糸井 |
昔こういうふうに言ったら、
保守的な女の子の心の針がゆれて、
一気にグラッときたという、そういう言葉……。
あ! 零士さん、まだ現役で使ってそうだなぁ(笑)。
そういう言葉ってありますか? |
零士 |
(小声で)僕はですねぇ、あの……、
なんとなく言った言葉でいうと……。
クサイ言葉だから普段は言わないセリフですよね?
あの……意外に効果があるのは、
なんか、一緒にいて食事してても、
何もしゃべらない時間ってありますよね。
そういうとき……自分は本当に
しゃべりたくないだけなんですけど(笑)。 |
糸井 |
うん(笑)。 |
零士 |
で、逆にそのことを、そのまま言っちゃうんですよ。
「何もしゃべらないでいられるって、
それって、そのままだから……」って。 |
糸井 |
(拍手)これ、字幕!(笑) |
零士 |
(笑)でも本当のことですよね。 |
糸井 |
つまり事実をふたりで確認するわけだ? |
零士 |
確認するんです、常に。
で、それを外部から「おまえ、それちがうだろ!」
って言うヤツがいくらいても、
もうシャットアウトしちゃうんですよ。
防音装置はっちゃうんですよ。
そういう、なにげに言っちゃったことで、
ものすごく相手の心に響いちゃうことがあるんですよ。 |
糸井 |
は〜〜〜。 |
零士 |
「去年の何月に、あなたこういうこと言ったでしょ?」
「え? どこで? あー、はいはい」
「本当に素朴だなぁ。
ああ、こういう人なんだなって思ったの」って言ってる。
でも、それ、ウソじゃないんですよ。
「いや、あの時はさ、俺疲れてたんだよね。
本当に疲れてて、なにもしゃべりたくなかったんだよね」
「いや、それ、伝わってきた……」って。
もちろん僕がご馳走に招待したわけですよ。
ちゃんとした店で、
おいしいとかなんとか言う前に、
「なんかこうやって、しゃべらないでいられるのもさ、
それ、俺のままなんだよね……」って。
なにもしゃべってないんですよ。 |
糸井 |
(拍手)カメラマン笑っております。
ニッコニコしております(笑)。
は〜〜〜。 |
零士 |
「スーツ? これはただの鎧だ」とかね。
それは文字どおり、こんなスーツはただの鎧なんだよ、
っていう意味を、含めてるかもしれないし。
別な意味かもしれないし。
「目の前の料理なんか、どーでもいいんだ。
この空間が、俺にとっては、
すごく素に戻れるっていうか……違和感ないね」って。
それがどういう意味なのか、
そこまでは言ってないですから。 |
糸井 |
(笑)言ってないのねぇ、
相手の解釈で決まるのねぇ。 |
零士 |
でも、ウソじゃないですから。
本当に疲れててしゃべりたくないんですから。 |
糸井 |
あのさ……こんなに言っちゃっていいの? |
零士 |
あ、いいですよ。 |
糸井 |
あ、そう……。 |
零士 |
ええ。
最近それに加えてるのは。
こう……無心っていうか。 |
糸井 |
無心(笑)。 |
零士 |
「無心になれるってのは、いいよなぁ」って。 |
糸井 |
俺、今気づいたんだけど、
それって、倦怠期の夫婦を演じてるんですよね?
先の先のことですよね? |
零士 |
だから、僕らはよく
「三手先を読め、三手先にもっていけ」と言って、
間の1つ、2つをとばしちゃってるんですよ。
とばして三手先に行ってるんですよ。 |
糸井 |
そうだよね。 |
零士 |
だから、難しい相手のときに、会って早い段階で
「もう君のこと、わかってますよ」っていう流れに
もっていくってのは、そういうことですよ。 |
糸井 |
たーめになるなぁ〜。 |
零士 |
でも、あれですよ、
今回、これだけ対談の時間をとってもらったから、
みなさんに伝えられるんですよ。
これ、10分や20分の話じゃ伝わらないことなんですよ。
難しすぎて。 |
糸井 |
みんなさ、テレビとかだと時間短いから、
キャッチーなひと言が欲しいじゃないですか。
でもそれって、言ったらおしまいで……。 |
零士 |
ビールの泡をシャンパンの泡に変える言葉みたいに、
短くてパーンという言葉を
メディアは求めてますよね。 |
糸井 |
それはもうダメなんですよね。 |
零士 |
本当はダメなんですよ。
で、僕はテレビに出たりすると、
あえてみなさんにわかりやすいように……、
つまり、ホストに対するモヤモヤしたイメージを
吹っ飛ばしたいがために、
ちょっとコミカルで、
ちょっと古風なことを短時間の枠でやるしかないんです。
テレビとかは、時間の尺が決まってますから。
短めに。 |
糸井 |
テンションの高い露出ですよね。
で、零士さんの話からいろいろ拾えるんだけど、
テレビのことを「古風なこと」って、
一発で言えちゃうのも、センスだよね。
テレビは古風ですよね。 |
零士 |
古風ですよー。
古風なことをやるしかないんですよ。
それも、決まった尺度の短い時間で
パーンと行くしかないんです。 |
糸井 |
それ、テレビ局の人は案外気づいてないと思う。
テレビを“今”だと思ってるよ。 |
零士 |
いや、あれはちがいますよね。
“今”じゃないですよ。 |
糸井 |
古風ですよね。 |
零士 |
古風です。
“今”ってのは、今話してることですよ。
これは現実に進んでることですから。
いつも“今”なんですよ。
(つづく) |