糸井 |
本当の手負いの狼的な部分ってことで、
たとえば零士さんだって、
10代の頃とんちんかんな格好して、
東京に出てきて浮きに浮きまくってた話を
平気でできてるじゃないですか。
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零士 |
ええ。
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糸井 |
それ、若い子、できないですよね。
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零士 |
たぶん、できないでしょうね。
当時の僕は大まじめで行ってたんですから、東京に。
でも、浮いてることに自分で気づいて、直して……。
でも、その経験はエピソードとして
自分に誇りをもっていて、
「だから今があるんだ」っていうね。
だから、さっきちょっと出た話で、
“難しい相手”に遭遇しても、
その時こそ自分の得意技で行くしかないですよね。
あえて、まとめる必要ないですよね。
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糸井 |
でもさ、自分の得意技がなんなのか
自分が知ることって、
本当はなかなかできないですよね。
むずかしいんじゃないかなぁ。
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零士 |
だからいつも
「自分はなーにを考えてるんだろう?」
「自分はどれだけ異性のことを考えてるんだろう?」
とか、考えるんですよね。
「考えちゃいけない」って決まりないですから。
「私いっつも、男のことばっかり考えてるのよね」とか、
「俺っていっつも女のことばっかり考えてるんだよ」と。
それって悪いと言えることじゃないですよね。
はっきり言って、
「ああ、すごくいいんじゃない!」って、思う。
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糸井 |
実際に、若いときなんて、
そればっかり考えてますよね。
俺、そうだったもん。
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零士 |
そればっかでいいんですよ。
変にまとめなくていいんですよ。
で、若いうちからうまくまとめようとしたヤツは、
だいたい、そうですね……25歳で、
もう昔話始めちゃうんですよね。
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糸井 |
はぁ〜〜〜。
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零士 |
「俺が若いときはさぁ……」って、
オマエまだ若いだろ!って(笑)。
「昔は渋谷センター街でブイブイ言わせちゃって、
まあ、当時はねぇ……」って、
オマエ、それ最近だろ!
「当時、俺の名は通ってたよ」なんてね(笑)。
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糸井 |
そういう子、店の面接に来ますか?
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零士 |
来るんですよ。
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糸井 |
そういうとき、零士さん、なんて言うの?
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零士 |
いや、もう、だいたいそういう人は……、
夢を語ってて目が爛々としてるんだったら
いいんですけど、
もうだいたい死んだ目しちゃってるんですよ。
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糸井 |
はぁ〜〜、終わってるんだ?
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零士 |
たとえば、僕が昔話をしても、たぶん、
目が爛々としてると思うんですよ。
「昔やったことは今の自分のルーツで、
これからもっと行くんですよ!」
という感じが相手に伝わると思うんですよ。
でも、そうじゃない昔話をするヤツには、
「だからなに?」ってなっちゃうんですよ。
女性はもっとすごいです。
「俺って昔さぁ、ああで、こうで……」なんて
自分だけ楽しくて、自分だけウケてるような
そんな話を男が女にしても、
女は「だからなに?」で終わりっていうね。
その時点で、まあ10歩のうち、6歩、7歩は
引いちゃいますよ。
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糸井 |
そういえば、しないほうがいい自慢話をして
失敗するヤツっていっぱいいるよね。
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零士 |
いっぱいいるんですよ。
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糸井 |
自慢話ってのも、ひとつキーですよね。
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零士 |
俺がよく使うのは、さっきの話題で言うと、
自分より上に見える男とつきあってきた女に対しては、
「俺は、こんななんだけど」ってことを
まず最初に明確に示すことですね。
「わぁ素敵……」って思うんですよ、人間として。
「俺はこんななんだけど、こういうことが好きだよ、
こういうことができるよ」って言う。
それって誇りですからね。
自慢も、誇りのある自慢もあるんですよ。
なんか立証できないような、ただのへんな自慢話とは、
ぜんぜんちがいますからね。
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糸井 |
ああ、「カネ持ってるぞ!」とか、
「クルマいいの乗ってるぞ!」とか……。
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零士 |
そういう話にしても、
「僕はこのクルマが好きだから……、
このクルマ高いかもしれないけど、そうじゃないんだ。
僕が乗ってるこのクルマには、こういう歴史とか、
思い出があって、それで大事にしてるんだよ。
あなたにとって、そういう物ってない?」って訊く。
相手の女性は、話し始めますよね。
だから、自分だけ自慢するんじゃなくて、
相手の女性に自慢させるんです。
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糸井 |
はぁ〜〜。
相手に自慢させる面積を残しておくんだ?
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零士 |
そうなんです。
だから、自慢話をするには、自分に誇りがあって、
相手にも誇らせなきゃいけないんです。
誇りがあるはずなんです。
それを自分だけが言うと、
「そんなもんアタシはないわよ!」とかね、
「自分の自慢話ばっかりして!」ってなるでしょ。
なると思うんですよ。おそらく。
だったら、女に言わせないとダメですよ、自慢話を。
たとえば、僕ら若い世代にとっても、
なんか、そういう物ってあるでしょ。
たとえば、フェラーリに乗ってたとしても、
「みんなフェラーリ、フェラーリって言うけれども、
実は僕はこのシフトレバーが好きなんだ、これが。
このアルミのシフトレバーが好きなんだよ」と。
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糸井 |
俺は焼き肉ではレバーが好きだ!
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零士 |
……(笑)。
「でも、クルマなんかまあいいじゃん、なんちゃってー」
なんて自分からアホなこと言って。
で、自分の核の部分を明確に示しておきながら、
相手の誇りとか、自慢話をしゃべらせるのもいいし。
やっちゃいけないことって、ないと思うんですよ、俺。
でも、それなりにちゃんと裏付けがないと、やっぱり。
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糸井 |
けっこうまともな話ですねぇ。
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零士 |
まともなんですよ。
いい加減に考えてるんだったら、
最初からいい加減にしてたほうがいいですよ。
中途半端はよくないですよ。
マニュアルどおりは、いい加減ですよ。
自分で考えてないですから。
(つづく) |