
2011年にその面白さに目覚めて以来、
あちこちの盆踊りの大会に
年100回以上(!)通いながら、
「盆バサダー」として活動されているのが、
佐藤智彦さん(大ちゃん)です。
盆踊りイベントの運営や企画をしたり、
曲の発掘をしたり、団体の指導をしたり、
盆踊りの本を出されたりもしています。
参加して、踊って、地域の方々とも交流して、
とにかく盆踊りにものすごい熱を
ずっと注ぎ続けている大ちゃんさんに、
盆踊りの魅力を味わい、たのしんでいくための、
超基本的なお話を聞いてみましたよ。
資料協力:TABITABI郡上
佐藤智彦(大ちゃん)
1972年、神奈川県川崎市生まれ。
インテリア雑貨、キッチンウェアの販売や
店舗経営、マーケティングを経て、2010年に独立。
フリーランスで企業の広報・執筆活動をおこなう。
2011年夏に盆踊りの世界に目覚め、盆オドラー化。
例年国内外100か所以上の盆踊りに参加。
大柄の見た目から、踊り仲間に
「大ちゃん」と呼ばれる。
自称「盆バサダー®(盆踊りアンバサダー)」として、
盆踊りの楽しさを世に広めるべく奮闘中。
現在は、東京と岐阜・郡上八幡の二拠点生活中。
- ──
- 盆踊りって、あんまり「ハマるもの」という
イメージがないんですけど。
- 大ちゃん
- そうですよね。
でも盆踊りって、おそらく町や自治体の数だけあるんです。
すごく小さいものまで含めれば、
意外と近所の公園とか神社の境内とか、
商店街を通行止めにしてとかやってて。 - 情報も町会の掲示板くらいだったり、
終わったらすぐ片付けたり、気にしてないと
やってることにも気がつかないんですけど、
そういう超ローカルな盆踊りを気にしはじめて、
いろんな地域の盆踊りに行くと、すごく楽しくて。 - 場所によって雰囲気も曲もみんな違うし、
地方なら、そこの食事とかお酒とかも楽しめる。
人と人との交流があるのも大きいですね。
実際に参加しないとわからない良さがあるんです。
- ──
- やっぱりあちこちで全然違うんですか。
- 大ちゃん
- 全然違います。
- 東京だと、CDなどの音源を流して、
そこに太鼓だけ入れたりとかが多いんですが、
地方は伝統があり、歴史的背景があって、
基本的に生唄、生演奏で、
何百年と受け継がれてる盆踊りが多いので。
そこはやっぱり魅力ですよね。 - 人に依存する部分がすごく大きいから、
高齢化で継続が難しかったり、
コロナで休止したまま復活できずに
なくなったりしてるところも最近多いんですけど。 - しかも僕は盆踊りをきっかけに、
日本の地方の魅力にあらためて気づいた感じもあって。 - 日本のまだ行ったことない場所とかに
地域の盆踊りも含めて旅をすることが
生きがいみたいに、意識が変わっちゃったんです。
- ──
- じゃあ盆踊りは、地方がおすすめ?
- 大ちゃん
- いえ、盆踊りの歴史的な背景がない東京とかも、
それはそれでまたおもしろいんです。
歴史がないからこそ、チャレンジングで、
なんでも盆踊りにしちゃうっていうか。 - たとえば愛知県も、歴史的には
盆踊りとのつながりが薄い土地ですけど、
「ダンシング・ヒーロー」を
最初に盆踊りにした土地でもあるし、
けっこうテレビの主題歌やヒット曲を
盆踊りで踊る流れがあるんです。
- ──
- そもそも、「盆踊り」の定義って
どのあたりにあるんでしょう?
やぐらの周りで踊るもの?
- 大ちゃん
- 基本的には、そうですね。
やぐらを組まないところもあるんですけれども。 - ただやっぱり
「みんなが輪になって踊る」のが、
だいたい原点みたいですよね。 - 1つの輪になって踊ることから生まれる、
「グルーヴ」というか「バイブス」というか、
うねり、一体感とかって、独特のパワーがありますよね。 - しかも盆踊りは基本的にみんな同じ振りつけ、
同じタイミングで一緒に踊るじゃないですか。
これって世界的にもあんまりないんですよ。 - そういう「自分も祭りを構成するひとつになってる」
みたいな感覚がやっぱり盆踊りの
最大の魅力なんじゃないかと思うんですよね。
- ──
- 盆踊りって、日本舞踊とかとは
またルーツが全然違うんですか?
- 大ちゃん
- 日本舞踊はわりと舞台の上で踊りますし、
華やかな動きが多かったり、
所作的にも手をしなを作るような動きがあったり、
いわゆる「人に見せる」ような踊りが多いんです。 - 一方で盆踊りは農民の文化から出てきてて、
農耕の作業とつながる動きも多いんですね。
田畑を耕す動作、稲を藁にするためにこよる動作、
脱穀の動作だとか。
海の地方だと、帆をあげる動作や
網ひきを表す動作も多くて。
- ──
- へぇー。
- 大ちゃん
- ただ、もとはそういう動きが
ルーツの踊りだけれども、
いまはそこに日本舞踊の人のディレクションとかが入って、
洗練された感じになってる例もありますね。 - たとえば、富山県八尾の「おわら風の盆」は
日本を代表する盆踊りのひとつですけど、
そういう部分がちょっとあるんですよ。
- ──
- あ、そうなんですか。
- 大ちゃん
- はい。また「おわら風の盆」について言うと、
現地の11の町が支部になってるんですが、
それぞれ踊りのタイミングや、演奏、
歌詞の内容が微妙に違ったりするんですよね。
- 大ちゃん
- そんなふうに、同じ踊りでもちょっとずつ違うのも
盆踊りの魅力だとも思うんですよね。
日本舞踊から話が少しそれちゃいましたけど。
- ──
- 「日本三大盆踊り」という言い方を
聞いたことがあるんですけど、
それはどこのものになるんでしょう?
