HOST
いっそあのホストに訊こう!

第20夜 もう得意のアレで行くしかないですよね



糸井 たとえばさ、だれか女の子を好きになった
A君というモテない男の子がいると。
で、A君の友だちはぜったいにさ、
「オマエ、それじゃダメだよ」って言って、
「クツを替えろ」だの、「髪形を変えろ」だの、
いろいろうるさいことを言いますよね。

零士 そうそう、それなんですよ。
それがダメなんですよ。

糸井 あれで、A君が潰れるわけだ。
オーバーワークしちゃうんだ。

零士 潰れるんですよ。
ただ、そりゃあチャンピオンを目指すというか、
女にモテたいと思う以上は、多少はね……、
わざとクツや髪を汚くしとくヤツはいないですから(笑)。

糸井 臭い靴下とかね。

零士 消臭スプレーじゃなくて、
わざと悪臭スプレー吹くヤツはいないんですよ。
「こーれ、いい臭い出るんだよ、臭ぇんだコレ」
なんてね(笑)。

糸井 「俺だけの臭いだ」なんて(笑)。

零士 そーんなヤツはいないんですよ(笑)。
だから、そこらへんを、あんまり考えすぎても……。

糸井 そうだよねぇ。
まあ、清潔感だけは必要だね。

零士 それはぜったい必要ですよ。
飯だって、多少は洗ったとわかる皿に乗ってないと。
皿に口紅かなんかついてたら、そりゃイヤでしょ。
うまいのはわかってても、ちがう部分で
引いちゃうってのはあるじゃないですか。

糸井 じゃあ、ベースに必要なのは、
昔から古典的に言われているように
清潔感だけは、まず維持すると。
それから、相手がどういう女の子かということと、
自分がどういう男かということを、知る。

零士 相手と自分をよーく知らなきゃいけないです。
いくら素晴らしいナビゲーションシステムを用意しても、
衛星との距離がきちっとしてないと、
海の上走っちゃうことになりますからね(笑)。
ちょっと昔のカーナビとか。
「なーんで俺、海の上にいるんだよ、おい」なんて(笑)。
「なんで太平洋の上走ってんだよぉ〜」って。

糸井 じゃ、さて、
もう一歩、むずかしくします。
相手のことをA君が考えて、
そのリサーチでは、
「自分は相手に好かれない」という立場になっちゃったと。
どう考えても、相手の女の子が今までつきあってた男は、
みんな自分とはちがう、と。

零士 たとえば、自分よりすごい上のヤツだと。

糸井 そうそう。たとえばね。
そういうケースなんかは、キツいですよね、また。

零士 それを打破するってことですか?
それこそ、もう得意のアレで行くしかないですよね。

糸井 左フック!

零士 左フックですよ!

糸井 幻の右とか(笑)。
……それこそ(笑)。

零士 もう、死角から後頭部直撃みたいなパンチで。
ボカーンと!
ただ、それは、マグレじゃないんですよ。
自分でちゃんとそれをねらってるわけですから。

糸井 俺、こないだね、詩集を出したんですよ。
そのなかに、なんとなく自分で
気持ちが乗って書いた詩があって、
「豚の丸焼き背中にかついで」っていう詩なんです。

零士 (笑)。

糸井 女の子の家に、野を越え山を越えて、
ブタの丸焼きを担いで、
食べてほしくてやって来て、
で、女の子がいなかったんで、帰ります、
っていう詩なんですよ。
これね、なーんで書いたんだかわからないんだけど、
ちょっとカッコいいんですよ。俺にとって。

零士 いや、わかります。
左フックですよね。
だから、今糸井さんが言ってるのは、きっと、
さっきのボクサーの話で言っても、
「完璧にするということは、逆にそれは、
 完璧にした時点で、本当の手負いの狼に対して、
 自分が手負いの狼になっちゃうんですよ」って
ことなんです。

糸井 ああ……。

零士 恐怖心を振り払いながら、
あえて自ら得意技1本で挑んでくるヤツに対して、
本来なら勝てるにもかかわらず、
半端に完璧にしようとして
形をこじんまりまとめすぎちゃって、
それで、やっつけられちゃうんですよ。きっと。

糸井 つまんないルールの試合に消耗してる、と?

零士 そうなんです。
そこにハマっていくんでしょうね。
で、相手のパンチが当っちゃうところに、
自分からわざわざ回り込んじゃうんでしょうね、きっと。
それで、ドカーンとパンチ食って
やられちゃうんですよ。
俺、そうとしか考えられないですよ。

糸井 でも、ほとんどの今の若い男の子って、そうでしょ?
で、だんだんと試合さえしなくなりますよね。
まだ今日は練習が足りてないから、
試合はまだやらないんだ、とか。

零士 練習だけして、チャンピオンベルト巻いて
家に帰っちゃうんですよね。
しかも、自分で勝手につくったチャンピオンベルト。
非公認の(笑)。
「そんなチャンピオンベルトはないだろ?」みたいな。
自分だけのベルトして帰っちゃうんですよ(笑)。
試合しないで。

糸井 そーだよねぇ。

零士 俺、そう思いますよ。
だから今言った、その……
本当の手負いの狼的な部分が
なくなっちゃってるんですよね。
もっとあっていいと思うんですよ、俺は。

(つづく)

2000-06-30-FRI

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