零士 |
長い時間しゃべってきましたけど、
これだけ十分に話す時間をもらえれば、
こっちの言ってることは読者に伝わると思います。
中途半端なヤツがでてくると、
「まーたなに言ってんの、この人!」と
思うかもしれませんが、
一応、僕が出てきた以上、
ここで話してることは本当のことですから。
でも、ひじょうに簡単で、当たり前のことを
しゃべってきたんですよ。 |
糸井 |
そうなんだよねー。
本当は簡単なことなんだろうけど、
人はついちがう方向に考えがちですよね。 |
零士 |
だからそっちに行くのを、うまくこう、
止めてあげたいという思いが強くて……。
だから今日こうして対談してるんですけど。
「そこから先に行っちゃわないで」と、
「メールで質問してくれたことの先に
行かないで、もどってくれ」と。
糸井:
“研究と書いて、どりょく(努力)と読む”。
モテたいというテーマって、
研究できるから話が広がっていくんだもんなぁ。 |
零士 |
そうなんです。
若い人は特に、自分の位置を見ておかないと、
なにげにヒツジの群れと同じように動いてるんですよ。
それよりは、ヒツジの群れを仕切る、
牧羊犬になってほしいですね。 |
糸井 |
それは、零士さんは
自分でやってきたという自信があるんだよね。 |
零士 |
あの牧羊犬もきっと責任感もってやってるんですよ。
誇りをもって。 |
糸井 |
零士さん、なんか……、
ホストという呼び方を変えたいんだって? |
零士 |
そーなんですよ。
なにか僕らの仕事を、ホストという言い方以外に……。
まあ「ホストクラブ」がありますよね、
これって水商売のなかでの
男の世界では最高の地位なんですよ。
いわば、パイロットで言ったら、
戦闘機のパイロットなんですよ。
で、ホストクラブの別な言い方としては
「ボーイズバー」とか「ホストパブ」とか、
いろいろあるんですよね。
「ボーイズバー」はちょっと暗いとか、怪しいとか、
そういうイメージを感じるんですよ。
で、僕がたどりついたのは「ボーイズクラブ」。
……今のところ、これ以上の言葉がないんですよ。
募集したいんですよ、俺。
ホストに代わる言い方を。 |
糸井 |
でも、“ボーイズ”って言うと、
ちょっとゲイな感じがしますよね。 |
零士 |
それがあるんですよー。
だから、「ボーイズクラブ」、いいんですけど、
いまいちピントがきてないんですよ。
「ボーイズバー」って言うと、
「それ、ホスト予備軍だろ?」って感覚です。
「パブ」とか「サパー」ってのもあって、
サパ男(さぱお)って言い方の人もいますけど、
やっぱり、ホストはホストなんですよ。 |
糸井 |
呼び方については時間がかかるよねぇ。 |
零士 |
ええ。
ホストが増えていってる今、
先のことを考えると、名称を変えたいと思うんですよ。
で、僕らの世界で……、なぜ歌舞伎町で
今これだけホストが増え続けているかというと、
タテ社会だからなんですよ、基本的には。
体育会系なんですよ。
そうじゃないと、ご法度ごとが守れないんですよ。 |
糸井 |
零士さんの店のホームページで
男の人の写真紹介を見ると、
みんな坊主頭にしたら
甲子園球児の顔してますよね。
運動部の顔ですよね。 |
零士 |
わかりました? やっぱり?
タテ社会、体育会系じゃないと、
秩序が守れないんですよ。
女がからんじゃうと。 |
糸井 |
目先の欲望で動いちゃうんだ? |
零士 |
ええ。
今、俺がこうやって2時間かけてしゃべってるのを
聞いてるときは、わかるんですよ。
でも、現場になったらやっぱり、走るんですよ。 |
糸井 |
そうだろうねぇ。 |
零士 |
で、秩序とモラルを守らせるためには、
体育会系で縛るしかないんですよ。
30人で派閥をつくらずに、30人で店を動かす場合はね。
それが50人になったら、割ったほうがいいんです。
だから、そういう意味で、
我々はこれだけちゃんとやっているわけですよ。
まあ、もーのすごく厳しい世界ですよ。
で、みなさんが思ってるよりは、
めちゃくちゃ厳しい世界なのに、“ホスト”って言うと、
たとえば、昔、体育会系でがんばってきたお父さんが、
「なに? ホスト!?」ってマイナスイメージで言うのが
僕はすごく残念なんですよ。
そういうんじゃないんですって!
俺たち相撲部屋みたいな感じで がんばってるんですよ。
もう、めちゃくちゃにしごかれるし、
時には本当にブッ飛ばされてますからね。
仕事で酒飲んでも、ヘベレケになってても、
ミスはミスで怒られますから。
すごい厳しいですよ。
(つづく) |