糸井 |
あの……零士さんがホストを始めた頃というのは、
まだオールバックの世界だったんですか? |
零士 |
だったですね。 |
糸井 |
その頃は、自分としては異色だったんですか? |
零士 |
僕が、ですか? |
糸井 |
うん。 |
零士 |
僕がホストを始めたのは、ちょうど、
少年隊の東山くんが出てきたくらいのときです。
僕が入ったときは、くっきり二重の、
濃ゆ〜い顔の、羽賀ケンジばりの、
ああいった感じの顔がホストとしては
「ああー、いい男だ!」っていう感じでした。
世間一般でもそう思われていたけど、
その頃、「しょうゆ顔だ」なんていうような、
そういう言葉が出てきた時期がありましたよね。
そのくらいの時代ですから、
僕らみたいな顔がグーッと出てきたんですよ。 |
糸井 |
あ、顔の流行があるんですか? |
零士 |
あるんですよ。 |
糸井 |
それはホスト業界だけじゃなくて市民レベルでも、
「この顔は今はもうアウトオブファッションだ」とか、
そーいうことになってるんですか? |
零士 |
なってますねー。
ただ、どの時代の顔も、当時いいとされたものは、
当時の映像を見れば「かっこいいな!」って思いますね。
だから、その時代、その時代のよさを追求してるだけで、
あのときは、そういう顔が……。
「ちょっとあっさり系だね」って言われるのは、
その前の時代はほめ言葉じゃなかったのに、
「あっさり系」がほめ言葉になっちゃった時代ですよ。
今(2000年)から13年、14年前ですね。
そっから僕が出てきたんですよ、グーッと。 |
糸井 |
じゃあ、零士さんは当時、しょうゆ顔として
デビューしたんですか? |
零士 |
そうですね。そんな感じです。
で、妙にやたら腰が低いとかね(笑)。 |
糸井 |
(笑)腰が低い!
それまでは、ホストは腰が高かったんですか? |
零士 |
えーっとですね……、出会って次の日には
“おまえ”と呼んでる、みたいな、女性に対して。 |
糸井 |
永チャン(矢沢)系ですか?
そうではないの? |
零士 |
そーじゃないんですよねぇ。 |
糸井 |
もっと演歌系? |
零士 |
はい、演歌っぽいんですよ。
ブルースっぽいんですよ(笑)。 |
糸井 |
ブルージーな(笑)。
あ、そう!
やっぱ、照明は暗いの? |
零士 |
照明は暗くって、ランプにぽーっと灯がついてて、
で、トイレ行くと妙に明るい蛍光灯がついてて、
で、その……張り紙があるんですよ。
「お客様とは、出会ってからすぐに
おまえと呼べる仲になれ!」とか(笑)。
「怖ぇ〜」と思いながら……。
そーゆーことが従業員用のトイレに貼ってあるんです。 |
糸井 |
「出会ってすぐにおまえと呼べる仲になれ!」(笑)。 |
零士 |
「……社長より」(笑)。
それを店のホスト100人が読んでるわけですから。
100人いますからね、当時僕がいた店は。 |
糸井 |
自分はそのとき、
「やっていけないかもしれない」とか思わなかった? |
零士 |
いや、「なに言ってんだろ?」と。 |
糸井 |
「ちがうよ!」と。 |
零士 |
ちがうと思いましたね。 |
糸井 |
でも、お客さんもホストから
「おまえ」と呼ばれたくて来てた時代なんですか? |
零士 |
来てた時代なんです。
だから、僕なんかは、
「ものたりない」って言われましたよ、当時は。
「さっぱりしすぎだ」って。 |
糸井 |
じゃ、「おまえ」と呼ぶことの
裏目を行ったわけですよね? |
零士 |
僕は、裏目に行きましたね。
意識的にそっちに行きましたね。
で、店にいい先輩、かっこいい先輩がいるわけですよ。
今回も読者からいろんな質問受けてますけど、
僕も同じような疑問があって……、
田舎ではそこそこ自信もあったわけですけどね。 |
糸井 |
田舎でモテてたの? すでに。 |
零士 |
僕ねぇ……あのこれ、誰でもあると思うんですけど、
好きな女の子っていじめちゃうじゃないですか。
たぶん僕はサディストだと思うんですけどね、
いじめがひどくて……その子のこと好きすぎて。
その子がイスに座るときに
画鋲ピュッって置いちゃったり……。 |
糸井 |
それ、愛じゃないねぇ、ぜんぜん(笑)。 |
零士 |
そうなんですよ(笑)。
それを愛だと自分で勘違いしてたんですよ。
「オレは愛してるんだ〜!」って(笑)。
で、向こうのお母さんも
めちゃくちゃ怒ってるわけですよ、
「なにアンタんちの息子は!」って怒鳴りこんできて。
でも、
「いや、オレは愛してるんだ、あの女を」
なーんて思いながら……小学生のときですね(笑)。
そんな感じだったんですよ。
あとは、やっぱりこう、すごい仲間意識が強くて。
友達と、向こう2人で、こっち2人で……えっと? |
糸井 |
ダブルデート? |
零士 |
そう、ダブルデートで、
友達がフラれちゃったりするんですよ。
すると、俺も一緒になって、
「俺もやめるよ……」って言ってる自分を
かっこいいと思ってたんですよ。
「俺ってかっこいいなー!」って。
連れを裏切れないなぁー、っていう。
そういう仲間意識はすっごい強かったですよ。 |
糸井 |
じゃ、その当時はモテてる実感はなかったんですか? |
零士 |
……あんまりなかったですね。 |
糸井 |
実際モテてたんでしょ? |
零士 |
高校生になってからですね。
僕のときはちょうど“ヤンキー”の時代ですからね。
ヤンキーなんてのが流行ってて。
で、その、金八先生なんかで、
学校のガラス割ってどうのこうのと、
そういう時代ですから(笑)。
(つづく) |