零士 |
たとえ場所がどこであっても、
会うべき人と会うかもしれないんですよ。
で、たとえば釣り具屋で、
会うべき人とばったり会ったとすると、
その人がルアーをとろうとして、
こう手をかけたところを
「あ、すいません……」って
ちょうど手がこう重なったりして。
「あ、このルアー買うんですか?
僕もこのルアーにはねぇ、思いでがあるんですよー」
なんて。
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糸井 |
そう話しかけるんだ?
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零士 |
普通の状況よりは話しかけられますよね、
その女性が釣りが好きだったら。
まあ、釣り具屋はたとえ話なんですけど、
そういうふうに、あらゆる状況を想像してて、
本当にそうなっちゃうことがいっぱいありますから。
俺はそう思ってるんです。
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糸井 |
こう、ルアーに手を伸ばしてるのを見てから、
“あとだし”になってもいいわけだ。
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零士 |
もーちろん、いいんですよ。
ピタッと合わなくてもいいんですよ。
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糸井 |
いまいち自信がないと、ピタッと合わなかったら
ダメな気がしますよね。
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零士 |
ええ。
「あ、いらんことやっちゃった」って思うんですよね。
でも、いらんことじゃないですよ。
それをやったことは、いいことですよ。
客観的に見た場合に、
「アイツは何をわけわかんないこと言ってんだ」と、
思われても、そこにいた当の本人と、
言われた相手はマジになっちゃうんですよ。
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糸井 |
外側は関係ないんだ?
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零士 |
関係ないんですよ! これだけは。
読者のみなさんからの質問も、ぜんぶそうでしたよ。
質問を読んでいて言えることは、
“第三者は関係ない”ってことなんです。
質問のなかに第三者は登場人物として出てこないんですよ。
私は、僕は、俺は、って質問に書いてあるんですよ。
人がどうでこうで、これは私の友だちの話なんですけど、
とか、そういうことは、まずないんですよ。
第三者は関係ない、
その人自身から見た“見方”があって、
それに対して、零士さんはどう思いますか?
という質問が非常に多いんです。
あと、年齢によってちがいますね、やっぱり。
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糸井 |
若い人からの質問のほうが、
悲しみがこもってましたよね。
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零士 |
そうですね、こもってます。
で、40代の女性とかだと、
私はちょっと目を細めながら物事を見られますよ
っていうのを前提にして、質問書いてますよ。
20代だと……24、25の適齢期を越えて、今26、27で、
なんとなく30歳がくるのがこわい、びびってんな、
というようなコメントの人もいます。
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糸井 |
質問を読んでいると、
ホストという人に対する、こわい、ずるい、きたない、
というイメージからくる怖れを、
「実はそうじゃないんだ!」って
零士さんにパーンと言ってほしいみたいな気分が
全体的に感じられたんですよ。
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零士 |
ええ、僕も読んでてそれは感じましたね。
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糸井 |
こわくも、ずるくも、きたなくもないよ、っていうのを
本人の口から言っちゃったら、根拠なくっても、
「やっぱりそうでしょ!」ってなるような気がしますね。
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零士 |
僕らは自分のなかにモラルがあるんですよ。
基本的には、男と女は結局は、第三者は関係ない、と。
ただし、「男としてこれは普通じゃないな」って
自分が思うことに手を出すと火傷するんですよ。
ホストでも。
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糸井 |
それ、たとえば、どういうことですか?
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零士 |
男女の間のことで、
なにかその状況を女の人が何も言わずに
のんでいるような状態でつきあってても、
普通に考えて、
「きっとこれは本当の愛じゃないな」とかね、
「本当は俺は好きじゃないのかな……」と思う場合は、
自分のことがわかんなくなっちゃうんですよ、結局。
自分のなかでちゃんとモラルがあるんですよ。
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糸井 |
つまり、商売であり、職業ではあるんだけど、
その職業をささえる動機があるわけだ?
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零士 |
あるんです、ちゃんと。
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糸井 |
それは、どういうふうに説明するんですか?
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零士 |
ホストはですねぇ、自分を支えてくれる女性に対して、
要するに夢を売るわけですよ。
夢を売って、その女性の
明日の張りになればいいわけですよ。
で、客観的に自分を見たら、なんかすごく
自分が悪いような感覚になる時ってあるんですよ。
「なんか俺って、お金使わせちゃって悪いのかなぁ」とか。
でも実際は、その女性が、
「今日はこうでね、ああでね」って
電話をしてくることが、結局本人がよければ、
俺たちは一生懸命よくしてあげよう、
って思うんですよ。
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糸井 |
宗教のお布施みたいなもんですね?
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零士 |
そうなんですよ。
入り込めない部分があるんですよ。
相手側の女性に。
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糸井 |
坊さんとか、看護婦さんとか、
そういう職業に近いですよね。
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零士 |
近い部分あるんですよ。
それを、ずるいとか、きたないとか、こわいとか……。
でも今はね、だいぶなくなりましたよ、そういうイメージ。
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糸井 |
マイナスのイメージがなくなってきたのは、
会計制度のせいもあるんじゃないですか?
むやみにお金を絞りとられるんじゃないかという
漠然とした恐怖があった時代があったけれとも、
実はビジネスのシステムとして、
ここまでしか掛からないというのが見えてきた
というのがあるんじゃないですかね?
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零士 |
もちろんそれもありますね。
広くマスメディアを使って、
お茶の間にも広く伝わるようになりましたからね。
僕なんかがバラエティ番組に出演して、
「そんなことないんだよ」って。
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糸井 |
化け物じゃないんだよ、ってことはわかるよね。
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零士 |
それは伝わると思うんですよ。
僕が出演した番組を観てくれて、
「あ、この人、これ、天然で言ってるな」とかね、
「天然で今照れてたね」とか、
「マジで顔ひきつってた」とかね。
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糸井 |
裸になっちゃったほうが、
ビジネスはやりやすくなってるっていうことですか?
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零士 |
そういうことです。
(つづく) |