現代美術作家の加賀美健さんは、ヘンなものを買う。「お金を出してわざわざそれ買う?」というものばかり、買う。ショッピングのたのしみとか、そういうのとは、たぶん、ちがう。このお買い物も、アートか!?あのお買い物を突き動かすものは、いったい何だ。月に一回、見せていただきましょう。お相手は「ほぼ日」奥野です。

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加賀美健(かがみ・けん)

1974年東京都生まれ。現代美術作家。国内外の美術展に多数参加。彫刻やパフォーマンスなど様々な表現方法で、社会現象や時事問題をユーモラスな発想で変換した作品を発表している。

https://kenkagamiart.blogspot.com/
instagram: @kenkagami

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買ったもの_その11 

「デッカいサングラス」

今日はお気に入りのアイテムを紹介します。サングラスです。5~6年前かな、ブラジルで見つけて衝動買いしました。色もいいでしょ。すごく気に入ってるんだけど、ひとつ問題があって。Tシャツにかけると、こんななっちゃうんですよ(笑)。ビロ~~~ン‥‥って、首が。つまり「めちゃくちゃデカい」んです、これ。あ、見ればわかる? サンパウロで展覧会をやったとき、あっちのアメ横みたいなエリアのみやげもの屋にフラッと入った瞬間「ああっ!」って思わず指差してました。「ほしい!」って。そのままレジに直進して「あのサングラス売り物ですか!?」って聞いたんですよ。そしたら何レアルだったか忘れたけど、日本円で「1万円くらいならいい」みたいな返事だったんで、すぐさま「買う!」って。レジ袋はいいですと自分から言いました。エコっていうより、入らないから(笑)。メガネスーパーに持ち込んだらどうなるだろうと思ってます。「ちょっと調子悪いんで、調整お願いします」とか言って。あるいは真夜中にこっそり鎌倉の大仏にかけたりとか。ある朝、大仏がサングラスかけてるんですよ? あのヘアスタイルで。絶対カッコいいと思います。あとは、まじめなオンライン会議に出たりとかね。「加賀美さん、今日のメガネ、ちょっと大きくないですか‥‥!?」「そう?」とか何とか、おもしろいじゃないですか。昔から「デッカいもの」を見ると、つい買っちゃうんです。アトリエには、デッカい「うまい棒」とかも転がってます。えっ、なんでデッカいものに惹かれるのかって? んー‥‥‥‥なんで、なんですかねえ。まず「笑っちゃう」っていうのは、ありますよね。デッカいだけで、おもしろいんです。東京ビッグサイトのあたりの地面に、デッカいノコギリが刺さってるじゃないですか。有名なポップアートのクレス・オルデンバーグの作品だけど、あれとかも相当おかしいですよ。冷静に考えたら。それっぽい色のバルーンで「デッカいウ○チ」のオブジェをつくったポール・マッカーシーには「先を越された」と思いました。逆に、明治時代の超絶技巧の職人さんとかが、えらい細かい木工細工の落花生みたいなのをつくるじゃないですか。あるいは、米粒に般若心経を書きましたみたいな人とか。ありがたみがすごいんですよ、ああいうのって。みんなから「細かいね!」「よくつくったね!」「超絶技巧だね!」なんて褒められて。ぼくだって「すごいな」とは思うんだけど、別に要らないんです。同じ落花生だったら、ヨギボーくらいデッカいほうが、ぼくは好き。なんでだろう。とにかく世の中、ちっちゃいものは褒められがちで、デッカいものは笑われがち。で、ぼくは、デッカいほうの味方です。

買う人も買う人だけど、つくった人もつくった人ですよね。いつもながら。今回は加賀美さんに売れたからいいけど、こんなデッカいメガネの在庫を抱えたら大変です。かさばってしょうがない。倉庫代が経営を圧迫するでしょう。あと、巨大なものは「悲哀」をまとっていることがありますね。哀しみっていうか。あれはまた、なんででしょう。最近は変なものを見かけたら「加賀美さんなら買うかな」という目で見るようになりました。

加賀美さんの「カッコいい」

ゴミ袋のプルオーバーmask

傘を持つのが嫌いなんです。だから雨が降ると、たまに「黒いゴミ袋」をかぶって出かけたりしてます。すごい肩パッドが入ってるプルオーバーみたいで、カッコよくないですか。パリコレとか見てると、こういう人いるじゃないですか。あれを日常に取り入れるわけだから、ハイセンスです。まずはコンビニあたりからチャレンジしてみてはいかがでしょう。

2023-01-16-MON

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