「わたしのLDKWARE」は、
スタイリストの黒澤充さんが
LDKWAREの世界観からイメージをふくらませ、
1日のシーンに合わせて
アイテムをセレクトするコーナーです。
約1年続いたこのコーナーの
最後を締めくくるテーマは、「夜のじかん」です。
1日のおわりに着たくなるような
とっておきのパジャマを、生地のお店
「CHECK&STRIPE
(チェックアンドストライプ)」と
一緒につくりました。
生地から洋服をつくるうれしさについて、
CHECK&STRIPEの歩みについて、
代表の在田佳代子さんと
在田太郎さんにお聞きしました。
-
- ──
- 在田佳代子さん、太郎さん、
このたびは、LDKWAREとの
コラボレーションを引き受けてくださって、
ありがとうございました。
- 佳代子
- こちらこそ、お声がけいただけてうれしかったです。
- ──
- おふたりをご紹介くださったのは、
スタイリストの黒澤充さんでした。
黒澤さんとは、
どのように出会われたのでしょうか。
- 佳代子
- 私たちは以前から、雑誌『& Premium』などで
黒澤さんのスタイリングを拝見していました。
その世界観のファンだったので、
自分たちの書籍(※)を出すことになったとき
「ぜひスタイリングを黒澤さんにお願いしたい!」
と思い、出版社の方にご紹介いただいたのです。 - ※黒澤さんによるスタイリングの、
CHECK&STRIPEの書籍…
『CHECK&STRIPE my favorite 私の好きな服』(主婦と生活社)
『CHECK&STRIPE Sewing Diary in Paris
パリのソーイングダイアリー』(世界文化社)
- ──
- おふたりとも、
もともと黒澤さんのファンでいらしたんですね。
- 太郎
- 黒澤さんは、
書籍のスタイリングをお願いしたときから、
何度もお店に来てくださいました。
CHECK&STRIPEの世界観や
オリジナルの布のことを、
たくさん研究してくださったのだと思います。
私はパリの撮影のときに同行させていただき、
黒澤さんのお仕事の様子を
間近で見る機会をいただきました。
そのときに、スタイリストという職業について、
改めてその大切さを知ることができました。
- 佳代子
- 好きなものも似ているので、
黒澤さんとのお仕事は、安心してお任せできるし、
新たなご提案には、いつもワクワクします。
撮影時はムードメーカーとしても、
撮影隊を盛り上げてくださいます。
- ──
- 今回、LDKWAREで
パジャマをつくることになったとき、黒澤さんが
「在田さんたちとなら、必ずよいものができるはず」
とご提案くださったんです。
いまのおふたりのお話を聞いて、
黒澤さんとの信頼関係が、
ますます強く伝わってきました。
- ──
- 佳代子さんと太郎さんをはじめ、
たくさんのスタッフと運営するお店
「CHECK&STRIPE」は、
オンラインだけではなく実店舗でも
生地やパターンの販売をはじめ、
お裁縫ワークショップなども開催なさっています。
生地にまつわるさまざまな活動を手掛けておられ、
「生地のプロフェッショナル」
という印象があります。
- 佳代子
- 恐縮です(笑)。
- ──
- CHECK&STRIPEは
どんなきっかけで始まったお店なのでしょうか。
- 佳代子
- まずは自分の話になってしまうのですが、
私は大学を卒業してすぐに結婚して、
しばらく神戸で専業主婦をしていました。
ある時、長男である太郎が
幼稚園に入ったタイミングで、
一族で織物関係の商社を営んでいた義父が、
倉庫に眠っていた布をたくさん渡してくれました。
- ──
- 生地を。なぜ、そのタイミングだったのでしょうか。
- 佳代子
- それが、
「太郎の幼稚園のお友達に
おじいちゃんからプレゼントしたい。
太郎と仲良くしてくれてありがとうと伝えてくれ」
とのことでした。
その言葉通りに幼稚園のママたちにお渡ししました。
いま思えば、
孫にたくさんお友達ができるといいな‥‥という
義父の思いやりだったのでしょうね。
- ──
- へえー!
おじいさまが、
あたらしい環境に入るお孫さんを心配して、
生地をくださったんですね。
- 佳代子
- 幼稚園のお母さんたちに
「よかったら使ってもらえますか?」と
お渡ししたら、とても喜んでくださり、
さらに、
翌日すぐ「太郎くんのブラウス作ってきたわよ」と、
服にして持ってきてくださった方もいて、
感激しました。
いただいたうれしさはもちろん、
「あの布がこんな可愛い洋服に?!」
という驚きもありました。
- ──
- なんと。
1日でつくってお返ししてくれるなんて。
- 佳代子
- 義父が持たせてくれた生地は、
チェックやストライプの柄がほとんどでした。
生地の状態では、どちらかというとシンプルで
華やかな印象ではなかったのですが、
こんなにかわいい洋服にできるんだ!
