こんにちは、ほぼ日の奥野です。
なんと「9年ぶり!」の更新となります。
TOBIさんの「ひどい目」です。
終わってなかったんですよ、この連載。
書籍化もされたし、
「HI.DO.I.ME」という曲をひっさげて
全国ツアーもして、担当としては、
すっかり終わった気持ちだったんだけど。
というのもですね、今回のエピソードは
何十年も昔の伏線が回収されて、
一本の糸につながり、
最近「ひどい目」に落ち着いた(?)話。
ま、読んでもらえたらわかります。
とにかく、みなさま、お楽しみください。

>レ・ロマネスクTOBIさん プロフィール

レ・ロマネスクTOBI

フランス・パリで結成された音楽ユニット「レ・ロマネスク」のメインボーカル。

2008年パリコレでのライブをきっかけに、世界13カ国50都市以上で公演を行う。 2011年FUJIROCK FESTIVAL出演を機に帰国。NHK Eテレ『お伝と伝じろう』のメインキャストに抜擢され、以後、精力的にシングル・アルバムを発表。音楽活動のほかにも俳優・文筆業・楽曲提供・ラジオパーソナリティなど活動の幅を広げている。

ほぼ日とのつながりは、数々の体験談をインタビュー形式でまとめた『レ・ロマネスクTOBIのひどい目。』の連載が話題となり、のちに書籍化された。今では、インタビュアーだった奥野武範が「レ・ロマネスク」のギター係をつとめている。

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第1回 カンボジアで歌を歌おう!

──
さて、今回の「ひどい目」の舞台は
パリでも日本でもなく、
「カンボジア篇」ということで、
初の東南アジア進出ですね。
世界に広がる「ひどい目」の輪! 
さっそくお願いします。
TOBI
はい、承知しました‥‥って、
待ってください。
9年ぶりの更新なんです。
出だしが素っ気なさすぎませんか。

