さあ、もうすぐ「生活のたのしみ展」!
飯島奈美さんのショップ
「SUPER LIFE MARKET」には、
おなじみの食品やグッズに加え、
新商品がずらりとならびます。
まずはなんといっても、
6年ぶりの新刊『LIFE 12か月』の発売です。
重松清さん書き下ろしの物語を、
飯島さんが料理で表現するという
スペシャルコラボレーションで、
46のレシピを収録しています。
さらに、梅のふりかけ「うめももち」、
飯島さんが選んだおいしいものを
詰め合わせた「めしぶくろ」、
希少な魚「えそ」を使った限定「おだし」を先行販売!
まだまだ、それだけではありません。
LIFEのアパレルまわりからは、
かわいくて機能的な新アイテム「からあげボレロ」と、
人気のエコバッグの新色も登場しますよ。
それぞれについて、詳しくお伝えしていきますね。

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希少な魚「えそ」を使った、 スペシャルな「おだし」を限定販売!沼田行雄 × 飯島奈美 対談
(おだし香紡)

飯島奈美さん監修の
ほぼ日オリジナルのだしパックに、
「えそ」を使った限定「おだし」が新登場!
そもそも、おだしシリーズのはじまりから、
飯島さんは「えそ」を使って作りたいと
おっしゃっていたのです。
しかし、「えそ」はなかなか手に入らない
希少な魚ということで、
すぐには難しい、という判断に。
それを一年かけて集めて作ってくださったのが、
「おだし香紡」の沼田行雄さんです。
「生活のたのしみ展」での発売を目前に、
飯島さん、沼田さんのお二人にお話を伺いました。

プロフィール

沼田行雄(ぬまた・ゆきお)

1983年、静岡生まれ。
慶應義塾大学環境情報学部卒業後、
大手外資系IT企業で大企業向けのシステム構築に従事。
29歳で、慶應義塾大学大学院経営管理研究科へ。
ケロッグ経営大学院への留学を経て、MBAを取得、
経営戦略コンサルタントを2年経験したのち、
都内の鰹節専門店で鰹節削りを学ぶ。
2017年「有限会社沼田」(1934年創業)に入社、
三代目となる父親・豊一郎さんのもと、
「日本の食文化を正しい知識とともに拡げること」を
企業理念にしている同社で、
食材の使い方などの正しい知識とともに
最上の製品を届けるべく“おだしコンシェルジュ”として
「だし」の普及につとめている。
幼稚園から英語、小学1年生からプログラミングを勉強、小学校の卒業文集には「将来はコンピューター関係の会社に勤めてから、父の仕事を継ぎたい」と書いた。

──
ついに、できましたね。
「えそ」のおだし。
飯島
はい。ついに、満を持して。
ありがとうございます。
──
おだしのシリーズは、
もともと、飯島さんがめずらしい魚である
「えそ」について
調べていたところからはじまったんですよね。
飯島
そうですね。
ほぼ日さんから、おだしを作りたいというお話があって、
じゃあ、えそを使いたいなと思って調べていたら、
「おだし香紡」さんが、えそを扱っていて、
けれどもそれがとても希少なものだとわかり、
まずは定番のものから、ということで、
「かつお節」と「煮干し」をメインにした
おだしからスタートすることになって。
──
そう。
えそを使ったおだしは、
いつか、えその量がある程度確保できたときに
スペシャルで作りましょう、というお話でした。
それが、ついに。
沼田
ぼくも、飯島さんとほぼ日さんと、
えそをきっかけにつながったので、
思い入れがあります(笑)。
飯島
そういう意味では、記念のえそですね。
もともと自分でも使っていたんですけど、
それが手軽なだしパックになって、私もうれしいです。

──
あ、飯島さん、
もともと、えそを使っていたんですか?
飯島
はい。九州で、料理を作っているところを
見せていただいたときに、出汁が
えその出汁だったことがあるんです。
それで、「えそ、いいな!」と思って、
自分でも買って使っていました。
──
そうなんですか、九州で。
沼田
今回のえそも九州産。
長崎県で捕れたものです。
飯島
えそって、
「かつおです!」とか「煮干しです!」みたいな
主張する感じがなくて、最初は
「あれ、なんだろう、この出汁?」って思うんですけど、
おいしいし、上品で、すごく好きだなと思ったんです。