と、喜びと驚きを感じました。
- ──
- たしかに、同じ柄でも、
服になると印象が変わりますね‥‥
あっ、もしかして、お店の名前
「CHECK&STRIPE」の由来って。
- 佳代子
- そうなんです。
元々、私たち夫婦が生まれ育った兵庫県西脇市は
先染め織物の産地で、
義父の会社も糸を染めて織る
チェックやストライプを主に生産していました。
当時、義父が譲ってくれて、
友だちが洋服にしてくれた生地の柄も
チェックやストライプでした。
それが名前の由来になっています。
- ──
- わあ、そうだったんですね!
- 佳代子
- あるとき、生地をお譲りした友人のひとりが
「無料でもらってばかりでは申し訳ないから、
生地をガレージセールで販売したらどうか」と
提案してくれました。
このことがきっかけで、
家のガレージで生地の販売を
始めることになりました。
4、5年続けました。 - 毎週水曜日にひっそりとやっていたのですが、
ありがたいことに、だんだんと口コミが広がって。
神戸以外のところからも、
たくさんの人が集まってくださるようになりました。 - さらに、
「近くの幼稚園のバザーで生地がいるから、
持ってきてくれない?」
などのご要望もいただくようになりました。
となると、
たくさん車に積んで運ぶことになりますから、
「ついでに、どこどこの団地にも行くよ」と、
行商のようなことを始めたんです。 - 遠方に住む大学時代の友人たちも
協力してくれました。
一枚一枚生地見本をつくり、友人たちに郵便で送り、
社宅などで注文をまとめてもらい、
それを段ボールに詰めて送る‥‥
ということも始めました。
私が作る布の見本があまりにも雑で‥‥
見るに見かねて
近所のママ友が手伝ってくれるようになりました。
- ──
- お家でのガレージセールだったお店が、
ぐんぐんひろがっていったんですね。
- 佳代子
- はい。
ガレージセールと行商、
手づくり見本での通販を続けて
6、7年目だったでしょうか。
さらにひろがるきっかけとなった
できごとがありました。
そのころは
家でも布の販売スペースをつくっていたのですが、
ある日、見知らぬ集団が布を買いに来られたのです。
- ──
- えっ。なにがあったんですか。
- 佳代子
- それぞれ、
ドリームさんとか、そよかぜさんなどと
呼び合っていて、
はじめは「誰だろう、この方たちは」と
不審に思っていたのですが、
インターネット上で生まれた
「ソーイングフォーラムのオフ会」だったのですね。 - 私の活動を知って、名古屋から、静岡から、京都から
集まって訪ねてきてくださったのです。 - そのなかのある方が
「私が写真を撮ってホームページをつくるので
オンラインショップをしてみてはどうですか」
とご提案くださって、
わけのわからないままお願いすることにしました。
当時の私はパソコンとはなにか?
ホームページとはなにか? も
わかっていなかったのですが‥‥。 - それから自分で布の写真を撮ったり、
他の方のホームページを見るようになって、
だんだん理解できるようになりました。
そして、自分の世界観を表現するには、
人に頼っていてはいけないんだ‥‥と思い、
1999年に、自分のホームページを立ち上げました。 - お客様はどんどん増えていき、
もう一人では到底対応できないようになりました。
ここでも、近所のママ友たちが助けてくれました。
そして友人、そのまた友人‥‥
そのまた姉妹‥‥というふうに
スタッフが増えていきました。
それが、CHECK&STRIPEの始まりです。 - そして、そのときに手伝ってくれていた友人たちが、
いまも一緒に発送現場で働いてくれています。
- 太郎
- ガレージセール時代は、幼稚園児だった私も
呼び込みを手伝っていました。
通販が始まってからは、家が布だらけになり、
自分の部屋に行くにも布をかき分けて行く‥‥
というような生活でした。
私が学校に行く前に玄関に山盛り置かれていた布が、
学校から帰ってきたらもうすべて発送されていて。
子ども心に「なんだか、すごいことになったぞ」と
思っていました(笑)。 - そして、小学校、中学校と成長するにつれて、
家に集まる近所のおばさんたちも増えていきました。
おばさんたちが布をカットしたり、
発送したりしていて、
一人になりたくてもなれない‥‥
そんな思春期を過ごしました。
- ──
- 周囲の方がみんなで協力して育てたお店なんですね。
初期のころから、洋服のパターン(型紙)なども
販売なさっていたのでしょうか。
- 佳代子
- 最初は人手が少なくて、
生地の販売だけで精一杯でした。
ですが、慣れていくうちに
「生地と一緒にパターンも売りたいな」
と思い始めたんです。
そのとき、近所の方から、
たまたまパタンナーのお知り合いを
ご紹介いただいたおかげで、
パターンも販売できるようになりました。
- ──
- 周囲のみなさんから、また、
あたらしくご縁がつながったんですね。
- 佳代子
- そうです。
思い返せば、お店のホームページをつくったときも、
近所の方が助けてくれたり、
オンラインショップのシステムも、
ネットに詳しい東京の友だちが
わざわざ神戸まで来て構築してくれたりと
たびたび「女神様」のような人が
登場してくれました。 - このようなエピソードはその後もたくさん続き、
そんな人たちとの出会いのおかげで、
いまのCHECK&STRIPEがあります。
- ──
- 佳代子さんは、
ご自分でも洋服をつくることはありますか?
