糸井 |
じゃ、最後に……。
今までだいたい質問にからんだことを
いっぱいしゃべったんですけど、
とくに答えてみたい質問とか、ありますか? |
零士 |
ありましたねぇ僕には、ひじょうに。 |
糸井 |
それを、ぜひ。
性がらみのことは、
あんまりしゃべってなかったですね。 |
零士 |
セックスですか? |
糸井 |
ええ。
そのあたり、けっこう質問があったんで。
あの、なかには、種馬のようにヤリまくってると
思ってる人もいますよね。
そのへんって、現実のホストはどんな感じなんですか? |
零士 |
あの……セックスというのは、
基本的にはその、肉体的な満足感と、
精神的な満足感があると思うんですよね。
で、あの……セックスを売り物にするということは、
ひじょうに難しいと思うんですよね。
精神的な満足感を与えるには、
べつにセックスじゃなくても、
ほかのものでも、いっぱいあるわけですよ。
肉体的な満足感を与えるよりも、
精神的な満足感を与えるほうが、
ホストとしては、大切なんです。
ずーっと対談してきたことは、
結局はそういうことなんですよ。 |
糸井 |
そうですよねぇ。 |
零士 |
たとえば今、
「あー、おもしろかった!」と言って、
この対談の後、スタッフのみなさんで
お茶を飲むなり、酒を飲むなりしてもらうためには、
精神的な満足感を感じてもらったほうが、
質が高いんですよね。 |
糸井 |
性をコントロールするってのは、
暴力なんかに近いんですかね? |
零士 |
ええ、そうなんです。
だから、そっちのほうに走っていくと、
もう尺が決まっちゃうんですよね。尺度が。
幅が決まっちゃうんですよ。
で、夢を売っているホストが
幅が決まっちゃうようなことに走ったら、
夢じゃなくて現実になっちゃって、
もうみんな斜めに傾いちゃうんですよ。 |
糸井 |
走っちゃう人もいるでしょ、やっぱり。 |
零士 |
たまに、手段として、走る人はいますよね。
ま、正直言って、ぶっちゃけた言い方したら、
「お客さんと寝ちゃって、どうこうして、
そういうふうにヤリまくってるホストが、
ナンバーワンなんじゃないか?」という
イメージが先行してるんじゃないですか。
でも、それは幅が決まっちゃってますから。 |
糸井 |
つまり、精神的な満足への可能性の芽を
ぜんぶつぶしちゃって、
ある一直線の道だけを走ってるということになると? |
零士 |
そうです。
かけ算じゃないんです。たし算ですよね、それは。
僕はたし算求めてこの世界に入ってないですから。 |
糸井 |
あと、研究のしようがないですよね、
その道ってね、根本的にはね。 |
零士 |
そうでしょ。
だから、上に行く人ってのは、
そのことじゃなくて、ちがう方法で行ってるわけですよ。
精神的な満足感を与えるには、
どうすりゃいいんだろう?って知恵をしぼるんです。
で、工夫するんです。
だから“研究”と書いて“どりょく”と読む、みたいな。 |
糸井 |
(笑)なんだよ〜それ?
研究と書いて、どりょくと読む。 |
零士 |
ええ。
血と汗と涙の結晶とか、
そういうことを言ってるうちは、まだまだです。
結局、肉体的に動かす、どうのこうのって、
イメージ自体がもうまちがってますよね。
血と汗と涙は、もう当たり前ですから。
そこから一歩上のことをやらないと。 |
糸井 |
やっぱり性でどうのこうのというのは
暴力に近いですよね。
殴っていうことをきかせるってのと
パターンとしては同じですよね。
長続きもしないし。 |
零士 |
しないんです。 |
糸井 |
もっとすごいヤツも出てくるしね。
病気みたいにすごいヤツが出てきたらもうお終いですよね。
あと、なんだろ、性を考える時間は長くても
性そのものに関わってる時間は短いですよね。
100時間ないですもんね。 |
零士 |
そこなんですよ。
ちょっとしかないんですよ。
もっとぶっちゃけた話は、たとえば、
「5万円でセックスできます」と。
で、裸になって、じゃあ、っていたして、
5万円払うってなると、終わったあと、
「なんか高かったかな……」と思うんですよ。 |
糸井 |
はあ……。 |
零士 |
ところが、たとえば、2時間あったら、
1時間50分しゃべって、あとの10分で
チャチャっとしちゃって、
そうすると逆に、「また行きたい」と思うんですよ。 |
糸井 |
はぁ〜〜。 |
零士 |
だから、さっき、僕が最初に話したことで、
長い話を時間を感じさせないで、
しゃべることができたら、
それは、モテる秘けつですよと。
時間を感じさせない、というのは。
そこでも話がつながるんですよ、ぜんぶ。 |
糸井 |
読んでる人、飽きてないだろうね、まさか(笑)。
俺ら、すごーく、おもしろがってるけどね。
こういう話、読んでる人はどうでしょうね?
おもしろいのかなぁ?
(つづく) |