某日。いや、11月28日。
新しいオフィスに、乗組員全員が出社した。
はじめての全員ミーティング。
まだ机やイスが不ぞろいなので
立ったままで輪になる。
「おはようございます!」
輪の中央に立つのは引っ越し大臣、中林である。
「今日から新しいオフィスです!
いろいろと不慣れなこともあるかと思いますが
よろしくお願いします!」
「よろしくお願いしまーす!」
挨拶のあとは、全員で引っ越し大臣のあとについて
新しいオフィスの施設の説明である。
なにしろ、ほとんどの乗組員がまだ
自分の職場の間取りを把握していない。
ぞろぞろと大臣のあとに続く乗組員たち。
もちろん、荷物はまだ片づいていない。
「ここは机を入れて会議室としてつかいます。
全員ミーティングはここでやります」
「あとでカードキーを渡しますので、
ここでセキュリティーを解除してください」
「ここはカフェスペースになります。
ご飯などはここで‥‥」
「こっちはなに?」
「あ、多目的スペース?」
「あ、和室、ここにあった!」
「陽当たりいいねー」
「こっちはなに?」
「こっちは‥‥?」
新しいオフィスを、
それぞれに散策する乗組員たち。
とりあえず、まだ慣れないけれど‥‥。
糸井事務所は青山に引っ越してきたのだ。
夕方になると、
新しいオフィスに新しい名刺が届いた。
そう、東京糸井重里事務所が世界に誇る、
「なぜか穴の空いた名刺」である。
我先にと、自分の名刺をとっていく乗組員たち。
なぜだかしらないけれど、新しい名刺って、
ちょっと、うれしいのである。
そう、糸井重里にとっても、
なんか妙にうれしいのである。
そうそう、
糸井重里発案による新しいオフィスのシンボル、
「ベンチ」も完成した。
なんとこのベンチは古い家の一部を再利用したもの。
その長さ、約3.5メートル! 長い!
ひとりで座るとこんな感じ。長い!
ふたりで座っても、まだまだ長い!
3人座っても、4人座っても‥‥
そのあたりは、はしょってしまって‥‥。
9人座ってようやくいっぱいになる感じ。
意味なく、こっちを向いてもらいました。
ともあれ、いろいろとばたばたして、
ひじょうにたいへんだったのだけれども、
東京糸井重里事務所は引っ越した。
魚籃坂から、青山へと引っ越してきた。
ここでどのように過ごすのか、
ここからなにがはじまるのか、
よくわからない。誰も知らない。
けれども、前途の陽光を信じ、
乗組員たちは、ひとりひとり、
自分の荷物をほどくのである。
まあ、でも、大丈夫なんじゃないだろうか、
と、引っ越し大臣、中林は思った。
なぜなら、新しいオフィスにも、
幸運を呼ぶ「引っ越しの妖精」が現れたからである。
(おしまい。)
2005-12-02-FRI
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