変わらないと思いますけどね。 |
松尾 |
そうですよね。だから、その辺の
エクスキューズなしに、
ショート缶の時代ということに
気が付かないままになってるのは
なぜだっていうことを、
糸井さんに聞きたかったんですよね。 |
糸井 |
僕は、なんて言うんだろう、
そういうことをやってる人たちに対して、
「そういうことばっかりやって」
って思ってる立場なんだけど。
いや、松尾さんが缶コーヒー好きだっていうのは、
多分終わると思いますね、ボーっとし始めると。 |
松尾 |
あ、そうですか(笑)。 |
糸井 |
これは予言ね。
なんとなくね、あれね、急いでる人の飲み物ですよ。
永瀬正敏君っているじゃないですか。役者の。
あの人はものすごい缶コーヒファンで。
あの人の影響で僕、
一時缶コーヒー飲んでたんですよ。
「ええ?」と思ったら、なるほどなと思って。
癖になるんですよね。
急いてる時に飲みますね、あれは。
松尾さんは無糖派だけど、
全部無糖で済ましてないでしょ、きっと?
無糖を選びきりますか。 |
松尾 |
やっぱりしょっぱいもの食べた後とかは、
微糖に行くんですけど。
|
一同 |
(笑)
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松尾 |
ちょっと甘さが欲しいなって思いまして。
で、仕事中はもう無糖で十分です。 |
糸井 |
そうですか。
無糖で通すの結構難しいですよね、多分。
売ってる場所とかの問題でね。 |
松尾 |
そうですね。 |
糸井 |
通すのが難しいって、タバコの銘柄もそうで。
「俺はハイライトだ」とかって言い張ってても、
売ってなければセブンスターになり、
マイルドセブンになりっていう
流れがあるじゃないですか。
それと同じで、結構なんかね、
条件に左右されるんですよね、人ってね。
缶コーヒーでしたか。
今はじゃあ、どこの何を、
「望むところはこれです」っていうのがあるんですか。 |
松尾 |
今、だから、ロング缶がなくなってきたんで、
迷ってるんです。 |
糸井 |
(笑) |
松尾 |
ストローが付いてるのあるじゃないですか。
今、あっちに走ってます。 |
一同 |
(笑) |
糸井 |
ああ~。飲みやすいですけどね。
それも走り終わりそうな予感もあるな。 |
松尾 |
そうですね。それは一過性です。 |
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