──
へええ。
えそというのは、沼田さんのおだし香紡にとっては、
どういう位置付けなんですか?
沼田
うーん、それはすごく難しい質問ですが、
分類上は、煮て干しているので、煮干しなんです。
その中でもとても珍しいので「レア煮干し」でしょうか。
──
レア煮干し(笑)。
沼田
そもそも、えそを捕るという漁がないんです。
──
え、じゃあどうして捕れているんですか。
沼田
不思議ですよね。
カタクチイワシやアジのような群れる魚は漁がしやすいんです。
網で一網打尽に捕ることができるので。
えそは群れないし、そもそも海底に住んでいるから、
なかなか狙って捕ることができないんですよ。
──
海底に。深海魚ではないんですよね。
沼田
深海魚じゃないです。
だいたい水深100m以内の浅い海の底の、
砂泥地と呼ばれる砂地や泥地にいます。
でもときどき、カタクチイワシを食べるために
海面近くまで上がってくるんです。
──
カタクチイワシをエサにする。
沼田
そう、エサに。
で、人間もカタクチイワシを食べますから、
カタクチイワシの漁をすると、
そのなかにえそが混じります。
──
食べにきているところを捕っちゃうわけですね。
沼田
そうです。
飯島
すごいですよね。
沼田
そうやってカタクチイワシのなかから
ひとつずつ選り分けて集めたのが
今回のえそです。
──
カタクチイワシだけが欲しいんだけど、
捕れちゃった。
沼田
はい。捕るつもりがなかったけど、捕れちゃった。
だからそもそも大量生産されているものではないので、
スーパーマーケットのような量販店に並ぶことはまずないです。
でも、捨ててしまうのはもったいないですし、
なによりおいしいので、その地域だけで流通するんです。

──
じゃあ、沼田さんの「おだし香紡」でも、
あまり扱っていないんですね。
沼田
いえ、うちは出汁の専門店なので、
できるだけ取り扱うようにはしています。
ただレア煮干しの中での人気順位は真ん中ぐらいですね。
あまり人気のない理由は、
たぶん、見た目かな。味が想像できないし、
そもそも、顔がちょっと怖いですよね(笑)。
飯島
顔、怖いです(笑)。
──
狂暴な見た目。
歯がギザギザむき出しになっていて‥‥。
飯島
そう、ギザギザ!
沼田
そんな見た目とは裏腹に、えそのかまぼこと言ったら高級品ですし、
飯島さんがおっしゃっているように、本当においしいんですよ。
飯島
ちょっとタラっぽい甘みもあって、
味わいが上品なんです。
このあいだ、茶椀蒸しを作ったら最高でした。

──
その希少なえそを使って、
だしパックに加工するにあたって、
沼田さんには、いろいろ工夫をしていただきましたね。
沼田
はい。最初に飯島さんとほぼ日のみなさんに
出汁の試飲をしていただいたとき、
まず3パターンのだしパックをご用意させていただきました。
1つ目が、えそをそのまま粉末にしたもの、
2つ目が、えその頭と内臓をとって粉末にしたもの、
3つ目が、えその頭と内臓をとったものを
さらに乾煎りして粉末にしたもの。
頭をとる理由は、えらが付いているからです。
えらは呼吸に使われていて、
あまりきれいではないんです。
飯島
汚れとかがついてるんですよね。
沼田
そう。それから内臓は、苦みや濁りの原因になるので、
それもとることにしました。
次に、乾煎りするかどうかなんですが、
煎ると香ばしさが加わって、魚臭さも減るので、
そうしましょうと。
その乾煎りの時間をどうするか。
3分、2分、1分で調整していたとき、
飯島さんが「30秒のものにしましょう」
とおっしゃったんです。
飯島
はい、煎ったときの香りの印象が
わりと強かったので。
──
香ばしくておいしいとはいえ、
その煎った香りがメインになると、
ほんのちょっともったいない。
沼田
そうなんですよ。
つまり、えそ本来の香りが
あまり感じられなくなってしまうのを
飯島さんが懸念されて。
飯島
でも、何もしないよりは、
煎った香りもほんのちょっとだけプラスしたいなと。
──
それで、30秒。
沼田
はい。30秒煎りだと、
気にならない程度に香ばしさがふわっときて、
えその香りもしっかりと感じられます。
飯島
30秒と1分であんなに違うなんてすごいです。
すごい機械を持ってらっしゃいますね。
──
すごいですよね、沼田さんの工房。
沼田
ありがとうございます。
あと、えそと真昆布が合う、というのも発見でしたね。
──
その話、あらためて伺いたいです。
沼田
はい。煎り方を決めた後、その次に検証したのが、
どの昆布を合わせるか、ということでした。
えその持っているイノシン酸に
昆布の持っているグルタミン酸が合わさると、
うま味の相乗効果が働いて、料理をとっても美味しくしてくれるんです。
──
はい。
沼田
それで、三大だし昆布といわれる、
利尻昆布、真昆布、羅臼昆布があるんですけど、
なかでも合わせ出汁に向いている
真昆布と利尻昆布のどちらかを使おうと思いました。
利尻昆布というのは、かつおと合わせて
京都で使われることが多いです。
香りは控えめなんですけど、うま味はしっかりしている。
真昆布は、わりと主張が強く、
昆布らしい香りもしっかりあります。
こちらは、大阪で煮干しとセットで
うどんのつゆなどに使われることが多いです。
──
利尻は京都で、真昆布は大阪。
沼田
はい。それで実は最初、
利尻昆布のほうがいいだろうと思っていたんです。
というのは、今回の主役であるえそを
できるだけ引き立てたいと思ったんですよ。
でも、試飲会をしたら、
全員一致で真昆布のほうがおいしかった。
──
そうでした。
沼田
真昆布って、少し甘みがあって、
風味がまろやかな昆布なんですけど、
えそも甘みがあってまろやかなんですよ。
だから相性がよかったんだと思います。
ということで真昆布に決まりました。
そして、その後のみなさんがすごかった。
えそと真昆布のブレンドの割合を
どうするかということで、検証を繰り返しましたよね。
それも、1%単位で(笑)。
飯島
あ、そうでしたね。
沼田
うれしかったですよ。
良いものを作ることしか考えないで、
その方向に全員で突っ走るって、
なかなかできないじゃないですか。
──
全員で突っ走って(笑)。
自分の好みとみんながいいと思うもので葛藤しつつ、
答えを出さなきゃという感じなので、
迷いましたけど。
飯島
わかります。差が微妙すぎて。
沼田
それで最終的に、
えそが93%、真昆布が7%の割合で
ブレンドしたものにしましょう、という結果になりました。
飯島
細かいですね(笑)。
──
われわれ、みんな細かい(笑)。
大企業だったらできないかも。
沼田
いや、でもほんとにうれしいですよ。
1%単位で一緒に考え抜いてくださる方って、
なかなかいらっしゃらないんで。
そもそも大量生産が前提の大企業だと、
安定供給できない「えそ」なんて魚を選ぶことはないですし。
一個一個の頭と内臓をとるのも手作業で、
手間がかかることなんです。

