かわいいうえに履き心地がすばらしい、
「ROTOTO(ロトト)」というブランドは、
どうやって誕生したのでしょう?
製品たちの特徴は?
代表&デザイナーの石井大介さんにうかがいました。
今回、ほぼ日で販売する
4種のアイテムのお話も、合わせてどうぞ。
-
- ──
- ROTOTOの靴下は、
奈良県でつくられているそうで。
- 石井
- ええ、そうです。
- ──
- 奈良というのには、なにか理由が?
- 石井
- まず、ぼくが生まれ育ったのが
奈良県の大和高田市というところなんです。
- ──
- ご出身が。
- 石井
- はい。
奈良県は、国産靴下の
全国生産量の約7割を占めているんです。
- ──
- え、7割ですか。
それは圧倒的ですね。
- 石井
- 日本一です。
なかでも奈良県の北西部にある、
広陵町、大和高田市、香芝市、
御所市のあたりは、
とくに生産量が多いんです。
- ──
- その地域で靴下の生産量が多いのは
なぜなんでしょう。
- 石井
- もともと奈良県北西部は、綿の産地でした。
江戸時代の初めから、大和木綿とか、
大和絣(かすり)という綿の織物を
つくって売ることで栄えてきたんですね。
- ──
- 江戸時代は綿の産地だった。
- 石井
- ところが明治時代になって鎖国がとかれて、
質の高いインド綿が大量に入ってくると、
日本での綿の栽培は
一気に衰退してしまうんです。
- ──
- ああ‥‥。
- 石井
- そんななかで
現在の広陵町に住んでいた
吉井泰治郎(よしい たいじろう)という人が、
アメリカを視察して、
靴下を編む機械を持ち帰りました。
- ──
- そうか、
インド綿も入ってきたけれど、
世界水準の技術も入ってきたわけですね。
- 石井
- そういうことですね。
吉井泰治郎さんは、1910年(明治43年)に、
その機械で近所の人と
靴下製造をはじめたそうです。
場所もとらず
設備投資もそれほどかからないということで、
そこから靴下づくりが
どんどん広がっていったと聞いています。
- ──
- 110年以上前に。
- 石井
- いまも奈良県の北西部には、
歴史と伝統をうけつぐ
靴下づくりの工場があり、
職人さんたちが働いています。
ぼくも、そうした靴下工場で働いていました。
- ──
- あ、そうなんですか。
- 石井
- はい、会社を立ち上げる前は、
靴下工場にお世話になっていました。
- ──
- なるほどぉ。
ソックスをつくるのは石井さんにとって
ごく自然なことだったんですね。
- 石井
- ええ。
地元の産業を生かした
ものづくりをしたかったので、
靴下をつくることは、
ぼくのなかで自然な流れでした。
- ──
- そうしてROTOTOを立ち上げた。
- 石井
- 2012年12月に
仲間とアパレル会社を設立して、
2014年5月にソックスブランド
ロトト(ROTOTO)をスタートさせました。
- ──
- あの‥‥ROTOTOというのは、
どういう意味なんでしょう?
- 石井
- 「足」という漢字が元なんです。
- ──
- え? 「足」?
- 石井
- 「足」という漢字を3つにわけると、
「ロ」「ト」「ト」と。
- ──
- 「ロ」「ト」「ト」‥‥
ああ! ほんとだ(笑)。
いいですねー、たのしいです。
- ──
- ROTOTOがソックスをつくっていくうえで、
大切にしていいることを
聞かせていただけますでしょうか。
- 石井
- そうですね‥‥
まず、大事に思っていることは
「履き心地」です。
- ──
- 履き心地。
- 石井
- 肌に触れるものなので、履き心地がいいと、
身につけたくなりますよね。
- ──
- なります。
- 石井
- よい「履き心地」を実現するために、
工場の職人さんとのお付き合いを
ぼくらはとても大切にしています。
- ──
- 綿密なコミュニケーションを。
- 石井
- ええ。
お付き合いしている工場さんはいくつかあって、
それぞれに得意な技術があります。 - ぼくが靴下をデザインして、
そのために必要な技術を持つ工場を見極め、
職人さんと話し合いを重ねて形にしていきます。
- ──
- 「このデザインならあの工場」
という感じで。
- 石井
- そうです。
- ──
- どこの工場のどの機械で、
どういう靴下が編めるのか、
ほとんど頭に入っているのでしょうか。
- 石井
- そうですね、ぼくらがそれを
理解しておくことはとても大切です。 - ときには、
工場にある機械の特徴を見て、
「この機械でなにか作れないかな?」
と発想することもあるんです。
- ──
- ああ、そういう順番で
ソックスがうまれることも。
- 石井
- いずれのケースでも、
職人さんと話し合いを重ねるのは同じです。
- ──
- 話し合いが重要。
- 石井
- ええ、「ものづくり」はすべて
現場の人と話し合うことで
うまれると考えています。
- ──
- なるほど‥‥
ほんとうにていねいです。
ROTOTOのファンが増えている、
その理由がわかってきました。
- ──
- そんなROTOTOのアイテムを
ほぼ日でも販売させていただくことになって、
ありがとうございます。
- 石井
- こちらこそ、うれしいです。
- ──
- 冬に向かう時期ですので、
あたためてくれるアイテムを。
- 石井
- はい、4種類ですね。
- ──
- それぞれ簡単に
ご説明いただけますでしょうか。
- 石井
- わかりました。
まずはこちら、「ルームソックス」です。
- ──
- ルームソックス。
肉厚であたたかそうです。
- 石井
- これくらい肉厚の靴下は、
山で働く人や漁師さんとか、
寒いところで仕事をする方々のための
靴下なんですね。
そのための、専用の編み機を使って、