──
ああ‥‥もう、そんなになるんですね。
めでたく書籍化され、
本業のレ・ロマネスクの活動のほうでは
関連ソング
「HI. DO. I. ME.」もリリースされてね。
TOBI
ずいぶん昔の話だけど。
──
これからお話いただく、
カンボジアの「ひどい目」については、
これまでも、
各エピソードの合間合間に
断片的に聞きかじってはいたんですが、
昨今、一本の「ひどい目」として
点と点とがつながったということなので、
本日はあらためて
「TOBIのひどい目」最新話として、
おうかがいさせていただけたらと思います。
どうぞ、よろしくお願いいたします。
TOBI
わかりました。
まず‥‥日本国際ボランティアセンター、
JVCというNPO法人があるんです。
ポル・ポト派による虐殺などで大変だった時期、
日本とカンボジアの国交が
樹立されていない時代から、
ずっと支援を続けてきた組織なんです。
──
知識人や教師や文化の担い手が、
たくさん殺されてしまったんですよね。
ポル・ポト派のときに。
TOBI
そうです。芸術家やミュージシャンも
犠牲になったんですけど、
そうやって、国や社会が荒廃し、
人々が分断されてしまった状態から
再び立ち上がるために、
タイ国境の難民キャンプから活動をはじめ、
ぼくが訪れたころには、
コンポンクダイという村で
農業に関する活動をしていたんですね。
──
ええ。
TOBI
アンコールワットの観光拠点である
シェムリアップ市街から、
70キロくらいのところにあるんです。
以前からそのJVCのスタッフのかたが、
愛と平和を歌い続けてるってことで、
レ・ロマネスクに
興味を示してくださっていたんですが、
いろいろお話しているうちに、
何か曲をつくって、村の子どもたちと
一緒に歌ったりできないですかね、
みたいな話になって。
──
ちょうど「ひどい目」を
さかんに更新していた時期でしたよね。
2014年とか、2015年とか。
何だか、カンボジアだかどこだかへ
行ったり来たりしてるなあと
横目チラチラで見てました。
たしかクラファンもやってましたね。
TOBI
そうです。やってました。
クラウドファンディングで資金を募り、
現地の子どもたちと
ミュージックビデオを撮るために。
せっかくだから、
クメール語で歌うことにしたんですよ。
──
そうやってうまれたのがチキュウノコ、
正式名称「TiQNoKo」。
いまでもライブでやってるナイスな曲。
実際、その村へ行ったのは‥‥?
TOBI
2015年の12月でした。
ただ、出発前日にNHKから連絡があり、
「MUSIC JAPAN」という番組で
「まもなくブレイクするアーティスト」
の特集をやるので出てくれないか‥‥と。
──
あ、それって、いまをときめく‥‥。
TOBI
そう、Mrs.GREEN APPLEと一緒でした。
──
すごいじゃないですか!
ミセスと一緒に、
まもなくブレイクするアーティスト枠って。
しかも、本当に大大大ブレイクしてますし。
あちらは。
TOBI
うん。あちらはね。
──
今度Kアリーナで20日間とかってね。
TOBI
紅白歌合戦の白組のトリとかね。
──
でも、その時点では横一線っていうか、
「よーいどん!」で
その番組に集められた誰がブレイクしても
おかしくはなかったってことですね。
TOBI
そうです。アリーナ20日間が
レ・ロマネスクだったかもしれないんです。
あの時点では。
──
一方、あちらが「ひどい目」の取材されてね。
TOBI
そうそう。あちらのギター係が奥野さんでね。
ま、とにかく、出発前日に連絡があって、
「まもなくブレイクするアーティスト10組」の
「10組目」として出てくれないか、と。
電話がかかってきて、
いますぐに会いたいっていうことになって。
あのようすだと、
ギリギリ10組目に滑り込んだみたい。
──
わはは、また「最後の一枠」出演!
かつての「ひどい目」で語られていますが、
チラシの印刷締切の都合で受けた
出演オファーを、
居酒屋の席で泥酔状態のまま承諾した
「ハメコミ・キャラ」の逸話と同じだ!
TOBI
だからね、荷造りとかもいい加減な状態で、
カンボジアへ出発したんです。
子どもたちにハッピーを届けたい一心で、
いつもの正装の代わりに
ピンクの法被(ハッピ)を羽織り、
頭の上には、
犬がかじる用のソフトな地球を載せて。
──
あー。
TOBI
ただ、コンポンクダイ村には、
ホテルがなかったんです。
だから、撮影の前日に
シェムリアップのホテルに泊まったんです。
──
つまり、村から70キロ離れた?
TOBI
そう。朝、早起きして移動することにして。
いろいろバタバタしながらホテルに着いて、
スーツケースから衣装を出し、
シワにならないように陰干しして寝ました。
──
ええ。
TOBI
次の日は朝5時に起きたんですが、
まだ日の出の前で、あたりは真っ暗でした。
たくさんの荷物と一緒に車に詰め込まれて、
漆黒の闇の中を出発したんです。
どこをどう走っているかもわからないまま
運ばれていったんですが、
舗装されていない悪路を
猛スピードでブッ飛ばしていることだけは、
車内でピンポン玉と化している
自分たちのようすから、判断いたしました。
──
昔『アルカノイド』ってゲームあったなあ。
TOBI
小一時間その状態で運ばれていった末、
ようやく村に到着しました。
すでに疲労はピークでしたが‥‥
こちらで着替えてくださいと
案内された場所には、
真新しい小さな姿見があったんです。
──
はい。必須アイテムですよね。
TOBI
スタッフさんが姿見を求めて、
村のお店に行ったが売ってなかった。
困っていると、
おもむろに大きな鏡を切りはじめ、
金属板をカットして枠をつくり、
その場で、
またたくまにオーダーメイドの姿見を
つくってくれたんだそうです。