- 佳代子
- それが、昔からまったくやらないんです。
小学生のころ、家庭科の時間は、
隅の方でつくっているフリをしたことも
ありました(笑)。
- ──
- へえーっ、失礼ながら、少し意外です。
- 佳代子
- 学校の先生にも
「アイデアはいいけど、実力が伴っていない」
と、よく言われていましたので、そこは清く諦めて。
いまも、ハンドメイドの魅力をひろめるための
アイデアは私が考えて、
技術面は器用なスタッフに任せています。
- ──
- そうだったんですね。
たしかに、CHECK&STRIPEの
ワークショップなどのイベントは、
「こんなものがつくれたらうれしいな」という、
佳代子さんのアイデアがあってこそだと感じます。
おふたりがひろめていらっしゃる
ハンドメイドの魅力は、どんなところですか?
- 佳代子
- いちばんは「自分の気に入った生地で、
好きなものをつくれる」ということだと思います。
好きなパターンがひとつあれば、
また別の生地を使ってつくることができるので、
お気に入りの服がさらに増えていきます。
慣れてきたら、パターンを応用して、
より自分の体に合うように
アレンジすることもできます。
そんなふうに、自分だけの一枚を自由につくるたのしさがありますね。
- ──
- 自分にぴったり合う服を注文する、
オーダーメイドのような感じですね。
しかも自分がつくったものなら、
いっそう愛着がわきます。
- 太郎
- 自分のものとお子さまのものとで、
お揃いの服をつくる方も多いですよ。
- ──
- すてきですね!
世界に1枚しかない服は、つくるときも着るときも、
とても豊かな気持ちになりそうです。
- 佳代子
- 私の母は仕事を持っていたので、
なかなか洋服を縫うことはできなかったのですが、
よく母と近所の洋裁の上手な方のお家に伺って、
洋服を仕立ててもらっていました。
自分の好きな布で、好きなデザインで
つくってもらった洋服のことは今でも覚えています。 - いま思えば
洋服ができあがるのをたのしみに待っていた時間も、
すごく豊かな時間だったなあ‥‥と思います。
また出来上がった洋服を私が着た時、
母もとても嬉しそうな顔をしていたこと‥‥
なども大切な思い出です。
そこでCHECK&STRIPEでは、
「THE HANDWORKS」といって
お仕立てをお受けするシステムも作りました。
お裁縫が苦手な方には、
ぜひ利用していただきたいと思います。
- 太郎
- とくに、既製品が以前より簡単に手に入る、
いまの時代のお客さまからは
「自分で工夫してつくりたい」
という気持ちを感じます。
「自分の心の豊かさのための裁縫」が
浸透しているんだな、と。
- ──
- 今回のパジャマも、
CHECK&STRIPEらしい丁寧な工程をとおして、
かわいいものにしていただきました。
黒澤さんは、スタイリストというご職業柄、
パジャマを探すこともよくあるそうですが、
「こういう雰囲気のパジャマは、
意外と見つからない」とおっしゃっていました。
- 太郎
- あぁ、そうかもしれません。
というのも、生地を決めるとき、
黒澤さんが迷わずリクエストなさった
「オックスフォードという生地」は、
海外の老舗ブランドのシャツなどに
使われる、ベーシックで、
とても丈夫な生地なのです。
- 佳代子
- さきほどお話しした、
義父がたくさん持っていたものと同じ、
兵庫県西脇市の代表的な生地です。
今回選んだ生地は、糸の染めから最終加工まで、
兵庫県の西脇市で織られています。
この布を黒澤さんが選ばれたとき
「お!そう来たか!」と。
さすがのスタンダードなセレクトに驚きました。
- ──
- よく見ると、少し生地に光沢があります。
- 太郎
- 縦の糸と横の糸を、あえて違う太さにしているので、
光沢感が出ています。
ハリやコシもあるので、強度が高いですよ。
- ──
- パジャマは毎日のように着るものですから、
たくさん洗ってもへたらないのはうれしいです。
- 佳代子
- しっかりとした生地ですが、
着ていくうちに馴染みますし、
ゆったりしたシルエットなので、
リラックスして着ていただけると思います。
- ──
- 「ベーシックで遊び心も感じられる、
ありそうでなかったパジャマがほしい」という、
黒澤さんのイメージが形になりましたね。
- 太郎
- しかもこのパジャマは、大量生産の工場ではなく、
個人でアトリエを構えている方によって、
一枚一枚手作業で縫われているんです。
- 佳代子
- 手の温かみが感じられる製品になったと思います。
たくさん着ていただけたらうれしいです。
- ──
- ほんとうに、よいものができたと感じています。
お話をうかがって、
自分でも洋服づくりにチャレンジしたくなりました。
佳代子さん、太郎さん、
本日はありがとうございました。
- 佳代子・太郎
- ありがとうございました!
(おわり)