──
森蔭さんからみて、
「ここはすばらしい」
と思う会社ってありますでしょうか?
「こういう姿が理想なんだよ」
と目指しているようなメーカーとか‥‥。
森蔭
それは‥‥そうですねぇ、
いつも行ってるラーメン屋があるんですけど、
たぶん、そこが理想なんだと思います。
──
ラーメン屋さん。
森蔭
高校生のころから
ずっと行き続けてる店なんですよ。
そこのご主人も、
「お客さんに毎日来てもらうためには
どうすればいいかってことばかり考えてる」
そうおっしゃるんです。
──
そのラーメン屋さんは、
いわゆるチェーン店の?
森蔭
いや、1軒だけで、
ずーっとやり続けているお店です。
──
そうですか。
森蔭
ぼくは、どうも、そういうやりかたに
商売の原点のようなものがある気がして‥‥。
ひとり対ひとりという。
──
直接、対面するご商売ですね。
森蔭
あのラーメン屋のようなシャツ屋でありたい、と。
──
目の前にお客さんがいる。
森蔭
寿司屋さんもそうですよね。
握っている、食べている、
そういう関係性を服でできないかなと思ったのが
オーダーをやり始めた
そもそものきっかけなんですよ。
──
なるほどそうでしたか‥‥。
あくまで、ちいさなサイズで。
森蔭
ええ。‥‥あ、いや、
「あくまでちいさく」、というのとは、
じゃっかん、ニュアンスがちがうのかも‥‥。
──
ええと‥‥それはどういう?
森蔭
拡大志向がぜんぜんないかというと、
これが、ないこともないんですよ。
──
大きくしていくお考えも。
森蔭
そうですね。まあ、これは‥‥
今まで話してたのは何やったんや!
と言われそうなことなんですけど‥‥
拡大志向があるかないかと聞かれれば、
「ある」んです(笑)。
ややこしいでしょ?
──
いえいえ(笑)。
森蔭
可能性があることには挑戦したい、というか‥‥。
お客さんがうれしいと思うことで、
それがぼくたちにできるんだったら
やっていきたいという、
そういう拡大志向はあるんです。
──
それは、具体的には?
森蔭
たとえば、海外でやってみるという‥‥。
──
海外ですか!?
森蔭
ねえ(笑)。
こじんまりやる、ゆうとったやないか!
って、思いますよね?
──
いやいや、聞かせてください、そのお話。
海外というのはどちらで?
森蔭
イタリアです。
もう、ぼちぼち始めてるんですけど。
──
イタリアで。
それはどういう経緯で?
森蔭
2006年の秋ころかな、
なんか突然、店に外国の人がこられたんです。
で、ツカツカツカとぼくのとこきて、通訳の人に、
「シャツをうちの店で売るから、卸してくれ」
言わせてるんですよ。
──
へえ〜、そんなことが。
森蔭
「いや、うちは卸しやってないんです」
って断るんですけど、
「お前、俺と仕事したないんか」
みたいなこと通訳さんが言ってきて(笑)。
「いやいやいや、そんな言われても
商品がないんで無理なんですよ」
申し訳ないけど帰っていただいたんです。
そしたらまた翌月、来はって、
「お前、俺に興味ないんか」と。
いやいやいやいや(笑)。
──
(笑)。
森蔭
「そもそもうちのシャツの何がいいのですか?」
ってたずねても、
「俺がいいって言うんだから、やいやい言うな」
みたいなことを言われるんですよ(笑)。
──
(笑)。
森蔭
で、まあ、そんなのが何回か続いて、
フレンドリーな感じにもなってきたんですね。
調べてみたら、そこそこ有名なおっさんで(笑)。
なにより熱心やし。
ぼくらも、海外にはちょっと興味あったんですよ。
──
そうでしたか。
森蔭
西洋からやってきたシャツが、
日本でこういうふうになりましたっていうのを、
向こうで見せてみたい。
それはできる範囲かなあ、と。
──
ああ、おもしろいですねえ。
森蔭
将来的には、向こうの生地でつくった
モリカゲシャツをまた日本に戻して、
今度はそれを東京で販売したらどうか、とかね。
──
「モリカゲシャツ東京」ですか!
森蔭
そうなるといいですね。徐々に、ですけど。
──
はい、徐々に。
よく、わかりました。
たのしみにしています。
‥‥きょうはどうもありがとうございました。
森蔭
いえ、こちらこそ。
すんませんねえ、ぼく、話が長いんですよ(笑)。
──
とんでもない、とても楽しかったです。
‥‥あの、こうなったらもう、
京都の本店に遊びに行ってもいいでしょうか?
森蔭
あ、もちろんです、ぜひどうぞ。
──
せっかくなので、
シャツのオーダーをしたいのですが‥‥。
森蔭
そうですか、
じゃあ、予定を調べてみますね‥‥。
(インタビュー編はここまで。
来週の月曜日、本店の様子をお届けします!)
2008-02-07-THU