姿見をつくってくださる村人 姿見をつくってくださる村人

──
なんと! 世界にひとつだけの姿見‥‥。
TOBI
さっそく村人たちのあたたかな親切に触れ、
「オックン〜♡」とお礼を言いました。
奥野さんの愛称が、
カンボジアの言葉では
「ありがとう」という意味なんです。
遠い異国であなたの顔を思い出し、
そして、感動しながら、
いざ衣装の入ったスーツケースを開けたら
ハッピがどこにも見当たらないんですよ。
──
なぜですか。
TOBI
忘れてきたんです、ホテルに。
子どもたちに届けるはずのハッピーを。
──
ハッピという名のハッピーを? 
70キロ離れたホテルに?
TOBI
そう。
──
一時間ピンポン玉と化しながら運ばれてきた、
その地獄のドライブのスタート地点に?
TOBI
そうです。
──
忘れてきたのは、TOBIさんのハッピーだけ? 
それとも‥‥。
TOBI
MIYAさんのハッピーもです。
撮影は9時スタートと決まっていました。
その時間に合わせて、
村の人に集まってもらう予定だったので、
取りに戻ってるヒマはないねって
みんなに言われたんだけど、
そんなの、取りに帰るしかないんですよ。
──
一体どうして、そうなるのか‥‥。
TOBI
部屋では、マラリア対策の蚊取り線香を
モクモクと焚いていたし、
ホテルを出るとき、
あたりが真っ暗すぎて、
鴨居(かもい)にかかったハッピに
気づかなかったんです。
──
視力が「2.2」もあるのにね。
TOBI
目はいいけど鳥目なんです。
そして視力は「2.5」です。
間違えないでください。
ただ、メイク道具などはあったので、
MIYAさんは
村に残ってメイクをはじめてもらい、
ぼくは往復の車中でメイクをし、
取りに戻って帰ってすぐさま着替えたら、
ギリギリ間に合うかな‥‥と。
──
車の中で変身するってことはつまり、
戻っていった人とは
別の人が帰って来るってことですか。
村の人からしてみたら。
TOBI
そうです。
──
でも、そんな70キロも先のホテルに‥‥
えっ、しかも、再びピンポン玉ッ!!
TOBI
そうです。運転手さんは、
さらにブッ飛ばしてくれたんですよ。

──
緊急事態を察して。
TOBI
はい。だから今朝の状態に輪をかけた
高速ピンポン玉と化して、
ふたたび
来た道を運ばれていったんですけど、
一瞬、視界をかすめた速度計の針は
「160キロ」を指していました。
──
ドイツのアウトバーンか。
TOBI
すでに申し上げたとおり、
未舗装のデコボコ道を走ってますから、
「デコ」の部分で
ドゥンドゥンって車体が跳ねるんです。
もう、ほとんど「飛んでた」と思う。
──
わはは、ボートレースで見かけますよ、
その状態。
猛スピードのボートが、
波の頭をポンポン飛んでくやつですね。
TOBI
しかも、シェムリアップの街中以上に、
郊外の道路はカオスなんです。
子どもたちが原付を暴走運転してるし、
若いお母さんが
赤ちゃんにおっぱいをやりながら
原付を運転してるし、
おじいさんが、
点滴を打ちながら原付を運転してるし。
──
視覚情報が多すぎる!
そして、
どうしてみんなそこまで原付の運転を!
TOBI
さらに牛の大家族や野良犬の半グレ集団が、
ものすごい群れをなして横断するんです。
それらの隙間を縫うようにして、
160キロもの猛スピードで突っ走るんです。
──
つまり‥‥メイクなど‥‥。
TOBI
できませんでした。一切。
車は飛んで来るものをよけるのに精一杯、
ピンポン玉は、
その車に身を任せる以外になくて。
でも、そのおかげで
往復140キロ超の道のりを、
本当に1時間で行って帰ってきたんです。
──
ちょっと遅めのタイムマシンですね。
TOBI
そうです。
牛の大家族とか、野良犬半グレ集団とか、
子どもが暴走運転する原付とか、
おっぱい母さんとか、
点滴おじいちゃんとかが、
ヒュンヒュンうしろに流れていきました。
2着のハッピが変わるがわる宙を舞い、
ぼく自身は
ピンポン玉の曲芸師のようになりながら、
ほうほうの体で村へ戻ってきたときには、
すっかり汗だくでした。
──
車に乗ってただけなのに。
TOBI
全身がぐっしょりと濡れていたんです。
イヤな汗でね。

(つづきます)

2026-10-30-FRI

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  • TOBIさんのカレーが神田カレーグランプリ決勝戦に出場!

    いま、月火を除く水曜日~日曜日に、
    TOBIさんがオリジナルカレーを提供している
    キッチンサウナ@サウナラボ神田が、
    神田カレーグランプリの決勝に出場します。
    今回の「ひどい目」の第3回で
    主な話題となっている
    カンボジアの子どもたちのつくったハーブを
    効果的に用いた、
    さつまいものココナッツカレーで出場です。
    うまいです。決勝戦の日時は
    来たる2026年10月31日&11月1日の土日。
    会場は、神田小川町の小川広場。
    実際に来場してカレーを食べた人の投票で
    グランプリが決まるそうです。
    みんなもTOBIさんカレーを食べて応援だ!
    いや、ふつうにおいしいので!
    詳しくはイベントの公式サイトでチェックを。

     

     

    これまでのレ・ロマネスクTOBIのひどい目。