HOST
いっそあのホストに訊こう!

第4夜 このままだとアキラのようになる

糸井 高校の頃にはもう戦略を練ってたんですか?
零士 練ってましたね。中学から練ってましたね。
糸井 中学から(笑)。
戦略ノートとかあったりした?
零士 いや、ノートはないんですけど、
「なんか、こういう時って、女って、
 こういうこと考えてんだろうな」とか、
「あの子意識して歩いてんだろうな、後ろ歩いてる俺が
 ずーっとなんかおしりのへん見てんのをぜったい
 意識してんだろうな」とか(笑)。
で、連れに実験させるんですよ。
「俺が合図したらその子の前から歩いてこい」って。
どういう顔して歩いてるか前から見てくれ、と。
目に出るじゃないですか。
そういうこと考えてたんですよ、いつも。
糸井 ガキのくせに!(笑)。
零士 で、そういうことを友達に教えてたんですよ、延々と。
駄菓子屋でおでん食いながら。
糸井 はぁ〜、へんな高校生だねぇ。
零士 へんな高校生だったんですよ。
糸井 ほかにはしてなかったの?
ナンパ系以外は?
零士 で、実際……ナンパは……。
糸井 ナンパではないんだ?
零士 僕ナンパはあんまりしなかったんですよ。
糸井 声かけたりするんじゃなくて、
ワナはって待ってると?
零士 待ってます。
糸井 今と同じじゃない。
零士 あ、同じですね。
だから、自分のことをよくわかってなければ、
きっと無駄なんだなと思うんですよ。
小さな街ですけど、駅の前にね、みんなこうやって
うんこ座りして、タバコふかして、っていうことは
無駄だと思ってました。時間の無駄。
糸井 はぁ……。
零士 だったら、夕方、女子高生が帰る時間だけ、
お約束のようにあらわれて、あとは
とっとと帰ったほうがいいじゃない、と。
そういうことを考えてました。
糸井 じゃあもう高校時代には、
「将来モテ職業に入るかなぁ」って気は
あったんですか?
何になりたかったんですか、当時は?
零士 僕はね……水商売に早くから入っちゃったんですよ。
糸井 何歳くらいで?
零士 えー、17。
17歳でもう入っちゃいました。静岡で。
友達のお母さんが経営してる居酒屋が、
パブを始めるって話だったんですよ。
で、そこの息子が……、
これがなかなかいい男なんですよ、
……あの、何人かで、男の子だけでやろうよ、と。
もともとそのお母さんが具合悪くて倒れちゃって、
じゃあ居酒屋を改装してお店新しくするからって話で。
ま、ちっちゃい店ですよ。
そこに仲のいい友達5人くらい集まって、
やってたんですよ。
糸井 17歳くらいのやつが(笑)。
零士 ええ、17、18くらいのやつらがやってたんですよ。
そしたら、今まで居酒屋だったその店が……、
田舎って土曜日も仕事なんですよ、
ヤマハの工場とかにみんな勤めてて、
白いミラかなんかに乗って職場に通ってて、
で、ピンクのハートを吸盤でフロントガラスに
貼ってるような女の子たちが、
もう、ものすっごい来たんですよ。
街中のお姉ちゃんが、そのちっちゃな店に来た。
糸井 それは、17、18歳くらいの男の子を求めて?
会いたいんだ?
零士 なんかその……会いたくて来るんですよ。
糸井 なーにそれ!(笑)。
零士 なんかねぇ、たぶん、チャンネルとか、周波数とか
相手に合わせるのがうまかったんでしょうね。
で、女の子からしたら、
会話してても周波数合わせてくれる人が
職場とかにはいないんじゃないですか。
で、ある女の子ひとりが、
「あの店行くと、よくしてくれるよ、おもしろいよ」って。
糸井 「よくしてくれるよ、おもしろいよ」
ってまた字幕、ちょっとほしいですね。
零士 で、なんにもよくなんかしてないんですけどね。
当時はね、焼酎ですね。
黒に黄色のトライアングルが流行ってて、
“25”かなんかビンに書いてあるやつですね。
それにレモンサワー入れて、
チューハイってやつですね、
あれがすごく流行ってましたね。
で、ちょっと僕らがやさしく、
「酔ってない?」とか、「大丈夫?」とか、
そんなこと声かけるだけでいいんですよ。
「あー! 今日もかわいいねぇー、あいかわらずー」
なんて。
そんなこと言うだけで、お姉ちゃん、
よろこんじゃうんですよ。
糸井 そういう話聞くとさ、はじめから才能があったとしか
思えないじゃないですか。
コツもなにも。
零士 だから……いつも考えてたんでしょうね、
女のことばっかり。いっつも。
「こういうこと言ったらどう思うのかな?」とか、
「どういう反応示すのかな?」とか、
「俺がしゃべってるの横で見といて」とか
友達にたのむんですよ。
糸井 チェックするんだ?
零士 友達にチェックさせるんですよ。
糸井 じゃ、今そういうかっこう(姿勢)してるじゃない、
そういうしぐさも、身に付いたチェックポイントの
ひとつなのかなぁ?

零士 たぶん、こう標的をねらいさだめてるんでしょうね。
自然に。
「いくぞぉー!」って(笑)。
糸井 そうなんだろうねぇ(笑)。
零士 で、僕あんまり目線はずさないじゃないですか。
糸井 ああ、そういやそうだ。
零士 で、コトバ切るときだけ、スッとはずして。
糸井 (笑)そんなの、研究してたの?
零士 してたんですよぉ!
だから、いつも鏡見ながら「あのさぁ」とか、
「俺さぁ」とかって、必ずやってたんですよ。
糸井 野球の選手が部屋に帰って、素振りするみたいだねぇ。
零士 それと同じですよ。
長嶋さんみたいに、
「バットの振りでわかるんだ」みたいな、
「俺にしかわからない感覚があるんだ」と思ってたんです。
糸井 17歳で(笑)。
零士 ただ、認められるには、これじゃいけない、と。
ちょっと言い方わるいですけど、
簡単、とか、ちょろいな、って思ってて、
このままだと“井の中の蛙”になるな……と。
そういう危険性が大だと思って。
糸井 あー、そこに満足してられないわけだ。
ミラに乗ってくる女の子には。
零士 ええ。
それで、東京の専門学校に行った友達が、
お盆休みで夏に帰ってくるわけですよ。静岡に。
そうすると例の駄菓子屋に集まるんですよ。
「すぎのや」って言うんですけど。
で、ガキの頃から集まる場所で、
おでんとかき氷を食いながら、
「東京はこうでな、ああでな」って話きくと、
「本当かそれ!?」
「すごいんだよ、オマエのやってることが
 カネになるところがあるんだよ」って。
いや、俺はカネはどーでもいいけど、
そこを制覇したい、って。
糸井 つまり、
「オマエ今のまんまでも、
 やってることがぜんぶカネになるぞ」と?
零士 そうです。
で、そいつが……、
幼稚園から一緒の友達なんですけど、
「オマエはこのままだと、アキラのようになる」
って言うんですよ。

(つづく)

2000-05-14-SUN

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