5月31日午前11時からはじまる
「ほぼ日ストアお買いものキャンペーン2020」の
セールの売上の一部を、子どもたちのためにつかいます。
発案した糸井重里の思いをどうぞ。
寄付先となる「むすびえ」さんについても
取材しましたので、あわせてお読みください。
- ――
- 湯浅さんご自身も、実際に
「こども食堂」へ足を運ばれたことが
何度もおありになるんですよね。
- 湯浅
- もちろん、よく行きます。
- ――
- インタビューやご著書を拝読していて、
コロッケを見たことがなかった子や、
みんなで鍋を囲むという経験を
全くしたことがない子がいる、
ということを知りました。
しかもそういう子たちは、服装なども普通で、
見た目からはわからない、ということも‥‥。
実際に現場で感じた例として、
他にどのようなことがありますか。
- 湯浅
- 「コロッケを知らない子がいた」というのは、
福岡の八女市の「こども食堂」での話ですね。
あとは‥‥少し前のことですけど、
鹿児島の「こども食堂」へ行ったときに、
1人で来ている、小っちゃい子がいたんです。
たしか小学校2年生って言っていたかな。
もちろん、小学生くらいになると、
1人で来ていてもおかしくはないですけど、
その子、初めてなのに1人で来ていて、
親も送迎していなかったみたいで、
「あれ?」と思ったんです。
私、たまたま一緒のテーブルで食べていたので、
「どうしたの?」と訊いたら、
「お母さんが『行ってこい』って言った」と言うんですよ。
- ――
- お母さんが。
- 湯浅
- 「へぇ、そうなんだ。お母ちゃんが
行ってこいって言ったんだ」
という感じで聞きつつ、
こちらとしてはいろいろ考えるわけですね。
その「行ってこい」は、
どういう意味の「行ってこい」なのか。
良さそうな場所だから「行ってこい」なのか、
うちでご飯を作る余裕がなくて、
ちょっと厄介払いみたいに「行ってこい」なのか。
自分も行きたいけど、行っていいのかわからないから、
まず子どもだけ行かせてみたのか。
ありとあらゆることが考えられるわけですけど、
その子にそんなに根掘り葉掘り聞いてもね、
まだ小学校低学年ですから。
- ――
- そうですね。
- 湯浅
- 問い詰めるみたいになってもまずいし、
「ふぅん」と言うだけにしておいて、
後で「こども食堂」の人たちに共有したら、
その子に対して
「こども食堂」の人たちがどうしたかというと、
帰り際におにぎりを20個渡したんですよ。
- ――
- おにぎりを20個。
- 湯浅
- 「余っちゃったので、持ち帰ってくれるとうれしい」
と言って、その子に渡していました。
それは、たぶん親に対するメッセージだと思うんです。
もしかしたらご家庭が厳しいのかもしれない。
もしかしたら自分たちもそこに来たいんだけれど、
なんらかの理由でできないのかもしれない。
わからないけど、
「私たちは、この子の後ろにいる
あなたたちのことも気にかけてます。
歓迎してますよ」
というメッセージを、
けして押しつけがましくならないように、
さり気なく、そっと気遣っているというのは、
とっても「こども食堂」らしい関わり方だなぁと
改めて感じました。
- ――
- そういうちょっとした発言とか、
お子さんの身に付けているもの1つであったりとか、
小さなことから大人たちが想像力を働かせて、
気づけるような場所になっているということですね。
子どもに目が届く場所、という意味でも、
すごく存在意義を感じます。
- 湯浅
- 子どもに対して目を配る、ということも
もちろんなんですけど、大人同士でもそうです。
滋賀県の近江八幡市で
「こども食堂」を開いている
石田さんという人がこんなことを言っていました。
「私たちは、『こんにちは』で終わらない
地域づくりをしたくてやっているんだ」と。
私自身も自宅近くのスーパーなどで
近所の人と会うことがあるんですけど、
お互い顔見知りだからご挨拶はしますが、
「こんにちは」と言ったその後に
