日本のすばらしい生地の産地をめぐり、
人と会い、いっしょにアイテムをつくる試み。
「/縫う/織る/編む/」、
どうぞよろしくお願いします。

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転換期の今、もっと勉強したい。

──
宮浦さんが関わっている産地の方たちは、
家内制手工業と言えるようなところが多いですよね。
大手の工場や会社とは、そんなにお付き合いはないんですか。
宮浦
意識してないですが、あんまり多くはないですね。
家族経営の会社が多いです。
素材開発や販路開拓から、
事業を再建したい、みたいな相談もあります。
たとえば15人くらいの職人さんがいる工場の
これからを一緒に考えるような話です。
──
会社の事業計画を考える。
プロデュース業みたいなことですか?
宮浦
そうです。
会社の廃業や事業承継の相談、
ここ2年くらい、多かったんですよ。
そこが、今いちばん悩みなんです。
この工場は、こうやったほうがいいよねっていうのを、
はっきり、自信を持って
アドバイスしてあげたいんですけど、
ちょっとまだ自信がない部分があるんです。
経営や数字の部分はまだまだ知識も足りてない。
今、僕自身が転換期だと思っているので、
いろいろ教えてもらいながら、日々勉強しています。

──
産地の人たちが続けたい仕事を、
やめなくていいように。
宮浦
そうなんですよ。
いいものづくりをしていて、
現場の人たちも続けたいのにやめるしかない、
っていうのはいちばん嫌ですね。
お世話になった工場さん、顔の浮かぶ人たちに
恩返しもしながら、やっていきたいですね。
産地の人たちの感覚も変えていきたい。
──
産地のみなさんの感覚に変化はありますか?
宮浦
たとえば、30代の若社長が新しく継いだところでは、
これまでは「言われたものをつくる」、
という仕事を変えて、
自らブランドを立ち上げたり、
自分たちがつくりたい生地をつくって、
自分たちの売りたいところに売る、
そういうことをやってたりします。
──
少しずつ、変わってきているんですね。
宮浦
ただ、繊維の産地は分業で動いてるから、
企業の数も生産量もできるだけ減らしたくないんです。
産地ごとの強みを明確にして、
産地全体としてアピールしていく必要もあります。
そこで、役所や組合などおおきな組織と、
産地をどうしていくかを一緒に考えています。
どういう事業にしたらいいか、
議会に上げてもらって話し合って、っていうのを、
いくつかの複数の産地で仕掛け始めています。
産地を知る人が増えて、働く人も、
産地に入る仕事も増えたらいいなと思っています。

産地発のブランド、「HUIS」さん。

──
今回、このプロジェクトでは、
静岡の「遠州」からスタートします。
「遠州」という産地名も、
あまり聞き馴染みがないです。
どんな産地だと言ったらいいでしょう?
宮浦
ざっくりいうと、高品質な綿織物の産地です。
シャトル織機を使った高密度な織物が有名なんですが、
一般にはあまり知られてはいないですよね。
──
シャトル織機というのは、
明治から1960年代にかけて使われていた昔の織機ですね。
ゆっくり、ふんわり織ることで、
やわらかくなめらかな生地になるという。

宮浦
はい。
遠州は技術力がほんとうに高い産地なんです。
糸から生地になるまでの工程は、
こまかく分業になってるんですけど。
そのひとつひとつがどれも国内トップクラスの職人技です。
──
そんな遠州発のブランドが、
HUIS(ハウス)さん。
宮浦
HUISさん、まさに理想のブランドです。
遠州産地の生地の良さを世に広めたい!という思いで
ブランドを立ち上げて、発信を続けてて。
産地や遠州織物をPRすることにも
つながっていますし。
──
松下さん(HUIS代表)の、
地元愛がものすごく伝わってきますよね。
宮浦
こういったブランドが、
ほかの産地でもでてきてほしいですよね。

