HOST
いっそあのホストに訊こう!

第5夜 俺ら、ちがう意味で浮いてるよ……

零士 当時、アキラって映画があって。
「このままだとオマエ、アキラになっちゃう」
って友だちが言うんですよ。
糸井 大友克洋の「アキラ」?
ボッカーンってやつだ?
零士 そうです、そうです。
「オマエ田舎で浮きすぎてるから、
 このままだと、どんどんどんどん膨らんで、
 最後は爆発してなくなっちゃうよ。
 それを受け止められるのは都会しかないよ」って。
“都会”ですからね……トカイ(笑)。
糸井 いや、わかる。
クリスタルキングの「大都会」って歌あったでしょ。
あの大都会って、福岡のことだっていうからね。
あの歌は福岡を歌ってるんだって。
零士 そーなんですか?(笑)。
糸井 それに近いですよね。
零士 だから、これはもう都会に出るしかない、と。
糸井 都会はその大爆発を受け止めるだけのものがあると?
零士 僕はそう聞いたんですよ。
で、「俺、大丈夫か?」って。
そしたら、
「オマエ、ぜんぜん、そのまんまでイケる」って。
糸井 じゃ、自分はまだ自信がなかったんだ?
零士 ぜんぜんないですよ。
だって、知らないですよ、
都会に行ったことないですから(笑)。
だから、都会行くにはバイクで……こう、族車で、
“えびぞり三段シート”なんてなってるやつで、
“煙突マフラー”で、
「これで都会、アルタ前行っちゃっていいのかなー?」
なんて思いながら(笑)。
糸井 族車で(笑)。
零士 連れに「ちょっと東京行こうよ!」って言っても、
「いや、ちょっと、たまご積んでるトラックしかない」
とかね(笑)。
たまご屋なんですよ、そいつ。
家が養鶏場で。
糸井 おお(笑)。
零士 たまご積んでて、それをみっともないと思うより、
「そうか、たまご割れたらマズいなぁ……」って、
発想が(笑)。
糸井 いいなぁー(笑)。
零士 「たまご割れたらマズいなぁ……そーか、
 それじゃー、単車で行くかぁ!」
「いや、でもちょっと今、
 煙突マフラーが調子わるいから……」って。
それ、アルタ前で折れちゃったら、もうねぇ(笑)。
糸井 そんなもんつけるから調子わるくなるんだって(笑)。
零士 「そーか、それ外しとけよ!」なんて。
そんなようなときですから。
糸井 で、それ(その単車)で東京出たわけ?
零士 いや、それで、友達が、
「オマエそれじゃあ、沼津あたりで警察に捕まる」
って言うんですよ。
「捕まって、東京行けなくなるから」
「わかった……じゃあ電車で行こう……」
で、電車で行ったんですよ(笑)。
糸井 よかったねぇ、思い直して(笑)。
零士 それも鈍行かなんかで何時間もかけて行って。
カネもったいないから。
そしたら、いきなり、その……
今で言ったら「PIAA SPORTS」みたいな、
あんなような上下で東京に行っちゃって、
渋谷行ってもう、一発で気づいたんですよ。
「俺ら、ちがう意味で浮いてるよ……」って。
糸井 ああ……。
零士 「これはマズい!」って。
糸井 夏休みの青山とかさぁ、
いっぱいそういうのいるじゃん?
裸にスーツみたいなやつが(笑)。
零士 いっぱいいるんですよ!
糸井 あれじゃあ、本人もちょっと気づいてるんだ?
零士 あれで初めて気づくんですよ。
「……やばい」って。
最初はかっこいいと思うんですよ。
「だれもいねぇよ、こんなかっこしてるやつ」って。
糸井 だいたい二人組でしょ?
零士 俺も二人組で行ったんですよ。
糸井 やっぱり(笑)。
零士 で、そいつはちょっと当時のチェッカーズの
フミヤっぽかったんですよ。
「なんかオマエこれ軟派に見られるぞ、
 こんなかっこしてて。
 俺を見てみろ、バリっときめてんだから!」って、
とんがったクツはいちゃって、
底に鉄かなんか打っちゃってて、
カツカツ音させて火花飛ばしてて(笑)。
あったでしょ? そういう時代?
糸井 そういうやつが青山通りの歩道のないところを
よく渡ってるんだよ(笑)。
「俺にまかせろ!」みたいに。
零士 ひかれそうになっちゃったりして(笑)。
しかも迷ったタヌキが街に出てきちゃった感じで。

(つづく)

2000-05-16-TUE
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