続ける言葉がないんですよね。
何も共有していないから、その人と。
- ――
- はい。挨拶だけの関係で。
- 湯浅
- だけど、何か一緒に共有していたら、
「こんにちは」の次の言葉が出てくる。
「そういえば、あれどうなった?」とか、
「近所のおばあちゃん最近見てないけど、
どうしたかね」とか。
石田さんが言うような
「こんにちはで終わらない地域にしたい」
という思いで
「こども食堂」をやってらっしゃる方がたくさんいます。
それは都会に限った話ではなく、実は田舎も、
今は地域交流がどんどん乏しくなっています。
だからこそ「こども食堂」のような
交流の場がもっと必要なんです。
- ――
- 最終的には、どれくらいの数が必要と
お考えなのでしょうか。
- 湯浅
- いま全国で「こども食堂」が増えているといっても、
まだ5、6の小学校に対して1つくらいの割合です。
そういう意味では多くの子にとっては
簡単にアクセスできる場所にありません。
そういうことから、現在小学校が
全国に約20,000あるので、
こども食堂も20,000軒にしたいと言ってます。
- ――
- 1つの小学校につき、
1つの「こども食堂」を。
- 湯浅
- そうです。
なかなか最近の子は学区を超えるのも大変で、
学区を超えるには、学校の許可が要ったり、
親の許可が要ったりするんですよ。
隣の学区に行くのは危ない、という理由ですけど。
ということはつまり、隣の学区に
「こども食堂」があっても、自分の学区になければ
現実的にはアクセスできない、ということがあります。
- ――
- たしかに‥‥行動範囲の中になければ、
見つけられないですし。
- 湯浅
- こういうふうに考えるのは、
経済的に大変な家庭の子だけじゃなく、
どんな子にもこういう場所があったほうがいいなと
思っているからです。
その理由のひとつは「こども食堂」に来ると、
みんな異年齢集団で遊ぶんですよ。
- ――
- 異年齢集団?
- 湯浅
- はい。小学校にあがる前の子も来ていれば、
小学校1、2年生の子もいれば、
5、6年もいれば、中学生もいる。
高校生・大学生になると、
参加者というよりボランティアとして来ていますが、
そういうお兄ちゃん・お姉ちゃんもいる。
もちろん大人もいて、
地域のおじいちゃん、おばあちゃんもいます。
そんなふうに多世代に囲まれて、
子どもが異年齢同士で遊ぶんです。
それって大事なことなんじゃないかと思っています。
私も幼いころは普通に異年齢で遊んでました。
‥‥あの、「ドロケイ」ってご存知ですか?
- ――
- あ、はい。
言い方は「ケイドロ」でしたけど、
子どものころ、よく遊んでいました。
- 湯浅
- 地域によって呼び名が違いますよね。
これ、年齢の低い子がすぐ捕まっちゃうので、
その子には、
「3回捕まるまで相手チームに取られなくていい」とか、
「5回捕まるまでOK」とか、
ルールを決めてやっていましたよね。
- ――
- はい。「ハンデ」を設定する、みたいな感じで。
- 湯浅
- そうそう。そういう子のことを、
我々は「みそっかす」とか「おみそ」と言ってまして、
地域によっては「たまご」とか
「ホウラッキョ」と呼ぶ地域もあったらしいです。
どの地域でもそういうルールを設けて遊んでいたようです。
これはどういうことかと言うと、
子どもたちは、異年齢集団で遊ぶと、
中にハンデを負った子がいるときに、
その子をそれでも排除せずに、
一緒に遊ぶ工夫をしていたということですよね。
- ――
- ああ、そうですね。
- 湯浅
- その子は年齢が低い子だったり、
もしかしたら障害のある子かもしれない。
そういういろんな子たちが交わる中で遊んでいると、
実は子どもたちは、排除せずに、
なんとかして一緒に遊ぶためにルールを工夫します。
そういう体験って、大人になって、
よりいろんな人たちと付き合えたり、
「1人も取りこぼさない社会」を作っていくためには