- 大ちゃん
- 日本三大盆踊りとしては、
徳島県の「阿波(あわ)おどり」、
秋田県の「西馬音内(にしもない)盆踊り」、
岐阜県の「郡上(ぐじょう)おどり」というのが
よく言われますね。 - 特に「西馬音内盆踊り」と「郡上おどり」は、
近年ユネスコの世界遺産に登録されて、
世界的にも注目されているんです。
- ──
- 阿波おどり、西馬音内盆踊り、郡上おどり。
- 大ちゃん
- それぞれに特色があって、
「阿波おどり」は基本的に
「連(れん)」っていう団体で踊るのを見る盆踊り。 - 「西馬音内盆踊り」は、特殊な衣装を身にまとって、
美しい踊りをする人を見る盆踊り。
- 大ちゃん
- 「郡上おどり」は、
見るんじゃなくて参加する盆踊り。
もともと岐阜県の郡上で、お城の城主が
「盆の4日間は士農工商の区別なく、
みんなで盆踊りを踊ったほうがいい」
と奨励したという言い伝えがあって。 - 今に至るまで400年以上、
「誰もが参加して踊る踊り」として
続いてきたと言われています。 - そういう歴史があるから、郡上の人々って
シーズンには30日以上踊っていて、
なおかつ誰もが参加できるから、
ほかの2つのとはすごく違う感じなんですよね。
- ──
- 盆踊り、せっかくなら参加するときに
うまく踊りたいなと思うんですけど、
大ちゃんさんから見て
「うまい人」と「下手な人」の違いって、
どこになるんでしょう?
- 大ちゃん
- そうですね、もちろん僕が見ても
「あの人はうまいなあ」って人もいれば、
「うまいとはいいにくいかもね」という人もいます。 - ただ、基本的に盆踊りは、見せるというより
自分たちが楽しむ踊りなので、
楽しむことがなにより大事かなと思うんです。
まれにコンテストをやってるとこもありますけど、
もともとは比べるものじゃないので。 - ただ「うまく踊りたいな」って気持ちはありますよね。
- ──
- そうなんです。
- 大ちゃん
- それで言うと、やっぱりうまい人は、
無駄な動きがなくて、踊り込んでいるというか。
ちゃんと体を動かせてて、清々しい。
そういう人を僕はうまいなと感じますね。 - 逆に、踊りにあまり体がなじんでなくて、
タイミングがずれてたり、
大げさに踊りすぎて変に目立ってたりする人は、
ちょっとうまく見えにくいかもしれない。
もちろんそういう踊りが好きでやってる人もいるので、
なんとも言えないんですけど。
- ──
- ああー。
- 大ちゃん
- まあ「こう踊るといい」があるとしたら、
基本的にみんなで踊るものなので、
ほかの人の邪魔にならないようにすることですかね。
下がるときに下がりすぎたりすると、
周りが困るかもしれない。 - あと、その人のキャラクターにもよるというか、
たとえばコミカルな動きとかでも、
その人にすごく合ってて、見てて和む人もいるので、
うまい・下手は一概には言えなくて。 - 「場にそぐわない踊りをしてないかどうか」
「踊りがその人に合ってるか」あたりが
大きいのかなとは思いますね。
- ──
- 盆踊りの経験が少なくて
「うまく踊れないかも」とかについて
すこし不安に思う人もいると思うんですが。
- 大ちゃん
- そうですよね。僕も最初そうでしたけど、
あまりにみんなが激しく踊ってたりとかすると、
「輪に入っていいのかな‥‥」とか
ちょっと戸惑うと思うんです。 - そのときは、コツでもないですけど、
まずは一番外側の輪から入るのがいいと思いますね。
やぐらであったりやぐらの一番内側は、
その盆踊りの主催者だったり、町会の人だったり、
いわゆる手本となる人が踊ってることが多いので。 - 基本的には曲が終わったタイミングで入るといいと思います。
混んでるときなら
「ちょっと入れさせてください」とか
ひとこと声をかけるのもいいと思います。 - また、うまそうな人がいたら、
ちょっと後ろに入って見ながら踊ると、
踊りやすくていいと思います。 - 教えたがりの人も多いので、休憩時間とかに
「これはどう踊るんですか?」と聞くと
教えてくれる人も意外と多かったりします。 - 「すみません、私この曲って初めてで、
どう踊ったらいいかちょっとわからなくて」
とか声をかけると、かけられた人もたぶん
「俺がうまいと思って声かけてくれたんだな」
とか喜ぶ人もいるだろうし。
踊ってる最中には声かけないほうがいいですけど。 - あとはモゾモゾしてると
教えてくれる人がいたりもしますよね。
(つづきます)
2026-07-16-THU
-
佐藤智彦さん(大ちゃん)の本

東京盆踊り天国
踊る・めぐる・楽しむ佐藤智彦 著
(山と渓谷社、2022)年間100か所以上で踊る
“盆オドラー”大ちゃんが案内する、
東京の盆踊り完全ガイド。もともと盆踊りの文化的背景がなかった
東京ですが、昭和期に《東京音頭》の
ヒットとともに盆踊りが大流行。
夏の間ほぼ毎晩どこかで
盆踊りが行われるようになりました。
「東京は唯一、全国の選りすぐりの
盆踊りが観れる場所」という視点で、
大ちゃんさんが思い入れとともに
都内の厳選78か所の魅力を
たっぷり紹介されています。
