現代美術作家の加賀美健さんは、ヘンなものを買う。「お金を出してわざわざそれ買う?」というものばかり、買う。ショッピングのたのしみとか、そういうのとは、たぶん、ちがう。このお買い物も、アートか!?あのお買い物を突き動かすものは、いったい何だ。月に一回、見せていただきましょう。お相手は「ほぼ日」奥野です。

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加賀美健(かがみ・けん)

1974年東京都生まれ。現代美術作家。国内外の美術展に多数参加。彫刻やパフォーマンスなど様々な表現方法で、社会現象や時事問題をユーモラスな発想で変換した作品を発表している。

https://kenkagamiart.blogspot.com/
instagram: @kenkagami

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買ったもの_その18

「いろんなジョークグッズ」

今回、話の流れによっては「少々、不穏当なモノの名称」が誌面に躍るおそれがございます。お食事や森林浴、アフタヌーンティなどをお楽しみ中のみなさまにおかれましては、くれぐれもご注意いただければと思います。で、はい、まずは上の写真。うわっと思いませんでした? 雑誌かなんかの取材のとき、この状態にしてたんですよ。たまたま。そしたらカメラマンさんが「ああっ!」とかって大きな声を出したんです。「加賀美さん! ヤバいっすよ! コーヒーこぼれちゃってます!」いい人でした。俺も俺で「ええっ! やべっ!」とか自分で自分に騙されちゃって(笑)。心底くだらないグッズなんだけど、買っちゃうんですよね、こういうの。どうしても。ジャンル的には「ジョークグッズ」というそうです。ビックリさせる系のやつですね。他にもケチャップがこぼれてるやつとか、「ガム食べる?」って引っ張ったら「バチーン!」とか。あるいは人間身体の反射的メカニズムによって食道から口腔を通し体外に排出された胃の内容物のフィギュアとかね。平たく言えばゲ◯のおもちゃですけどね。下の写真とかは「まんだらけ」で1000円くらいだったかな。いちばん好きなのが、もう言わなくてもわかるかもしれないけど、ウ◯コのおもちゃ。目がないんです。昔はけっこう売ってましたよね、そこらへんで。でも、いまはいろいろ余裕のない時代なのか、なかなか見なくなりました。昔サンフランシスコに専門店があったんです。イカした店でね。店内ぜんぶ、こんなノリ。床から天井から壁から棚から、ところ構わず。いつの間にか潰れてたけど、店ごと買いたかったくらいです。そんなんだから、よく「加賀美さん、『Ge』とか『U』とか大好きですもんね」なんて言われるんだけど、大っキライですよ! 当たり前じゃないですか。トラウマがあるんです。まず「U」については、小学生のとき、おしりを強く拭きすぎて、ちり紙が‥‥わかりますよね? しばらく凹みました。「Ge」については、ぼく、人生で一度だけ学芸会の主役を務めたことがあるんです。幼稚園のとき、王子さまの役で。王冠をかぶって、マントをつけて、太もものあたりがポワンとふくらんだズボンを穿いて。母ちゃんがつくってくれたんだけど、それがうれしくてね。終演後、イエ~なんつって体育館をはしゃぎ回ってたら、誰かが撒き散らした「Ge」を踏んづけてスッテンコロリン。あわれな王子さまになっちゃって。それ以来、憎んでいます。でも、それのおもちゃは、つい買っちゃう。なんなら「かわいい♡」とさえ思ってる。何なんだろう、この心理。人間って複雑。

すっかり「そのふたつ」の話になっちゃった(笑)。でも、ふしぎですよね。本物は「憎たらしい」のに、偽物は「かわいい♡」なんて。ちなみに2枚めの写真、大きいやつは加賀美さんのお手製。あんまり売ってない「Ge」のおもちゃがどうしてもほしくて、「Ge」のおもちゃの写真をネットで拾って印刷して段ボールに貼り付けて自作しているそうです。そこまでほしいものが、俺にはあるのか!? 考えさせられました。

加賀美さんの「カッコいい」

段ボールでつくるハットhat2

段ボールの中央に切り込みを入れ、頭をズボッとはめれば出来上がり。そこに書かれた文字やら絵やらが着用時のアクセントになるよう工夫するのがポイントです。どんな段ボールを選ぶかもセンスの見せどころ。「熊本すいかのハット」とか「愛媛みかんのハット」とか可能性は無限大。

2023-08-16-WED

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