大事な経験なんじゃないかと思っています。
今、異年齢集団で遊ぶ機会って、
なくなってきちゃっているんです。
- ――
- たしかに‥‥。
- 湯浅
- しかも、非常に早い時期から、
私立小学校と公立小学校のようにコースが
分かれたりしていると、いよいよもって、
周りに同質的な人しかいない、
という感じになっていきます。
同じ年齢、同じ学力、同じような経済力の人ばかり
自分の周りにいるということになると、
異なる人たちと付き合えない大人になるんじゃないか、
ということを心配しています。
そういう意味でも、異年齢集団で遊ぶ経験が
大事だと思っていて、その体験を提供しているのが
「こども食堂」なんですよね。
- ――
- お話をうかがいながら、
「こども食堂」って、
自分が関わりたいと思ったときに、
すごくハードルが低い場所なんだなと感じました。
たとえば、寄付をするとか
物資を送るということのほかに、
近くの「こども食堂」を検索して、
手伝いに行く、あるいは食べに行くだけ、
みたいなこともできるわけですよね。
- 湯浅
- まさにそれが、今とても広がっている
大きな要因の1つだと思いますね。
「誰かがやることだ」と思っている人たちの何割かは、
やっぱり、「自分にはできない」と思ってる方が
いらっしゃるんです。
- ――
- どうにかしたい、と思っても
何からすればいいかわからない、という方は
とても多いと思います。
- 湯浅
- たとえば子どもの虐待に関心があっても、
「自分がその虐待家庭に入って
親子関係を調整できるか」と言われたら、
「そんなことは自分にはできない」と思うと、
「役所の人、しっかりやってね」という感じに、
多くの人はなってしまいますよね。
なかなか自分事にならないことの原因は、どこかに
「自分にはそこまでできない」
という感じがあるんだと思うんです。
「こども食堂」は、
そういう意味で手が届きやすい。
「一緒にご飯を作ることならできる」
「一緒にご飯を食べることならできる」
というふうに思ってもらえる。
その気軽さこそが、とても大事だと思います。
- ――
- 多くの人が関わっているのも、
そういうところにあるんですね。
- 湯浅
- そうなんです。
ただ、よく誤解されているんですけど、
大人の方で、
「自分が行って食べちゃうと、
必要な子の食事を1食取っちゃうことになるから
行かないほうがいいんだ」
というふうに思っている方がいるんです。
それは逆です。
- ――
- 逆なんですね。
- 湯浅
- みなさんが行って食べてくれることで、
より多くの人が行きやすい場所になる。
行くのが、経済的に困窮している家庭の子だけだと、
かえって目立ちすぎて、
みんなが行けなくなってしまいます。
ですから、いろんな人が
行ってくれることが支援になります。
これは原価計算をした人の言葉ですが、
「こども食堂」では、
大人からは料金を300~500円ほどいただくので、
「大人が10人食べてくれたら、7人の子に
無料で食べさせる食材費が出る」と言うんですよ。
そういう意味では、
行かないことが支援なんじゃなくて、
「行くこと」が支援なので、
ぜひ気軽に行って食べてもらいたいと思っています。
(つづきます。明日は緊急事態宣言明けの
「再開支援」についてです)
ほぼ日ストア
お買いもの応援キャンペーン2020
5/31(日)〜 6/19(金)
上記期間中の「セール」の
売上の一部を寄付します。
<寄付先>
NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ
※寄付総額はセール終了後に、
あらためてお知らせいたします。
直接、寄付をされたい方は
こちらからどうぞ。
むすびえ公式サイト
「こども食堂を支援したい」
「新型コロナウイルス対策緊急支援」
むすびえさんによる
クラウドファンディングのページです。
(~2020/7/31まで)
(「3」は6/2公開です。)
2020-06-01-MON