このルームソックスをつくっています。
肉厚の太い糸を編むことができる機械なので、
しっかりした生地ができるんですよ。
- ──
- 素材はなんでしょう。
- 石井
- ウールとアクリルの混紡糸です。
内側に起毛を編んだあとに裏返して、
起毛機という機械にかけて、
ひとつひとつ毛を起こしていきます。
起毛かけるときに、
糸にアクリルが入っていることで
よりふっくらとした起毛感を出しています。
室内でもお出かけのときでも、
冬に足元が寒いときに履いてください。
- ──
- ルームソックスと言いながら、
お出かけのときも履けるんですか。
- 石井
- かかとをホールドしない、サボとか、
そういう靴でしたら。
- ──
- なるほどー。
ああー、それはいいですね。
とはいえやはりルームソックスですから、
せっかくなので
冬のお部屋で履きたい気持ちがあります。
- 石井
- はい(笑)。
- ──
- 私は寒がりなので、
冬は部屋でも厚めの靴下を履くんですけど、
フローリングだと滑るんですよ。
それがずっと、ちいさなストレスでした。
ところがこれは、
足裏のプリントが滑り止めになっている。
- 石井
- はい。
そこは工夫したところです。
- ──
- おおきなポイントだと思います。
しかもこの、滑り止めのプリントがかわいい。
履き心地がよくて、
あたたかいうえに、かわいい。
愛着がもてそうです。
- 石井
- ありがとうございます。
- ──
- そしてこちらが‥‥。
- 石井
- 「ソックスリッパ」です。
- ──
- つまり、
ソックスであり、スリッパである。
ユニークで、そしてやっぱりキュートです。
- 石井
- スリッパの役割りをする
新しい履き物として考案しました。
素足に履いていただくと気持ちいいです。
- ──
- スッと簡単に履けそうです。
で、あったかそう。
- 石井
- ぼくは靴下の上に重ねて履いて、
オーバーソックスとして使っています。
- ──
- オーバーソックス!
あたたかいもののうえに
さらにあたたかいものを重ねる‥‥。
それはたぶん、すごくあたたかい?
- 石井
- はい、とても(笑)。
- ──
- 試してみたいです。
こちらの素材は?
- 石井
- ウールとアクリルの混紡糸というのは
「ルームソックス」と同じですが、
こちらはパイル状に編み込んで、
じゅうたんのようにふかふかにしています。
やさしい肌あたりで、
あたたかさを保ってくれます。
- ──
- いいですねー。
そしてこの足裏にも、
プリントの滑り止めが。
- 石井
- ええ、お部屋で歩きやすいように。
- ──
- 日常的にスリッパを履いている人には、
ぜひ試してほしいソックスですね。 - そしてこちらは‥‥首に巻くもの?
- 石井
- はい、靴下をつくる編み機で編んだので
「ソックストール」
という名前にしました。
チューブマフラーですね。
- ──
- チューブマフラーというのは、
構造がチューブということですか?
- 石井
- そう、筒編みでつくった
チューブ状のマフラーです。
ぼくは古着屋さんが好きでよく行くんですけど、
靴下の編み機で作った
ミリタリー系の筒編みマフラーがあって、
おもしろいなぁと。
それを上質な素材でつくりました。
- ──
- どんな素材でしょう。
- 石井
- 繊維が細くてやわらかい
エクストラファインメリノウールと
リサイクルポリエステルの混紡糸で、
張りがありつつやわらかな肌ざわりです。
- ──
- ああー、まさしくそんな感触です。
- 石井
- ウールの保温性・吸湿性と、
ポリエステルの速乾性・耐久性という
ふたつの素材のいいところをとった
実用性が高いマフラーですね。
- ──
- 筒編みといっても、
筒抜けではないんですね。
両端が縫いとめられています。
- 石井
- それもミリタリーのチューブマフラーが
そういう始末になってたんです。
そこにヒントを得ました。
- ──
- なるほど、いいですね。
シンプルだけどあたたかそう。
- 石井
- 筒編みは生地が二重になるので
空気の層ができて、
保温性が高いという良さもあります。
- ──
- そして最後にこちら。
- 石井
- 「ハンドウオーマー」です。
- ──
- これはもう、見るからによさそうです。
指先が出せるタイプですよね。
- 石井
- そうですね、指先が出ます。
上下どちらからでも
着用できるんですよ。
- ──
- え? 上下というと?
- 石井
- 片側には親指を出せる穴があって、
反対側には穴がありません。
- ──
- あー、親指を出して使うと、
パソコンのキーボードが操作できますね。
- 石井
- ええ、細かい作業ができます。
- 逆につけると親指の穴がないので、
セーターの袖口のようになります。
冬にコートを着ているときなど、
袖口から冷気が入ってくるのを
防いでくれるんです。
- ──
- それはありがたい。
そうか、2ウェイなんですね。 - ‥‥そして、このやわらかい手触りは?
- 石井
- 素材は肌あたりのやさしい
ウールとカシミヤを混紡した糸です。
カシミヤが29%入ってます。
- ──
- この気持ちよさはカシミヤでしたか。
- 石井
- ウールも極細のメリノウールなので、
そうですね、
かなり肌触りがいいと思います。
- ──
- ‥‥という4アイテムを。
- 石井
- はい。
- ──
- ほぼ日から販売いたします。
- 石井さん、ありがとうございました。
- 石井
- こちらこそ、ありがとうございました。
- ──
- 個人的に苦手な冬が
これからやってくるわけですが、
ちょっと、なんだかすこし、
お話をうかがって、
冬がたのしみに思えるようになれた気がします。 - (石井大介さんへのインタビュー、終わります)