糸井 |
……さて、ビッグ3の最後の
さんまさんについては、
すでにさかんに話に出てきますけど、
「黄金期が、いくらでもある」
というところがすごいですよね。
いまも、長く頂点から降りてないですが。 |
三宅 |
あのかたは、やっぱり、
変わらないから、いいですよね。
ほんとにテレビを好きだし、
いちばんいいのは
「自分をいちばん好きなところ」
ですよね。そこが変わっていないから、
ずっと、トップでいられるんでしょう。
「自分を好きでいること」
って、簡単そうだけど、
いちばんむずかしいことだと思うんです。
さんまさんは、そこがあるから、
自分がどう映っているかをチェックするし……
というスタンスでいられるんでしょうし。 |
糸井 |
自分を好きでいられる人って、
いいですよねぇ。
さんまさんの場合は、
もう、こってり大好きで、
腹いっぱい、自分を食べたいというか。 |
三宅 |
やっぱり人間、
「自分を好きでいること」
が、いちばん大事なんですよね。 |
糸井 |
肯定ですよね。
さんまさん自身も
「自分を好きになるといいぞ」
というメッセージを、よく出してますし。 |
三宅 |
出してる、出してる。 |
糸井 |
さんま先生のすごさもそこで、
出てくるガキどもに
「おまえも自分を好きになれ」
とメッセージを告げているんですもんね。
三宅さんも、そういうところは、
ずっとおつきあいになっていると、
やっぱり、
影響を受けているんじゃないですか? |
三宅 |
影響を受けてます。
本人にそう言うと
イヤがるかもしれませんが、
やっぱり、萩本欽一さんに
よく似たところがありますよね。
話していると、ぜんぶが前向きで、
こちらがエネルギーを
もらってしまうようなところがあるんです。
そこでパワーに負けてしまうと、
カラダを壊しちゃうんですけど……。 |
糸井 |
その話、リアルだなぁ。 |
三宅 |
このあいだ、
久しぶりに大将(萩本欽一さん)に
お会いしたら
「大リーグの監督をやりたいんだ」
とおっしゃるんです。
「昼間に、イチローの試合を見ていると
監督がバカでしょうがない」と。
ワンアウト満塁でイチローが
ダブルプレーになったあとに、
監督が、同じ場面で
イチローを交替したことがあったそうです。
「イチローみたいに腕のあるヤツは、
二度もおなじ失敗をしない。
これを替えてしまったら、
替わったやつがダブルプレーになるぞ」
そう思ったら、ほんとにそのピンチヒッターが
ダブルプレーに倒れてしまったんだそうです。
「それに、三打数三安打のあとに
ヒットが出ることなんて滅多にないから、
オレならそこでイチローをひっこめて、
四割打者を作る」
テレビを見ながらでも、そういうことを、
常に考えていらっしゃるらしくて、
そういう話を聞くと
「大将、変わってないなぁ」と思うわけですね。 |
糸井 |
そんなことを、考えているんですか。 |
三宅 |
テレビをやりはじめたときも、
そういう発想をなさっていたんです。
「一歩下がって、
そこで跳ねないと次へ行けない」
と考えるかたなんです。
「テレビというまだわからない場所に、
自分だけで乗りこんでもしょうがないから、
まずは、作家を作ろう」
それでパジャマ党というものを作って、
そいつらと一緒にやっていけば、
なんとかおもしろいことが
できるだろう、とか……。 |
糸井 |
トランポリンを、先に作るんですね。 |
三宅 |
はい。
「どんどんやっていったら、
自分が上になっちゃって、
下がいなくなっちゃったんだ」
そうおっしゃるんです。
だから、これは一回、辞めないといけないな、
とか……そういう発想をなさるんですね。
何年か前に作った映画の
『欽ちゃんのシネマジャック』も、
一本三百円で見られるようにして、
五本立てをすべて見ると千五百円と……
結局は大将は赤字になったのですが、
その考えかたも、
すばらしいなぁと思っていました。 |
糸井 |
さんまさんが、
番組をやるかやらないかの決断についても、
『明石城』があるおかげで、
よく見せてもらっていますけど
「ああ、この人は
こういうことを考えているんだ」
ということが見事によくわかるんです。
長続きするか、いま重要かどうか、
オレの動機が続くか、と……
いっぱい考えて、
どれをやらないかを決めているわけで。
さんまさんは、あれだけ忙しくても、
おそらく、依頼の量からすると、
すごく仕事を減らしている状態ですよね。
そこの「やらない」という
企画者としての動きも、
さんまさんを支えているなぁと思うんです。
さんまさんの戦略をまず感じるのは、
コマーシャルの数の少なさなんです。
バンバン来ているに決まってるけど、
それをやるかやらないかを決めるのは、
企画を考えること以上に重要なことで……。 |
三宅 |
もちろん
テレビもそうですけども、
生き方のプロデュースや、
自分のプロデュースを、
いちばん知っていますよね。
明石家さんまの大ファンでありながら、
同時に最高の
セルフプロデューサーでもあるんですね。
そこがすごいところだと思います。
何の関係もない仕事で、地方で、
テレビもまわるわけでもないような舞台でも
「この人がやっているなら、そこは行く」
と損得なく行って盛りあげてきますからね。 |
糸井 |
鶴瓶さんも、
一銭にもならない仕事を
さんまさんにお願いしたら
「兄さんの顔が立つんでっか?」
「立つ」
「行きます」
「内容は……」
「いいです、いいです、行きます」
そういうことがあったって、
こないだおっしゃっていました。
誰かに相談もしないんですよね。 |
三宅 |
していないです。 |
糸井 |
すごいなぁ。 |
|
(次回に、つづきます) |