HOST
いっそあのホストに訊こう!

第13夜 こんど僕がごちそうしたいんです

零士 僕らのマイナスイメージがなくなってきて、
だから、歌舞伎町は今、
バブルの絶頂期の頃に比べて、
店の件数増えてるんですよ。
歌舞伎町のなかに5000人いるんですよ。
糸井 え、そんなにたくさん?
零士 すーごい集団ですよ。
バブルの頃の倍に近いですよ。
糸井 1人当たりのお客さんが使う単価が
安くなったってことはあるんですか?
零士 あります。
糸井 それは企業努力だったんですか?
零士 ……女性がしっかりしてきたというか、
女性が強くなってきたんですね。
男が進化する度合いを、
100メートル10秒で走るとしたら、
今女性は100メートルを5秒のスピードで、
ガンガン追いついてきて、
男が抜かれそうなんですよね。
糸井 は〜。
零士 鼻の下がのびないってことですよ。
女性はもともと鼻の下がのびないんですよ。
糸井 そうなんですか?
零士 男のほうがのびやすいですよね、デローンと。
糸井 女性たちは、ぜんぜん鼻の下のびてないんですか?
零士 さっき「夢を売るのが商売」と言いましたけど、
女性は鼻の下のばしたとしても、
一瞬でも針の先かなんかでちょっと突いたら、
シュッと戻っちゃいますね。
男は多少針でチクチク刺したって、
ナイフでブスブス刺したって、
鼻の下がのびっぱなしの人がいますから(笑)。
糸井 にやけちゃったまま
暮らしてるってことになりますよね(笑)。
零士 ええ。
でも男はそれでいいんですよ。
角がとれて。
「なんかこの人、恋してるんだなぁ」、
「恋も仕事の張りになればいいんじゃないの」っていう。
「それは男の甲斐性じゃないの」っていうことで
済まされる部分ってありますよね。
それは、今までの歴史をみてもそうですけど、
うまくバランスがとれてますよね。
女性は鼻の下がのびにくい、男はのびやすい。
だから、僕ら銀座のホステスに比べたら、
需要はやっぱ少ないですから。
それをバブルの頃の倍近くの人数に
増やしたことがすごいって
ほめてもらえることが時々ありますね。
糸井 すごいですよ、そりゃ。
零士 テレビのゴールデンに
ホストがガンガン出るようになったのは、
僕が深夜番組からスタートして、
「ガブガブ」とかっていうトークで
トキオと一緒に番組やったりしたからで、
それはそれで、ひとつの貢献はしたなぁ、
と思ってますけど。
糸井 そういえば、僕がホストのことを
もっと知りたいと思ったのは、
たしかトキオの番組だったかな……。
あれに出てたのが零士さんだったんですか?
零士 俺がやってたんですよ〜。
トキオがモテない男の人を連れてきて。
糸井 で、モテない男の人にベルサーチの服着せて、
ホストが指令だして。
「客の回転がわるくなるから、早く切れ!」とか。
零士 あれ、俺なんです。
糸井 あれ見て感動したんですよ。
零士 俺がロケバスから指令出すんですよ。
「回転率が命だから!」なんて。
糸井 あのときにすごく関心したことがあって、
お客さんと仲良くなるときに、
どんな食べ物が好きか聞いて、
「こんど僕がごちそうしたいんです」

って言ったんですよ。
零士 最初に模範を見せたんですよね、僕が。
糸井 あれはショックだったねぇ……。
「そう言ったときに電話番号がわかるんだよ」って。

零士 そうなんですよ。
だから、ああいうことも、いっつも考えてるんですよ。
たとえば、
糸井さんから、うまい飯屋に招待してもらって、
この部屋が、そのうまい飯屋だとすると、
「糸井さん、このクッション、なにげに女の子喜ぶよね?」
「この椅子って女にウケがいいですよね?」って、
そういう話をしたときに、
「あ、そうだ!」って気づくんですよ。
俺ら今までぜんぜん気にしないで座ってたけど、
そういうことも頭の中にメモっとくんです。
後日フッとこの店に来たときに、
「どう? この椅子」
「かわいいー」
「でしょ?」
そっから始まるんですよね。
そのときにはその店が、うまい店になっちゃうんですよ。
「ちょっとね、椅子のオシャレな店があるんですよ」って。
そんなこともネタになっちゃうんですよ。
糸井 は〜。
零士 「え、なに? 椅子?」
「そうなんだよ、椅子がなんかねぇ……」って。
糸井 意表つくよねぇ。
零士 そうなんですよ。
「椅子? ホント?」
「ね、行きたいでしょ?」
「いきたーい!」
「ちょっと電話番号教えてよ、電話しなきゃならないから。
 ごちそうするから。味もそこそこいいから」
これ、“そこそこ”ってものミソなんですよ。
“絶対うまい”とかって言わないんです

「味もそこそこイケちゃうのよ、これが」って。
糸井 好みがあるしねぇ。
零士 そういう、押して引いてという……。
“椅子”で押して“そこそこ”で引く。
糸井 たえず考えてるんですねぇ……。
零士 考えてるんですよ、やっぱり。
だから僕は
「タフでマメな雑学の帝王やるとモテますよ」って
言うんですね。
糸井 それはもう雑学っていうよりは……なんだろ?
零士 雑学と言ったら大ざっぱな表現ですけど、
本当は専門学ですよ。
糸井 そうですよねぇ……。

(つづく)

2000-06-03-SAT

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