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読者のみなさんから届いたお便り #44

 
太平洋戦争の記憶としては遠回りですが、
祖父の話です。
「終戦があと1か月遅かったら、じいちゃんも戦争に行ってたんや。
そしたら、お前のお父ちゃんも生まれてなかったなあ」
父によると「めちゃくちゃ怖かったで」という祖父は、
初孫であるわたしからすると
怒っている姿などまるで見当もつかず、
この話も冗談めかしていたので深刻には聞こえませんでした。
ただ、わたしが物心ついた時から祖父は片足でした。
右の太ももから先がなく、義足を使っていました。
「若いころ、工場で働いてるときに機械に巻き込まれてん」
てっきり戦後になって起きた事故とばかり思っていたのですが、
年齢から逆算すると終戦の前の年でした。
祖父自身が明確に言ったわけではないのですが、
片足を失った人間が戦場に派遣されたらどうなるか。
実際の戦場がどれほど凄惨なのかは想像もつきません。
が、「総力戦」の名の下で祖父に召集がかかった経緯は、
大人になった今では容易に想像がつきます。
あの「お前のお父ちゃんも生まれてなかったなあ」には、
そういう意味も含まれていたのでしょう。
一見して遠回りで些細なエピソードでも
あの戦争につながっていることはあって、
自分で手繰ってみると
実感を持って迫ってくるものだなと思います。
(蟹王子)

2025-09-23-TUE

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    特集 50/80 ヴェトナム戦争と太平洋戦争の記憶