
福森雅武さんを父に持ち、土楽の三女に生まれた
柏木円さんが磁器と出あったのは、
「土楽とはちがう、自分の作品を」と
伊賀を出て模索を続けていた頃のことでした。
たまたま、磁土でつくった小さなうつわを、
懇意にしていた京都の老舗旅館の俵屋旅館の奥さまが
「あなたは、こういうちいちゃい、
薄い、かわいいものをつくりなさい」と褒め、
水を向けてくださったのがきっかけでした。
凛(りん)としている。
すみずみまで品がいい。
繊細な筆致の染め付け──。
磁器は型でつくることが多いですが、
円さんはひとつひとつろくろでひいてつくっています。
できあがったうつわは、
磁器なのにやさしさを感じるかたちです。
食材や料理がはえる円さんの磁器は、
いまも老舗の宿や料理店で使われています。
今回、「ほぼ日」でご紹介するごはん茶碗は、
円さんがつくり続けてきた、定番的なもの。
安定の、そぎ落とされたうつくしさがあります。
土楽に育った円さんですから、
もちろん料理は「日々のこと」。
「毎日の家のごはん」に使えるやさしいうつわです。
なお、円さんは自作のお碗に
「盌」という字を使います。
「盌」は「碗」の別字。
お茶会の記録(茶会記)では
「茶盌」の字が使われます。
※電子レンジ、食器洗浄乾燥機はご使用いただけます。
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白磁輪線文飯盌(大)(小)
(大)3,080円(税込)
(小)2,530円(税込)凛とした佇まいの高台から、
上に向かってすうっと開いていく
独特のカーブがうつくしいご飯茶碗です。
品のある、ちょっとおすましな顔が、
きれいな手描きの呉須
(ごす=染付に使う青藍色の顔料)の青い線で、
かわいらしく、親しみやすくなりました。
和洋中どの料理が並ぶ食卓にも
しっくりと似合います。サイズは大と小。
大は、多めに食べたい方や大柄なかた、
小は、ごはん控えめの方や小柄なかた、
そして子どもにもぴったり。
実はこのかたち、ごはんを盛ったときに、
少ない量でもたくさんあるように感じます。
それゆえに「ダイエットにもおすすめですよ」と、
円さんはおっしゃっていました。
▲ごはん釜で炊いた白米に、
円さん作の「鮭と紫蘇の実のふりかけ」を添えて。
こんなふりかけがあると、
日々の食卓が充実しそうですね。

白磁輪線文蓋付飯盌
3,300円(税込)「白磁輪線文飯碗(小)」に
蓋がセットになったものです。
お客さまがあるとき、
ちょっとした家族のお祝いのときなど、
いつもよりきちんとした
食事の席にもぴったりですし、
いつもの食卓に
このうつわをひとつ加えただけで、
ぐっとスタイリッシュに変わる、
そんなかっこよさがあります。
蓋付きの飯碗は、その凛とした姿だけでなく、
炊きたてのごはんのあたたかさを保ち、
時間が経っても乾燥を防いで
お米のふっくら感をキープしてくれる良さがあります。
また、蓋は、あけた後に、
取り皿としても使うことができますよ。ごはん茶碗としてだけでなく、
煮物などの料理のうつわとして使うのもいいですし、
デザートを盛るのもおすすめです。

白磁蓋付輪花盌
3,300円(税込)「輪花(りんか)」とは、
縁が花びらに見えるように
かたちづくったうつわのことです。
この輪花盌のモチーフは梅の花。
縁ばかりではなく、高台、
蓋の縁と持ち手にいたるまで
輪花型がほどこされていて、
繊細な愛らしさにあふれています。
輪花型のうつわは、意匠のうつくしさだけではなく、
女性の小さな手でも安定しやすく、
小さな口の方にもよくフィットし、
使いやすいのが特徴です。
それゆえに、お茶漬けやおかゆなど、
熱く、時に直接うつわに口をつける料理を
いただくときにもおすすめ。
円さんによると、意外なところでは、
台湾の方が茶器として購入されたそうで、
器に直接茶場を入れてお湯を注いで、
蓋をして蒸らし、
飲む時は蓋を少しずらしていただく、
そんな使い方をするのだそうですよ。
もちろん、デザートを盛るのにもいいですね。
▲円さんの著作『まどかの台所』から、
「みょうがの混ぜごはん」。
油揚げ、白だし、酒を加えて炊いた白米に、
しらすと、縦にせん切りにしたみょうがを
たっぷり入れて混ぜたものです。
道歩さんの「線紋飯碗」でも同じごはんを盛りましたが、
ずいぶん印象が異なるのがおわかりでしょうか。
じつは土楽では「ごはん茶碗はひとりひとつ」
‥‥じゃないんです。
もちろん個人のものはあるのですが、
料理に合わせ、気分に合わせ、
日々、替えることもあるんですって。

細独楽小丼
3,300円(税込)呉須(青色)の線で手描きされた
細独楽(ほそこま)のどんぶりです。
上に向かってすうっと開いていく
独特のカーブがうつくしいのが特徴です。
直径15cmと、どんぶりとしては小さめの
使いやすいサイズです。
親子丼、豚丼、焼き鳥丼、天丼、
ミートソース丼、カレー丼など、
どんなに忙しい日でも
どんぶりごはんと味噌汁があれば、
それだけで満足のいく食卓になるもの。
料理の好きな円さんによると、
「どんぶりごはんといっても難しく考えず、
ごはんと一緒に食べておいしいと思うおかずと
いっしょに盛るだけでじゅうぶんですよ」。
もちろん、ごはんものだけでなく、
にゅうめんやうどん、中華粥などにもおすすめです。
▲円さん作「しら玉丼 紫蘇巻添え」。
炊き立てごはんの上に大葉をのせ、
ふわふわの釜揚げしらすをたっぷり、
そして卵黄をひとつ。
ちょっとおしょうゆをかけていただきます。卵黄に少しだけ胡麻油を垂らすと
なまぐささが消えます。
添えてあるのは、日光に暮らす
円さんの義理のお母さんが
送ってくれた紫蘇巻き(青唐辛子の醤油漬け)を
刻んだものです。
