糸井 |
高校の頃にはもう戦略を練ってたんですか? |
零士 |
練ってましたね。中学から練ってましたね。 |
糸井 |
中学から(笑)。
戦略ノートとかあったりした? |
零士 |
いや、ノートはないんですけど、
「なんか、こういう時って、女って、
こういうこと考えてんだろうな」とか、
「あの子意識して歩いてんだろうな、後ろ歩いてる俺が
ずーっとなんかおしりのへん見てんのをぜったい
意識してんだろうな」とか(笑)。
で、連れに実験させるんですよ。
「俺が合図したらその子の前から歩いてこい」って。
どういう顔して歩いてるか前から見てくれ、と。
目に出るじゃないですか。
そういうこと考えてたんですよ、いつも。 |
糸井 |
ガキのくせに!(笑)。 |
零士 |
で、そういうことを友達に教えてたんですよ、延々と。
駄菓子屋でおでん食いながら。 |
糸井 |
はぁ〜、へんな高校生だねぇ。 |
零士 |
へんな高校生だったんですよ。 |
糸井 |
ほかにはしてなかったの?
ナンパ系以外は? |
零士 |
で、実際……ナンパは……。 |
糸井 |
ナンパではないんだ? |
零士 |
僕ナンパはあんまりしなかったんですよ。 |
糸井 |
声かけたりするんじゃなくて、
ワナはって待ってると? |
零士 |
待ってます。 |
糸井 |
今と同じじゃない。 |
零士 |
あ、同じですね。
だから、自分のことをよくわかってなければ、
きっと無駄なんだなと思うんですよ。
小さな街ですけど、駅の前にね、みんなこうやって
うんこ座りして、タバコふかして、っていうことは
無駄だと思ってました。時間の無駄。 |
糸井 |
はぁ……。 |
零士 |
だったら、夕方、女子高生が帰る時間だけ、
お約束のようにあらわれて、あとは
とっとと帰ったほうがいいじゃない、と。
そういうことを考えてました。 |
糸井 |
じゃあもう高校時代には、
「将来モテ職業に入るかなぁ」って気は
あったんですか?
何になりたかったんですか、当時は? |
零士 |
僕はね……水商売に早くから入っちゃったんですよ。 |
糸井 |
何歳くらいで? |
零士 |
えー、17。
17歳でもう入っちゃいました。静岡で。
友達のお母さんが経営してる居酒屋が、
パブを始めるって話だったんですよ。
で、そこの息子が……、
これがなかなかいい男なんですよ、
……あの、何人かで、男の子だけでやろうよ、と。
もともとそのお母さんが具合悪くて倒れちゃって、
じゃあ居酒屋を改装してお店新しくするからって話で。
ま、ちっちゃい店ですよ。
そこに仲のいい友達5人くらい集まって、
やってたんですよ。 |
糸井 |
17歳くらいのやつが(笑)。 |
零士 |
ええ、17、18くらいのやつらがやってたんですよ。
そしたら、今まで居酒屋だったその店が……、
田舎って土曜日も仕事なんですよ、
ヤマハの工場とかにみんな勤めてて、
白いミラかなんかに乗って職場に通ってて、
で、ピンクのハートを吸盤でフロントガラスに
貼ってるような女の子たちが、
もう、ものすっごい来たんですよ。
街中のお姉ちゃんが、そのちっちゃな店に来た。 |
糸井 |
それは、17、18歳くらいの男の子を求めて?
会いたいんだ? |
零士 |
なんかその……会いたくて来るんですよ。 |
糸井 |
なーにそれ!(笑)。 |
零士 |
なんかねぇ、たぶん、チャンネルとか、周波数とか
相手に合わせるのがうまかったんでしょうね。
で、女の子からしたら、
会話してても周波数合わせてくれる人が
職場とかにはいないんじゃないですか。
で、ある女の子ひとりが、
「あの店行くと、よくしてくれるよ、おもしろいよ」って。 |
糸井 |
「よくしてくれるよ、おもしろいよ」
ってまた字幕、ちょっとほしいですね。 |
零士 |
で、なんにもよくなんかしてないんですけどね。
当時はね、焼酎ですね。
黒に黄色のトライアングルが流行ってて、
“25”かなんかビンに書いてあるやつですね。
それにレモンサワー入れて、
チューハイってやつですね、
あれがすごく流行ってましたね。
で、ちょっと僕らがやさしく、
「酔ってない?」とか、「大丈夫?」とか、
そんなこと声かけるだけでいいんですよ。
「あー! 今日もかわいいねぇー、あいかわらずー」
なんて。
そんなこと言うだけで、お姉ちゃん、
よろこんじゃうんですよ。 |
糸井 |
そういう話聞くとさ、はじめから才能があったとしか
思えないじゃないですか。
コツもなにも。 |
零士 |
だから……いつも考えてたんでしょうね、
女のことばっかり。いっつも。
「こういうこと言ったらどう思うのかな?」とか、
「どういう反応示すのかな?」とか、
「俺がしゃべってるの横で見といて」とか
友達にたのむんですよ。 |
糸井 |
チェックするんだ? |
零士 |
友達にチェックさせるんですよ。 |
糸井 |
じゃ、今そういうかっこう(姿勢)してるじゃない、
そういうしぐさも、身に付いたチェックポイントの
ひとつなのかなぁ?
|
零士 |
たぶん、こう標的をねらいさだめてるんでしょうね。
自然に。
「いくぞぉー!」って(笑)。 |
糸井 |
そうなんだろうねぇ(笑)。 |
零士 |
で、僕あんまり目線はずさないじゃないですか。 |
糸井 |
ああ、そういやそうだ。 |
零士 |
で、コトバ切るときだけ、スッとはずして。 |
糸井 |
(笑)そんなの、研究してたの? |
零士 |
してたんですよぉ!
だから、いつも鏡見ながら「あのさぁ」とか、
「俺さぁ」とかって、必ずやってたんですよ。 |
糸井 |
野球の選手が部屋に帰って、素振りするみたいだねぇ。 |
零士 |
それと同じですよ。
長嶋さんみたいに、
「バットの振りでわかるんだ」みたいな、
「俺にしかわからない感覚があるんだ」と思ってたんです。 |
糸井 |
17歳で(笑)。 |
零士 |
ただ、認められるには、これじゃいけない、と。
ちょっと言い方わるいですけど、
簡単、とか、ちょろいな、って思ってて、
このままだと“井の中の蛙”になるな……と。
そういう危険性が大だと思って。 |
糸井 |
あー、そこに満足してられないわけだ。
ミラに乗ってくる女の子には。 |
零士 |
ええ。
それで、東京の専門学校に行った友達が、
お盆休みで夏に帰ってくるわけですよ。静岡に。
そうすると例の駄菓子屋に集まるんですよ。
「すぎのや」って言うんですけど。
で、ガキの頃から集まる場所で、
おでんとかき氷を食いながら、
「東京はこうでな、ああでな」って話きくと、
「本当かそれ!?」
「すごいんだよ、オマエのやってることが
カネになるところがあるんだよ」って。
いや、俺はカネはどーでもいいけど、
そこを制覇したい、って。 |
糸井 |
つまり、
「オマエ今のまんまでも、
やってることがぜんぶカネになるぞ」と? |
零士 |
そうです。
で、そいつが……、
幼稚園から一緒の友達なんですけど、
「オマエはこのままだと、アキラのようになる」
って言うんですよ。
(つづく) |