零士 |
僕らのマイナスイメージがなくなってきて、
だから、歌舞伎町は今、
バブルの絶頂期の頃に比べて、
店の件数増えてるんですよ。
歌舞伎町のなかに5000人いるんですよ。 |
糸井 |
え、そんなにたくさん? |
零士 |
すーごい集団ですよ。
バブルの頃の倍に近いですよ。 |
糸井 |
1人当たりのお客さんが使う単価が
安くなったってことはあるんですか? |
零士 |
あります。 |
糸井 |
それは企業努力だったんですか? |
零士 |
……女性がしっかりしてきたというか、
女性が強くなってきたんですね。
男が進化する度合いを、
100メートル10秒で走るとしたら、
今女性は100メートルを5秒のスピードで、
ガンガン追いついてきて、
男が抜かれそうなんですよね。 |
糸井 |
は〜。 |
零士 |
鼻の下がのびないってことですよ。
女性はもともと鼻の下がのびないんですよ。 |
糸井 |
そうなんですか? |
零士 |
男のほうがのびやすいですよね、デローンと。 |
糸井 |
女性たちは、ぜんぜん鼻の下のびてないんですか? |
零士 |
さっき「夢を売るのが商売」と言いましたけど、
女性は鼻の下のばしたとしても、
一瞬でも針の先かなんかでちょっと突いたら、
シュッと戻っちゃいますね。
男は多少針でチクチク刺したって、
ナイフでブスブス刺したって、
鼻の下がのびっぱなしの人がいますから(笑)。 |
糸井 |
にやけちゃったまま
暮らしてるってことになりますよね(笑)。 |
零士 |
ええ。
でも男はそれでいいんですよ。
角がとれて。
「なんかこの人、恋してるんだなぁ」、
「恋も仕事の張りになればいいんじゃないの」っていう。
「それは男の甲斐性じゃないの」っていうことで
済まされる部分ってありますよね。
それは、今までの歴史をみてもそうですけど、
うまくバランスがとれてますよね。
女性は鼻の下がのびにくい、男はのびやすい。
だから、僕ら銀座のホステスに比べたら、
需要はやっぱ少ないですから。
それをバブルの頃の倍近くの人数に
増やしたことがすごいって
ほめてもらえることが時々ありますね。 |
糸井 |
すごいですよ、そりゃ。 |
零士 |
テレビのゴールデンに
ホストがガンガン出るようになったのは、
僕が深夜番組からスタートして、
「ガブガブ」とかっていうトークで
トキオと一緒に番組やったりしたからで、
それはそれで、ひとつの貢献はしたなぁ、
と思ってますけど。 |
糸井 |
そういえば、僕がホストのことを
もっと知りたいと思ったのは、
たしかトキオの番組だったかな……。
あれに出てたのが零士さんだったんですか? |
零士 |
俺がやってたんですよ〜。
トキオがモテない男の人を連れてきて。 |
糸井 |
で、モテない男の人にベルサーチの服着せて、
ホストが指令だして。
「客の回転がわるくなるから、早く切れ!」とか。 |
零士 |
あれ、俺なんです。 |
糸井 |
あれ見て感動したんですよ。 |
零士 |
俺がロケバスから指令出すんですよ。
「回転率が命だから!」なんて。 |
糸井 |
あのときにすごく関心したことがあって、
お客さんと仲良くなるときに、
どんな食べ物が好きか聞いて、
「こんど僕がごちそうしたいんです」
って言ったんですよ。 |
零士 |
最初に模範を見せたんですよね、僕が。 |
糸井 |
あれはショックだったねぇ……。
「そう言ったときに電話番号がわかるんだよ」って。
|
零士 |
そうなんですよ。
だから、ああいうことも、いっつも考えてるんですよ。
たとえば、
糸井さんから、うまい飯屋に招待してもらって、
この部屋が、そのうまい飯屋だとすると、
「糸井さん、このクッション、なにげに女の子喜ぶよね?」
「この椅子って女にウケがいいですよね?」って、
そういう話をしたときに、
「あ、そうだ!」って気づくんですよ。
俺ら今までぜんぜん気にしないで座ってたけど、
そういうことも頭の中にメモっとくんです。
後日フッとこの店に来たときに、
「どう? この椅子」
「かわいいー」
「でしょ?」
そっから始まるんですよね。
そのときにはその店が、うまい店になっちゃうんですよ。
「ちょっとね、椅子のオシャレな店があるんですよ」って。
そんなこともネタになっちゃうんですよ。 |
糸井 |
は〜。 |
零士 |
「え、なに? 椅子?」
「そうなんだよ、椅子がなんかねぇ……」って。 |
糸井 |
意表つくよねぇ。 |
零士 |
そうなんですよ。
「椅子? ホント?」
「ね、行きたいでしょ?」
「いきたーい!」
「ちょっと電話番号教えてよ、電話しなきゃならないから。
ごちそうするから。味もそこそこいいから」
これ、“そこそこ”ってものミソなんですよ。
“絶対うまい”とかって言わないんです。
「味もそこそこイケちゃうのよ、これが」って。 |
糸井 |
好みがあるしねぇ。 |
零士 |
そういう、押して引いてという……。
“椅子”で押して“そこそこ”で引く。 |
糸井 |
たえず考えてるんですねぇ……。 |
零士 |
考えてるんですよ、やっぱり。
だから僕は
「タフでマメな雑学の帝王やるとモテますよ」って
言うんですね。 |
糸井 |
それはもう雑学っていうよりは……なんだろ? |
零士 |
雑学と言ったら大ざっぱな表現ですけど、
本当は専門学ですよ。 |
糸井 |
そうですよねぇ……。
(つづく) |