飯島
すごい。大変な作業をありがとうございます。
──
沼田さん、このだしパックを使って、
おうちで何か作ってみました?
沼田
はい。卵との相性がいいので、
茶わん蒸しも、出し巻きも作りましたし、
かきたま汁も作りました。
あと、卵かけご飯に余った出汁を
ちょっとかけるのも良かったです。
飯島
ああ、いいですね。
──
おいしそう!
飯島
かに玉もいいですよ。
中にも入れて、あんかけにも使って。
沼田
そう、あんかけがいいのは、
これ、出汁がかなり透きとおっているんで
具材の色味が活きるんですよ。
内臓を取り除いているのもあって、
通常の煮干し出汁よりも濁らない。
初めて使うときは、
「色が出てないな」と思うかもしれないんですけど、
味はちゃんと出ているんで。
──
あ、そこはポイントですね。
「色は薄くてもしっかり味がでています」と。
ちなみにこれ、
出汁をとったあとに
パックの中身を出して使ってもいいんですか?
沼田
うーん、それは少し微妙で、
えそを粗目に粉砕していて、
小骨が残っている可能性があるので、
できればパックのまま使ってほしいですね。
ただ、中身をすり鉢でゴマをするような形で、
すっていただければ大丈夫です。
ちっちゃい魚なので、そんなに太い骨はないし、
気にならない人は全然、いけるんですけど。
──
「小骨が気になる方は、
しっかりすりつぶしてくださいね」と。
粗くしてるには、何か理由が?
沼田
真昆布とえそ煮干しでは、煮だし時間が違うんですよ。
真昆布は1時間以上かけて出汁を取りますし、
えそは短くて15分くらいです。
なので、そのバランスをとるために、
昆布は細かく、えそは粗く粉砕しているんです。
──
ああ、そういう理由があるんですね。
沼田
でも、ぼくもパックの中身の
出しがらをごりごりすって、使っていますよ。
チャーハンの具にもできますし、
しょうゆをかければ、焼き魚を食べているような
感覚になります。
──
ああ、やってみたいです。
飯島
餃子の具に入れるのもいいかも。
沼田
いいと思います。
飯島
あの大きなパックもいいんですよね。
見ていて、「ちゃんと出てるな」っていう感じ。
取り出す前にはキュッと絞って。
鍋に入れるときは、おまじないのように、
平らにして、ふわっと入れてくださいね。
──
おっきいから、中身が偏らないように。
でも、だしパックなので、本当に手軽に
使えるのがいいところですよね。
沼田
はい。出汁の取り方は「かつお」や「煮干し」と同じで、
お鍋にだしパックと水600~800ml入れ中火にかけ、
沸騰したら弱火にして6~7分ほど煮出していただければOKです。
慣れてきたら、水量や煮出し時間を調整して、
お好みに合わせて調整していただければと。
──
これは「生活のたのしみ展」で先行販売するのですが、
限定品ということで、定番化はやっぱり難しいでしょうか。
沼田
そうですね。
最初にお話をいただいてから、
1年間お時間をいただけたので、
今回は品質のよいえそをご用意することができたんですけど、
基本的には限定ものだと思います。
──
じゃあ確実に欲しい方は、
生活のたのしみ展に来ていただいて。
飯島
本当に、なかなか作れないものが
完成してうれしいです。
沼田
ほんとに。ぼくも、私も、みなさんもがんばりました(笑)。
だしパックとして、これ以上ないできだと思います。
今回のえそ、お時間いただけたかいがあって、
品質がよくて、そもそも粉末にするのが
もったいないくらいのものなんです。
飯島
ありがとうございます。
早くみなさんにも味わっていただきたいですね。

2023-04-27-THU

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