糸井 |
また新しい質問なんですけど、
「おもしろいとモテる」と
男の子が思ってた時期があって、
笑いの方向にどんどん行きましたよね。
合コンだとか、飲み会なんかでも。
あの傾向って今もまだ続いてるんですか? |
零士 |
あの……おもしろいというのも、
それだけを追求していっちゃうと
結局は万人受けするような
おもしろさになると思うんですよ。きっと。
それって、ある特定の人におもしろがられることを
貫いてるヤツのほうが、逆に、
おもしろいときがあるじゃないですか、お笑いって。
鼻の穴に豆入れて、ポンポン飛ばす人が、
そればっかりやってたら、なんかおもしろくなってきたり。
たとえば、春一番さんが、
アントニオ猪木のモノマネだけで通したり。
あの人が出てきたら「猪木だ!」と思いますよね。
いきなりコックの格好してきても、
きっと猪木のモノマネやるんだろうな、とかね。
で、その前に、いろんなキャラの濃い人が
いろんな芸をやっても、最後にあの人が出てきたら、
「1、2、3、ダーッ!」で結局、
「じゃ、よきところで」って解散になっちゃうんですよ。 |
糸井 |
左フック一発ですよね? |
零士 |
一発ですよ。
オールマイティーじゃなくていいと思うんですよ。 |
糸井 |
あれが一発ってものか! |
零士 |
で、まともな顔してやってるし、
出てくるときには、なんかオカシイというか、
……面白いんじゃなくて、なんかオカシイというのを
売り物にしてるんですよね。
でも、オカシイの裏側を見ると、
ちゃんとやってるってことですから、
ワンセットで見せてるんですよね。 |
糸井 |
は〜、環境ごと売ってるよね。あの人ね。 |
零士 |
そうなんですよ。
俺、実際見たんですよ。
あるクラブに行ったときに、
名だたる有名人がいたんですけど、
そこにひょっこり春さんがいたんですよ。
「おっ、春一番だ!」なんて、周りの人が言うんですよ。
そこで、もうウケてるんですよ。 |
糸井 |
「やって、やって」だよね。 |
零士 |
で、最後に出てきて、
「では、ワタクシ……みなさん、わかってますね
……いくぞーっ!」って(笑)。
「ダーッ!」ってやって、
「はい、解散」で終わりですよ。 |
糸井 |
最後にさらっちゃったんだ? |
零士 |
さらっちゃったんですよ。
それと同じで、
万人に向けちゃうお笑いっていうのは、
結局は保守的なんですよね。
その時点で、もう負けてると思うんですよ。 |
糸井 |
モテ道ってやっぱ保守的じゃダメなんだね? |
零士 |
ダメだと思いますよ、俺は。
ただ、ちゃんと線は引いてくれよ、と。
自分のことを、人を鏡にして映して知るのもよし、
上の備え付けたもうひとつの自分のカメラで
自分を見て、自分の位置を確認する、
そういうナビゲーションシステム的な
感覚だけはもってくれよ、と。
つまり、人のせいにするなよ、と。
人の話に乗ったり、ネタとして使っておきながら、
人のせいにするヤツっているじゃないですか。
俺、そういうのはずるいと思うんですよ。
たとえば、この対談を読んで、
僕にいろんな質問のメールをくれた人たちが、
「いや、零士が、ああ言ったから、こうしたんだ」と、
そういうふうなずるいヤツになってほしくないですね。
男も女も。 |
糸井 |
もうひとつなんですけど、
“女の色気”と、“男の色気”って言いますよね。
で、色気という言葉ってものすごくあいまいで、
みんな基準がちがいそうなんだけど、
色気ってなんなんでしょう? |
零士 |
さっき話が出た、山崎まさよしさん、
色気、ありますよね。
でも、なにかわからないですよね。
「なにがいいんだろ?」と最初は思うわけですよ。
なんか……この人って、
歌書いて歌ってる人なんだよね……、
でもなんか、目に残るんですよね。
歌が死ぬほどうまいとか、なんとかっていうよりも、
なんかねぇ、しみこんでくるっていうか、
……あれは色気なんですよ。
100パーセント色気なんですけど、
なんでアレが出てくるのか……? |
糸井 |
僕は、色気ってことについては、
前から知りたいなと思って考えてたんだけど、
ひとつ鍵があって、
それは“恥”じゃないかなと。 |
零士 |
いやいや、そうそう、だからそうなんですよ。
僕らは恥をかきたくないから、
色気をつぶすんですよ。
で、身振り手振りで派手にやるわけですよ、こうやって。
「わかるかオイ、わかるか? わかっただろ」って。
それで「カッコいい!」って言われたい。
「カッコいいなー、まとめていったよアイツ」って。 |
糸井 |
うんうん。
その恥とさ、もうひとつそれの裏に、
「もう恥ずかしくてしょうがない」
という恥がありますよね。 |
零士 |
だから、僕らはそれも打破したいから、
脚を使って機敏に動いて、寝ないで時間使って、
さっき言ったように、
相手の女性に時間を感じさせないというのも
結局は恥をさらしたくないからですね。 |
糸井 |
零士さんって、根っこは恥ずかしがり屋ですよね。 |
零士 |
だと思いますよ、根っこは恥ずかしがり屋ですよ。
顔も赤くなるし、
誰かとすごく目も合わせづらいという時もあるけど、
だからこそ、あえて色気をすっ飛ばしてでも、
動いて、時間使って……タフでマメというところに
行くんですよ。 |
糸井 |
それほど恥ずかしさが強いとも言えるんだ?
(つづく) |