糸井 |
さんまさんが、
あそこまで怪獣化したのは、
「いつも周囲の人と
化学変化を起こしているから」
でもあるんでしょうねぇ。 |
土屋 |
このあいだの、
フジテレビの『27時間テレビ』でも、
さんまさん、おもしろかったですね。
あのSMAPの
中居くん以外の四人が出てきて
「最終的には、
フジとテレ朝の絵が、
同じになっていくというところ」
にまで持っていった演出の力が、
わざとらしさのテクニックも含めて
おもしろかったんですけど。
あれが終わったあとに、さんまさんが
「……いやー、
あのテレ朝のプロデューサーの
小芝居には、ドキドキした」
と言った瞬間に、
ちゃんとあそこのコーナーが
終わった感じがありましたし。 |
三宅 |
さんまさんは、絶対に
「セックス」という言葉を使わずに
「エッチ」と言うんですね。
自分の発言が、テレビを通して
どう映るかということは、
ものすごく考えていますよね。
だから、
そういうことに気づくことができる。
このあいだの
『27時間テレビ』の生放送でも、
そのへんの
「言っていいところと
いけないところの境界」
の微妙なところまで、
さんまさんから伝わってくるから、
おもしろいんですよね。 |
土屋 |
片岡飛鳥さんをはじめとした
フジの演出も、そういう芸人たちの
ギリギリの、細かい呼吸をわかって、
生放送で対応していける……。
あのスタッフたちっていうのは、
すごいなぁというか、
うらやましいと思って見ていました。 |
糸井 |
それにしても、
『27時間テレビ』、おもしろかったです! |
三宅 |
フジテレビが
「元に戻った感じ」があるのがうれしいです。 |
糸井 |
おもしろかった原因は、
なんだと思いますか? |
三宅 |
内部的に言うと、
制作が一本化できたからだと思います。
報道とバラエティが
一緒にやるとかいうのだと、
どちらもおたがいに
「あっちが悪い」とか、かならず
そういうことになっていましたから。
ただ、
「日テレさんの24時間テレビの
パロディとしてはじまっているんだから」
ということで、ようやっと、
バラエティのみに差別化した番組が
成立したなぁと言うか……
前にも、
土屋さんや糸井さんとお話をしたような
『大反省会』に至るまでの話に、
ようやく決着がついた、と思っています。 |
土屋 |
さらに言うと、
制作の一本化の先に、やっぱり
今回の演出の片岡飛鳥という個人に
帰結していくところがすごかったと思います。
『27時間テレビ』の時期の「ほぼ日」に
「宮崎駿さんは、ほんとは
ひとりですべてを作りたい人なんだ」
という話が載っていましたよね。
それを読んだあとに、
「片岡くんも、たぶん
そういうタイプなんだろうなぁ」
と思ったんです。 |
三宅 |
そうなんですよ。 |
土屋 |
ひとりでやりたい人なんですよね。
だから、27時間、
片岡くんの匂いが、
ずーっとあった気がしました。
全部見たわけではないんですが、
「ここは、まかせたよ」
という画面の雰囲気がなくて、
「これは、ぜんぶ、やってるわ……」
という気がして。 |
三宅 |
そういうタイプです。
だから、ぼくなんかとは違いますね。 |
糸井 |
三宅さんは、ゆだねるほうですか? |
三宅 |
『ひょうきん族』について、
いろいろしゃべってると、
ぼくだけが
やっていたようですけれども、
ディレクターは5人いまして。
ぼくの場合は、
それがよかったなとは思っているんです。
ひとりだけでやろうとすると、
限界が来るから……。 |
糸井 |
そういう、ディレクターの
「ゆだね型」と「ひとりでやる型」って、
生まれついてのタイプなんでしょうか?
それとも、変化していくんでしょうか? |
三宅 |
どこかでやっぱり、
「ひとりではできないんだ」
と気づくというか……。 |
糸井 |
あ、わかります。
なんとなく思うんですが、
もともと、三宅さんも、
かつては、ひとりで考えて作りたい
片岡飛鳥型だったんですよね? |
三宅 |
それは、
あるとは思いますけどね……。
そうでないといけない部分って、
絶対、どこかにあるじゃないですか。
いま、
『さんま先生が行く』をやっていても、
ディレクターは四人いるんですが、
やっぱり、見ていて
腹が立ってくるような回もあるんですね。
ただ、でも、
一応おなじディレクターだから、
今週から三週ぶんは自分の担当だから、
ということで、
「よーしあの野郎、
コレを見てろよ……!」
というつもりでは作るときもありまして。 |
土屋 |
わかります。
ディレクターの基本は
「ひとりでやりたい」だと思うんです。
何人かで作っていた『ひょうきん族』でも、
タケちゃんマンの部分が、
三宅さんにとっては
「これがオレの番組だ!」
というところがあったでしょうし。 |
三宅 |
そうですね。
『ひょうきん族』の中でも、それぞれ、
報道班、ドラマ班、歌班、というように、
違う番組を作りあうことを、
おもしろがっていたところはあります……。 |
土屋 |
宮崎駿さんが
「ほんとは、
ぜんぶひとりでやりたいタイプだ」
という話を読んだとき、ぼくも、
「あ、オレもそうだ」と思ったんです。
できれば、
カメラから照明から音声から、
自分でやりたいんですよね……。 |
糸井 |
もとがそっちではない人って、
やっぱり、基本的には、いないのかなぁ。 |
三宅 |
いないと思います。 |
糸井 |
ぼくも、かつてはそうだったけど、
どこかで、どんでん返しが来たんです。
ひとりでやっているだけだと、
ともだちがいなくなるじゃないですか。
だけど、ぼくは、
ともだちと遊んでいるのが、
いちばんおもしろいと思うんです。
ひとりでコツコツものを作っていることも、
ものすごくいいけど、ほんとは、
誰かがそれに褒めてくれるとか、
突っ込んでくれるとか、
他人がいるおかげで
おもしろいものなんだと思うんです。
ぼくの場合は、
そういうことがわかってくると、
どんどん、
自分のやることが、まわりに
受け渡せるようになった気がします。 |
土屋 |
ええ。 |
|
(明日に、つづきます) |