
- わたしの祖父の弟さんは、鉄道の職員でした。
戦争中に鉄道の事故で亡くなったそうです。
結婚したばかりだったおばさんは、
悲しくて毎晩お墓の前で泣いていたそうです。 - 戦争が終わり、おばさんは再婚します。
昔の田舎の話ですから、
恋愛結婚ではなく
お見合いだったのではないかな、と思います。 - 毎年お正月になると、
再婚相手とおばさんとで
祖父の家に挨拶にきたそうです。 - ある年、
いつものように二人が挨拶に来ていたときに、
ふだん温厚な祖父が顔を真っ赤にして
「刀を持ってこい!!」と怒鳴ったそうです。
ものすごい剣幕で、
家族全員が驚いたほどでした。 - 祖父は、再婚相手がおばさんに言った
「こんな子どもを生めない女」という一言に、
猛烈に怒ったんです。
その帰り道、おばさんは
再婚相手にたくさん殴られたそうです。
相手は陸軍出身で、
諜報員の訓練を受けていた人でした。 - 母がわたしにこの話をしてくれたとき、
戦争でひどい目に合うのは女だと言ってました。 - ちいさいころに数回だけあったことのある
物静かなあの女性を
勝手に不幸ときめつけたくはないのですが、
夏が近くなり戦争の話を見聞きすると、
いつもこの話を思い出します。 - (匿名さん)
2025-09-03-WED

