零士 |
当時、アキラって映画があって。
「このままだとオマエ、アキラになっちゃう」
って友だちが言うんですよ。 |
糸井 |
大友克洋の「アキラ」?
ボッカーンってやつだ? |
零士 |
そうです、そうです。
「オマエ田舎で浮きすぎてるから、
このままだと、どんどんどんどん膨らんで、
最後は爆発してなくなっちゃうよ。
それを受け止められるのは都会しかないよ」って。
“都会”ですからね……トカイ(笑)。 |
糸井 |
いや、わかる。
クリスタルキングの「大都会」って歌あったでしょ。
あの大都会って、福岡のことだっていうからね。
あの歌は福岡を歌ってるんだって。 |
零士 |
そーなんですか?(笑)。 |
糸井 |
それに近いですよね。 |
零士 |
だから、これはもう都会に出るしかない、と。 |
糸井 |
都会はその大爆発を受け止めるだけのものがあると? |
零士 |
僕はそう聞いたんですよ。
で、「俺、大丈夫か?」って。
そしたら、
「オマエ、ぜんぜん、そのまんまでイケる」って。 |
糸井 |
じゃ、自分はまだ自信がなかったんだ? |
零士 |
ぜんぜんないですよ。
だって、知らないですよ、
都会に行ったことないですから(笑)。
だから、都会行くにはバイクで……こう、族車で、
“えびぞり三段シート”なんてなってるやつで、
“煙突マフラー”で、
「これで都会、アルタ前行っちゃっていいのかなー?」
なんて思いながら(笑)。 |
糸井 |
族車で(笑)。 |
零士 |
連れに「ちょっと東京行こうよ!」って言っても、
「いや、ちょっと、たまご積んでるトラックしかない」
とかね(笑)。
たまご屋なんですよ、そいつ。
家が養鶏場で。 |
糸井 |
おお(笑)。 |
零士 |
たまご積んでて、それをみっともないと思うより、
「そうか、たまご割れたらマズいなぁ……」って、
発想が(笑)。 |
糸井 |
いいなぁー(笑)。 |
零士 |
「たまご割れたらマズいなぁ……そーか、
それじゃー、単車で行くかぁ!」
「いや、でもちょっと今、
煙突マフラーが調子わるいから……」って。
それ、アルタ前で折れちゃったら、もうねぇ(笑)。 |
糸井 |
そんなもんつけるから調子わるくなるんだって(笑)。 |
零士 |
「そーか、それ外しとけよ!」なんて。
そんなようなときですから。 |
糸井 |
で、それ(その単車)で東京出たわけ? |
零士 |
いや、それで、友達が、
「オマエそれじゃあ、沼津あたりで警察に捕まる」
って言うんですよ。
「捕まって、東京行けなくなるから」
「わかった……じゃあ電車で行こう……」
で、電車で行ったんですよ(笑)。 |
糸井 |
よかったねぇ、思い直して(笑)。 |
零士 |
それも鈍行かなんかで何時間もかけて行って。
カネもったいないから。
そしたら、いきなり、その……
今で言ったら「PIAA SPORTS」みたいな、
あんなような上下で東京に行っちゃって、
渋谷行ってもう、一発で気づいたんですよ。
「俺ら、ちがう意味で浮いてるよ……」って。 |
糸井 |
ああ……。 |
零士 |
「これはマズい!」って。 |
糸井 |
夏休みの青山とかさぁ、
いっぱいそういうのいるじゃん?
裸にスーツみたいなやつが(笑)。 |
零士 |
いっぱいいるんですよ! |
糸井 |
あれじゃあ、本人もちょっと気づいてるんだ? |
零士 |
あれで初めて気づくんですよ。
「……やばい」って。
最初はかっこいいと思うんですよ。
「だれもいねぇよ、こんなかっこしてるやつ」って。 |
糸井 |
だいたい二人組でしょ? |
零士 |
俺も二人組で行ったんですよ。 |
糸井 |
やっぱり(笑)。 |
零士 |
で、そいつはちょっと当時のチェッカーズの
フミヤっぽかったんですよ。
「なんかオマエこれ軟派に見られるぞ、
こんなかっこしてて。
俺を見てみろ、バリっときめてんだから!」って、
とんがったクツはいちゃって、
底に鉄かなんか打っちゃってて、
カツカツ音させて火花飛ばしてて(笑)。
あったでしょ? そういう時代? |
糸井 |
そういうやつが青山通りの歩道のないところを
よく渡ってるんだよ(笑)。
「俺にまかせろ!」みたいに。 |
零士 |
ひかれそうになっちゃったりして(笑)。
しかも迷ったタヌキが街に出てきちゃった感じで。
(つづく) |