“糸へん”産業をキュレートする「糸編」
──
「糸編」っていう名前をつけたのはいつからですか?
宮浦
2017年の法人化したタイミングで「糸編」にしました。
糸に関わる産業に対しての編集業ということで。
自分はものをつくるというよりは、編集者的な立ち位置で。
──
そういう思いのネーミングなんですね。
宮浦
名刺交換は「糸編の宮浦です」っていうんですけど、
人によっては、「たいそうな名前だね」って、
いじってくれるんです。
「業界を背負ってんだ」みたいな。(笑)。
それもいいかな、って思っています。
でも、「先生」とか呼ばれることがあって、
もうほんとに嫌だなと思って。
それが僕にとってはマイナスですね。
──
どんなマイナスが。
宮浦
職人さんに気を遣われる感じというか。
──
あぁ~!「大学の先生がいらっしゃった」
みたいな感じになっちゃうんですね。
宮浦
そうなんですよ。
つまんないですよね、それは。
──
「変な若造が来たぞ」ぐらいのほうが。
宮浦
ええ、「ちょっと見とけ」ぐらいな感じがいい。
名古屋芸術大学は客員教授になっちゃって、
尾州の人たちにたまにそういう扱いされて。
それを変えていきたいなと思ってますね。
よりストリートな感じに。
──
「ストリートな感じ」っていうのが大事なんですね。
宮浦
仲良くしてほしいんですよ、職人さんたちと。
──
これからも、どんどん新しいことをされるんでしょうね。
宮浦
そうですね。
やっぱりワクワクしたいんですよね。
──
自分がワクワクすることを。
宮浦
はい(笑)。
がんばっていきたいですね。楽しく。
──
楽しく。
大事ですよね、それ。
宮浦
今度ヨーロッパに出張の予定もあるんですけど、
しっかりといろんな打ち合わせをして、
日本のテキスタイルの輸出も含めて
いろんな見せ方を、広げていけたらいいですね。
動きながら。
──
動きながら、ですね。
面白いお話、ありがとうございました。

とある冬の日。
「/縫う/織る/編む/」チームのやえと縫が、
産地の学校に1日体験入学してきました。

産地の学校は約3ヶ月間、
毎週末、場所を変えて開講します。
今日の会場は、東京都内の老舗の染工場。
都心のどまんなかに、
染工場があるとは驚きです。

受講者さんは15名ほど。
続々と集まってきます。

まずは講義です。
染色技法を学ぶというよりは、
染工場さんが日々どんなことを行っているのか、
どんな仕事が入ってきて、
どんな商品・作品を作っているのか、
より日常的な仕事の内容をお話ししてくださいます。

補足説明をする宮浦さん。
ここが、「ストリート」なところ。
専門的な内容も、
わかりやすく噛み砕いて教えてくれます。

講義が終わると、
実際に染め工場(こうば)の見学へ。
染めるための機械がズラリ。

昔ながらの機械だけでなく、
最新の染色機も使われています。

オリジナルで改造された染色釜や、
使いやすく工夫された便利アイテムなど、
職人が日々作業する工場ならではの
リアルな現場を見せてもらいました。

お昼を挟んで移動。
午後は、プリントOEMの会社へ。
こちらでは講義がメインです。

プリント技術の基礎から、
この技とこの技を掛け合わせると、
こんな生地が生まれた、
といったプロの応用までを、
実際の生地を見ながら教えてくれます。

ここでもストリート感を忘れずに。
宮浦さんが、
やっぱり笑顔でわかりやすく説明してくれます。

夕方、1日の講義が終了。
ファッション系の専門学校や大学などでの、
専門知識を得る講義とは違い、
「仕事」に直結する現場ならではの内容。

ものづくりの背景を学べる、
ほかにはない「学校」でした。

(つづきます)

テキスト:武田 景

2024-04-05-FRI

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  • 販売日|2024年4月17日(水)午前11時より
    販売方法|通常販売
    出荷時期|1~3営業日以内

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    遠州織物の特長や、
    それがどのように作られているかも
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    期間|2024年4月5日(金)~17日(水)
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