ある日、ほぼ日に届いた1通のメール。
映画館でよく目にする「映画チラシ」を
30年以上趣味で集めている方からで、
「家に3万枚ほどあるのですが、
よかったら見に来ませんか?」というお誘いでした。
映画チラシが‥‥えっ、3万枚?!
しかも、この方がすごいのは、
ただチラシを集めているわけではなく、
「俳優別」に分類したファイルをつくり、
その俳優のデビューから最新作まで
出演した全作品のチラシを集めるという、
かなり変わった収集癖をお持ちの方だったのです。
誰に見せるでもなく、趣味で集め続けた映画チラシ。
その貴重なコレクションの数々、
ご自宅におじゃまして見せていただきました!

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01 きっかけはスタジオ・ボイス

──
おぉー、ファイルがぎっしり!
Tさん
仕事がデザイン関係なので、
きちんと整理しないと気が済まなくて。
──
棚のサイズがファイルにピッタリですね。
Tさん
ファイルのサイズにあわせて、
業者さんに特注でつくってもらいました。
ファイルがあまりに増えすぎてしまって。

──
このファイルすべてに映画チラシが‥‥。
Tさん
はい。
整理していないものも含めると、
約3万枚あります。
──
3万枚‥‥。
Tさん
メールでもお伝えしましたが、
私のコレクションの特長は、
俳優別にファイリングしているところなんです。
──
リストを拝見しましたけど、
すごい数でびっくりしました。
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Tさん
男性俳優、女性俳優、
あと映画監督別もつくっていて、
現在は約340人分のファイルがあります。
──
はーっ!
Tさん
制作途中の俳優も含めるともっとあります。
メールでお見せしたリストは、
一応、ファイルが「完成」した人たちなんです。
──
ファイルが「完成」というのは、
なにをもって「完成」になるんでしょうか。
Tさん
その俳優が出演した作品のチラシを、
すべて集めることができたら完成です。
コンプリートしたら、完成。
──
出演した全作品?
Tさん
はい、チョイ役も含め、すべて。
──
おぉぉ‥‥。

Tさん
ウィキペディアなどで出演作品を検索して、
その人の作品リストを調べるようにしています。
過去のチラシに関しては、
通販サイトやオークションサイトで購入して、
できるかぎり全作品をコンプリートするというのが、
私のコレクションの特長だと思います。
──
それが340人分。
なんだか壮大なプロジェクトですね。
Tさん
いつの間にかそうなっちゃいました。
──
いつの間にか、ですか。
Tさん
どんなコレクションなのか、
実際に見てもらうのが早いと思います。
どの俳優さんからご覧になりますか。
──
ちょっといま圧倒されてしまって‥‥。
「この人から見てほしい」みたいな、
おすすめの方はいらっしゃいますか。
Tさん
おすすめ‥‥うーん。
ニコール・キッドマンはどうですか。
──
あっ、いいですね!
Tさん
この人は最初から、
わりとしっかり名前が出ている俳優なんです。
例えば、一枚目は‥‥。

──
これがデビュー作ですか?
Tさん
おそらくこれが最初の出演作で、
当時16歳だったそうです。
このあとにいくつか出演作はありますが、
それらは日本未公開なんです。
そういうのはもちろんチラシもありません。
──
なるほど。
チラシが存在するのは日本で公開されたものだけ。
Tさん
そうなんです。
ただ、7年後に出演した
『デイズ・オブ・サンダー』以降は、
ほぼすべて日本でも公開されていると思います。
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──
同じ映画なのに、
ちがうデザインもあるんですね。
Tさん
1作品1枚が基本ですが、
2パターン以上のものもけっこうあります。
その場合は、同時に配られるわけじゃなく、
時期がちょっとずれて
新しいものに入れ替わっていくんです。
最初にパターン1が出て、
その1~2か月くらいあとで
パターン2に入れ替わったりします。
なので1枚目が手に入っても油断はできません。
──
パターンちがいも集めるんですか?
Tさん
もちろん。
──
ひゃーー(笑)。
Tさん
そこがこの趣味の大変なところというか。
自分で決めたルールなんですけどね。
──
同じ映画なのに、
こんなに何種類もつくるんですね。
コピーの有無とか、顔の向きとか。
ぜんぜんちがうデザインもあれば、
ちょっとだけ修正したものがあったり。
Tさん
ニコール・キッドマンは、
とくにパターンちがいが多いかもしれません。
──
「この映画は何パターンある」とか、
そういうのはどうやって調べるんですか。
Tさん
旧作品に関しては、
ネットの情報でほぼチェックできます。
ただ、現在進行系の映画については、
実際に映画館に通いながら
自分の目でたしかめるしかないです。
だいたい2週間に1回は、
新宿とか渋谷の映画館を巡るようにしています。
──
足を使って集めるんですね。
Tさん
でも、本気でまわるようになったのは、
ここ6~7年くらいなんです。
はじめは1か月に1回くらいだったんですが、
最終的にいまのペースに落ち着きました。
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──
ファイルの並びは、古い順ですか?
Tさん
基本的に日本で公開された順に並んでいます。
──
持っていないものが手に入ったら、
また入れ替えないとですね。
Tさん
そういうこと、けっこうあります。
リバイバル上映のチラシも集めているので、
そういうのが手に入ったときは、
時系列になるように並び替えます。
──
これだけあると、けっこう大変ですね。
Tさん
まあ、そういうのもたのしいんですよ。
──
まさかとは思いますけど、
集めたチラシの映画を
全部ご覧になっているとかは‥‥?
Tさん
それはさすがに無理です。
──
そうですよね(笑)。
Tさん
映画自体にすごく詳しいかっていったら、
じつはそうでもないんです。
むしろあんまり観てないほうかも。
チラシ集めに忙しくて、
ゆっくり映画を見てるひまがない(笑)。
──
そもそもの話ですが、
どうして映画チラシを集めはじめたんですか。
Tさん
最初は集めていたという感覚はなくて、
映画館に行ったついでに、
気に入ったものをもらっていただけなんです。
そういう人、いまもいると思いますけど。
──
ここまでハマるきっかけが、
何かあったんでしょうか。
Tさん
きっかけはけっこう明確にあって、
『スタジオ・ボイス』という雑誌なんです。
じつはこれ、1996年に発行されたもので。

──
1996年って書いてるから‥‥30年前ですね。
Tさん
この号で、映画館のプログラムやチラシを、
デザインの観点から特集していたんです。
それがすごくおもしろくて、
「映画チラシってかっこいいなぁ」って。
それでちょっと真剣に集めてみようかなって。
──
その頃はどのくらい持っていたんですか。
Tさん
まだぜんぜんだったと思います。
好きなものだけをパラパラ持ってる感じでした。

──
あぁ、懐かしいですね。
『トレイン・スポッティング』といえば、
渋谷のシネマライズですね。
Tさん
自分もそこでチラシをもらいました。
当時はあんまり意識してなかったんですけど、
「スタジオ・ボイス」の特集記事を読んだとき、
はじめて「映画とデザイン」が、
自分のなかでくっついた感覚があったんです。
デザイナーになりたての時期だったので、
そういうことに敏感だったのかもしれません。
──
この雑誌がすべてのはじまり‥‥。
Tさん
はい、これが原点だと思います。

(明日につづきます)

2026-08-19-WED

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