
突然大きな音が鳴ったり、
緊張すると痛くなったり、
日常にありがちな「おなか」のトラブルですが、
そのとき私たちの体内では
どんなことが起こっているんだろう?
そんな疑問を抱いていた乗組員が、
ほぼ日コンテンツでも
なにかとお世話になっている
「けいゆう先生」こと、消化器外科医の
山本健人先生に聞いてみることにしました。
さすがのけいゆう先生、
素朴な「なぜ?」を正面から受け止めて、
とってもわかりやすく解説してくれたんです。
けいゆう先生(山本健人さん)
博士(医学)。外科医専門医、消化器病専門医、消化器外科専門医、感染症専門医、がん治療認定医など。「けいゆう先生」として情報を発信しているX(旧twitter)が人気を博す。著書に『すばらしい人体』『すばらしい医学』(ダイヤモンド社)など多数。
- ──
- 最後に、先生にお聞きしたいのが、
手術では臓器を直接見ていると思うんですが、
個人差というのはあるものなんですか。
- けいゆう
- 臓器の個人差はあります。
たとえば、さきほど腸の長さの話をしたときに、
大腸は1.5から2メートルくらいだと言いましたけど、
めっちゃ長い人も、
めっちゃ短い人もいます。
何十センチという単位での幅はけっこうあります。
それは小腸も同じです。
- ──
- 何十センチ。
けっこうな違いですね。
- けいゆう
- そうですね。
たとえば大腸の下の部分に
専門用語でS状結腸というものがあるんですが、
ここって人によって一番長さの差があって、
それから、この横行結腸という
横向きに走っている部分も
けっこう長さの差がある部分です。
S状結腸がすごく長くて、ぐるーっとおなかの中で
とぐろを巻いている人もいます。
でも、めっちゃ短くて、
ぱっつんぱっつんの人もいます。
- ──
- そうなんですね。
長くても短くても健康に問題はないんですか。
- けいゆう
- ある程度の幅だったら問題ないんですけど、
あまりにも長過ぎると「捻転」と言って、
ねじれたりするんです。
こういうケースだと治療が必要ですし、
病気と呼ばざるを得ないんですね。
治療が必要で手術することもあります。
また、結腸の過長症と言って、
長過ぎてトラブルを起こすこともあります。 - 今ここにいる皆さんの
腸の長さが違うかもしれないし、
平均よりもはるかに長い人がいるかもしれない。
でも、ある程度長くてもトラブルはないので、
問題にならない。
あまり長過ぎて、ひどい便秘になる方も
いらっしゃいますけど。
そういう場合は手術が必要になることもあります。
- ──
- じゃあ先生が手術でおなかを開いたときに、
おおっと思われることも‥‥?
- けいゆう
- 最近はもう手術の前にわかるんですよ、
検査をたくさんするので。
CT検査をしておなかの中の写真を撮って、
腸の中に造影剤を入れて、
腸がどんなふうに走行してるのかを見るので、
手術の前に分かります。
この人、腸が長いなとか、短いなとか。
- ──
- 自分の腸が人より長い、みたいなことも
実はあるかもしれないんですね。
- けいゆう
- そうなんですよ。
気づかないんですよね。
気づくタイミングがないですよね。
- ──
- もう1つうかがいたいんですが、
人体模型を見ていると
脂肪って見えないですよね。
- けいゆう
- あ、そうですね。
- ──
- 本当は内臓脂肪と
呼ばれるものって見えるんですか。
- けいゆう
- あ、これは非常に重要な質問です。
内臓脂肪は省略されてるんですよ。
で、実際どうなってるかというと、
まず、胃の下からカーテンのように
ドーンと垂れ下がってます、内臓脂肪は。
正確な医学用語でいうと
大網、大きな網と書くんですが、
網みたいなもの、カーテンみたいな、
暖簾みたいな感じですね。
あと腸と腸のすき間とかにも内臓脂肪があって、
腸同士のあいだを埋めているような
イメージですかね。
この内臓脂肪の量は人によって全然違います。
- ──
- そうなんですね。
内臓脂肪って、内臓に
覆い込まれてるわけじゃなくて、
そうやって1枚のカーテンのように
掛かっているんですか。
- けいゆう
- そうです。
で、臓器といろんなところで
つながってるというか。
だから、すごい肥満で太っていて
内臓脂肪がものすごく多い人とかいるんですよね。
特に男性のほうが内臓脂肪って多いんですけど、
男性で恰幅のいい方って、
おなかの中を開けたら、
最初に見えるのは、ほぼ全部脂肪なんです。
臓器見えないんです。
- ──
- 白く見える‥‥?
- けいゆう
- 黄色ですね、脂肪は。
それをかき分けて、スペースを作ってから
手術を始めなきゃいけない。
痩せている人は薄いので、楽なんですけどね。
- ──
- 全然ない人はいないんですか。
ある程度痩せていても。
- けいゆう
- 全くゼロな人はいないですね。
ものすごく痩せた人で、
すごく薄くしか脂肪がない人もいますけど、
必ず脂肪、脂質というのは、
体を構成する成分の一つなので、
全くない人はいないです。
- ──
- ありがとうございます。
ああ、今日は聞きたいことがいっぱいあり過ぎて、
いろんな方向に話が飛んでしまいました。
すみません。
- けいゆう
- いえいえ。大丈夫でしたでしょうか。
質問が鋭かったです。
- ──
- すごく楽しかったです。
なんかもう、自分の体のことでも、
こんなに知らないことだらけなんだって思いますね。
- けいゆう
- そうですね。
実は昨日も別の場所で体の話をしてきて、
肛門の話もしてきました(笑)。
専門的な分野でありながら、
入口の部分は誰でもわかるような
わかりやすい知識でもあるので、
おもしろいかなと思って本を書いたんです。
- ──
- はい。すごくおもしろくて、
人に言いたくなる知識ですよね。
本当に今日は楽しかったです。
ありがとうございました。
- けいゆう
- ありがとうございました。
(おわります)
2025-03-25-TUE