零士 |
バス釣りで言えば、
「このルアーさえ使えば、釣れる!」っていう
自分の伝家の宝刀みたいなルアーって
あるじゃないですか。
でも、それって意外と使わないで、
ずーっと置いといたりしますよね。
それと同じで、本当にこの言葉とか、
伝家の宝刀みたいな言葉って、
好きな女にできたら言ってやろうと思ってても、
言えないことってあるじゃないですか?
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糸井 |
「思ってても」って……、
普通そんなセリフ考えてないよ(笑)。
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零士 |
あっ、そうすか?(笑)
俺、しょっちゅう考えてるんですよ。
こう言おうかなー、とか。
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糸井 |
もうすでにちがうよねぇ(笑)。
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零士 |
だからそれはもう、
僕はずーっと参加したいと思ってるからです。
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糸井 |
つまり、会社員が見積書かなんか作りながらでも、
女の子のことを考えてなかったら
セリフ云々はできないんですよね?
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零士 |
できないです。
たとえば、会社のなかにマドンナが
いるとするじゃないですか、
仮にだれかとつき合ってる人でもいいですよ。
ふとひと息つくときに、
「は〜、この人はちがう所で俺と知りあって
こう声かけたら、うまくいってるかな……」とか、
そんなくっだらないことですよ、考えるのは。
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糸井 |
妄想するんだ?
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零士 |
妄想してるんですよ。
で、銀座とかで、すっごいお金使って女の子にモテてる人、
つまり“今モテている”という人も、
そんなことばっかり考えてるんですよ、きっと。
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糸井 |
でも、お金使うこととはちがいますよね、
モテるってのは?
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零士 |
だから、参加しちゃってるんですよ。
お金は参加するための切符なんですよ。
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糸井 |
お金が切符なんだ。
値段の高ーいオペラみたいなもんだ。
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零士 |
そうなんですよ。
行ったことない人にはチンプンカンプンなんですよ、
「なーにがおもしろいんだろ?」って。
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糸井 |
あれもあれで、モテをねらってるんですよね?
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零士 |
銀座にいる女性をテーマにした
自分のなかの自己満足みたいな、
そういうことの連続でしょうね。
いろーんな分野があるわけですから、世の中に。
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糸井 |
今の話聞いてるとさ、
「参加する」ってことで言うと
“誰でも同じようにできる”みたいに聞こえるけどさぁ、
実は“素質”ってあるでしょ?
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零士 |
“素質”は正直ありますよね、多少は。
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糸井 |
ありますよね。
あと、「タフでマメ」や、字幕にしたほかの言葉を、
零士さんが言ったとおりに、
全部ちゃんと実行すればいいとしても、
「それは、なんかちがう……」って
考える人もいますよね?
なにが人を分けるんですかねぇ?
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零士 |
まず、自分のオリジナルな形をわかってない人、
自分の土台がわかってない人だと、
そこにいくらいいものを乗っけていっても、
最後は崩れちゃうんですよね。
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糸井 |
つまり、己を知ることですね。
たとえば、こーんなデカい頭の人がいたとしますよね、
そしたらまず「俺は頭がデカいんだ!」と思って……。
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零士 |
まず思って、
「俺は顔デカいんだから、シャープで、
わりとこうピシッとした服は似合わないから、
自分に合う洋服を“死ぬほど調べる”」とか。
不安材料をつぶしていく、ってことですよね。
まず己を知って。
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糸井 |
自分の弱点も知り、美点も知ったうえで、
不安な部分をなにかで解消させていくわけだ?
服なら服で、趣味なら趣味で。
で、いいところをのばしていくわけですね?
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零士 |
ええ。
で、そういうことをしていると、
それを見てる女って必ずいるんですよ。
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糸井 |
そこが、またぁ(笑)。
“それを見てる女が必ずいる”。
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零士 |
要するに、出会いがあるわけですよ。
それなりに出会いがあるわけですよ、必ず。
なのに、自分がイヤだと思ってる所とか、
自分はイケてない、なんかイマイチだなと思う所には、
いくら人が「行け!」と言っても行かないですよね。
「出会いがあるから行ってみなよ」と言っても、
行ったら空気が「ちがうな」と思うから行かない。
そういう人は敏感ですから。
そういう人ってのは、今までモテなかった人、
モテ方を知らなかった人。
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糸井 |
(笑)モテ方を知らなかった人。
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零士 |
そういう人は、「あ、僕やっぱりいいや」って
スッと家に帰っちゃうんですよね、きっと。
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糸井 |
ああー、なるほどー。
「傷つくのがこわくて恋ができない」って、
若い子の間ではいっぱいあるじゃないですか。
あれもやっぱり「参加してもダメかも……」って思うと
おりちゃうわけだ。
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零士 |
おりちゃう。参加しない。
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糸井 |
今の若い子たちは、傷つくことをこわがりますよねー?
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零士 |
こわがりますよー。
だから、もうひとつ違った自分を作ったりするでしょ。
僕らなんかから見ると、
「なんかそれってオマエ、いいわけだろ?」って。
それとか、
「本当はビビってるくせに、もうひとつの自分を立てて、
それで押してるんだよな」ってのは見えるんですよ。
「大丈夫かなぁ……」なんて本当は思っていながら、
「カンケーねぇよ!」なんて言っちゃって。
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糸井 |
うんうん。
それはもうビジネスでも同じですよね?
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零士 |
同じです。
で、ビジネスの形としてそれをやるのは
いいと思いますよ。
それはビジネスの“技”ですからね。
本当は自分はこうなのに、
ちがう自分をもうひとつ作っておいて、
街のなかでタッグ組んで、
たとえば渋谷をぐるぐる歩いてるってのは、
あれはあれで参加してるんですよ、アイツらは。
家で寝てたってしょうがない。
とりあえず渋谷に行って、参加してるんですよ。
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糸井 |
なるほど、それはまだ見込みがあるわけだ?
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零士 |
すごくいいことだと思いますよ。
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糸井 |
モテ道からすると、いいことだよね。
だって、釣りに行っちゃってたら、もう、ねぇ(笑)。
魚しかいないよねぇ。
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零士 |
ええ。
ただ、釣りってのは、またちょっと特殊ですからね。
あれだけ人をハメちゃうってのは、
魚に魅力があるわけですよ!
でも、釣り場でだれかと知りあうかもしれない(笑)。
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糸井 |
ないけどねー(笑)。
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零士 |
ただ、なんかちょっと、こうルアー買いにきてる
お姉ちゃんのとなりにわざと行って……。
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糸井 |
あ! 店もフィールドですよね。
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零士 |
そりゃそーですよ!
俺はそー考えるんですよ。
どこでどう会うかわからないじゃないですか。
会うべき人と会うかもしれないし。
(つづく) |